第71話

「祖師谷様、このお菓子美味しい?」

「う、うん。美味しいよ」

「そうですか!!それは良かったです」


 目の前にいるのはアリシアとエリーそれに僕が連れ去られる現場にいた白金さんだ。


 今現在どういう状況なのかというと、学校が終わり由利と愛梨さんと別れて家に帰ろうとしたときアリシアとエリーに呼び止められグイグイといつの間にかかなり大きいリムジンっぽい車に乗せられていた。


 白金さんは止めようとしてれたけれど僕が大丈夫だと言うと、渋々頷いて一緒に乗る事となった。


「こっちは、どうですか?はい、あーん」

「あ、あーん」


 アリシアが僕にチョコレートを食べさせてくれる。


 一度だけ断ったら、ものすごく悲しい顔をして抗議してくるので仕方が無かったのだ。


 だから、白金さんはそんなにアリシアの事を睨まないであげて。


「では、こっちはどうですか?」


 エリーが僕に違うチョコを食べさせてくれる。


 さっきよりビターな感じがするし、より深みがあってとてもおいしい。


「こっちも美味しいよ」


 僕が笑顔でそう言うとエリーは嬉しそうにしてくれる。


「あ、祖師谷様。もうすぐで家に着きますよ」


 アリシアに言われて着いたところは、かなりの大きさの家だった。


「行きましょ?祖師谷様」

「う、うん」


 作法とかいろいろ分からないことがあるけれど、大丈夫なのだろうか。失礼を働いて秘密裏に殺される、とかならないかな?大丈夫だよね。


 アリシアに手を引かれるまま大きい扉を開けて家の中に入ると、使用人と思われる人がアリシアさんと僕に挨拶をしてくれている。


「この家はね、お母様のご友人の人の別荘なんです。私の家では日本に別荘何て持っていなかったので」

 

 そう説明してくれるアリシア。


 ここまで広い別荘を持っている人と友人何てアリシアの家って貴族様の中でもかなりすごい家なんじゃないか?


「あ、アリシアってもしかしてかなり凄い人?」

「いえ、そんなことありませんよ?」

「ほ、ほんとに?僕、気軽にアリシアとか言っていたけれどアリシア様って呼んだ方がいいのかな」

「むっ!!ダメです。私、そんな風に呼ばれたくありません。エリーにだって本当はアリシアと呼んで欲しいのに『立場上仕方がありません』と何度言われたことか。祖師谷様にまで言われてしまったら悲しみで寝込んでしまいます」

「わ、分かったから。アリシアって呼ぶから」

「もしよかったら、愛しのハニーと言ってくださっても」


 そう上目遣いで迫って来るアリシア


 かなり距離も近いことがあって、すごい綺麗な顔が僕に迫ってきて胸がドキドキする。それにかなりいい匂いもするし。


「アリシア様」

「って、痛いわエリー。主人の頭をそんなに気軽に叩かないで」

「祖師谷様が困っているでしょう。ね?それにあんなに近づけるなんてなんて羨ましい」

「それが、本音ね?エリー」

「いえ、そんなことは。それよりもこんなところで喋るよりも部屋に通してあげるべきでは?」

「それもそうね。こちらへ」


 かなり広いリビング?に入った。


 高級そうなソファに座り、一度部屋に戻っているエリーとアリシアを待つことにする。


 待っている間に、紅茶を持ってきてくれたメイドさんが僕の顔をじぃっと見ていたので笑顔で返すと顔を真っ赤にしてくれたので手を振ってみるとさらに顔を真っ赤にして別の部屋に移ってしまった。


「蒼様はすぐに人を誑かしますね」

「そんな人聞きの悪い」


 白金さんが口を尖らせながらそんなことを言う。


「白金さんにも笑顔と手を振りましょうか?」

「ぜひ!!」


 僕は冗談でそう言ったが食い気味で返されてしまった。


 仕方が無く笑顔とそして手を振ってあげると嬉しそうに手を振り返してくれた。


「満足ですか?」

「はい!!大満足です」


 白金さんはふすーっと満足げに頷いている。


「白金さんが羨ましいです」


 声がする方へと振り返るとそこには、私服姿のアリシアがいた。


 綺麗な白を基調としたワンピースの物だ。凄く可愛らしくて清楚だ。


「祖師谷様?先ほど他のメイドから羨ましいことを聞いたのですが」


 次に入ってきたのはメイド服を着たエリーだ。様になっている。


「アリシア、とっても可愛いですね。似合っています」

「まぁ!!」

「エリーもとても様になっていて綺麗ですよ」

「あら?」


 二人とも嬉しそうに微笑んでくれる。


「祖師谷様もいつも格好いいですよ」

「そうですね。他の男性と比べるのもおこがましいくらいです」

「ありがとね」


 二人も僕の事をべた褒めしてくれるので僕まで嬉しくなる。


「あ、それで他のメイドに笑顔で手を振ってもらったと聞いたのですが」

 

 とずぃっと顔を近づけて僕の眼を見てくる。


「う、うん。したけれど」

「私にもして頂けませんか?それかもっと他の過激なことでも構いません」

「あ、ずるいわ。エリー。私もしてもらいたいわ」


 アリシアも僕の眼の前までずぃっと近づいてくる。


「お二人とも、そこまでです」


 と二人を僕から離す。


「何故ですか。というよりも先ほど白金さんがしてもらっていたところを見ていましたからね、私」

「そ、それは........」

「私達だけしてもらわないのは不公平、というものだと思います」

「む、むぅ。仕方がありません。蒼様が嫌がらない限りは許しましょう」


 自分がしてもらったためか強くは出れなかったみたいだ。でも、守ってくれようとしたのは素直に嬉しい。


「じゃあ、何してほしい?」

「え、えっとですねー」


「私は抱きしめて、頭を撫でてもらうことを所望します」


 とエリーがそういう。


「分かった。行くよ」

「え、良いのですか?」

「え、うん。してもらいたいんだよね?いいよ」


 エリー自身、オーケーしてもらえるとは思っていなかったみたいだけれど抱きしめてあたまを撫でるくらいは梨美で沢山しているから今更だ。


「じゃあ、いくよ」

「は、はい」


 前からそっとエリーの体を抱きしめて頭をゆっくりと撫でる。


 エリーは気持ちよさそうな顔を浮かべて僕の胸にすりすりと頬を押し付けてくる。どうせだし、サービスとかしてくれたら喜ぶかな。


「エリーはいつもメイドのお仕事頑張ってて偉いよ。僕はそんな頑張り屋さんなエリーがすごくいいなっておもうよ」


 そう言うとビクビクっと体を震わせて僕の中で悶えて、腕を僕の後ろに回して抱きしめ返してくる。


「そしがやしゃまぁ。私、偉い?可愛い?すごい?」

「うん。エリーは可愛くて偉くて、凄いよ」


 甘えるようにして僕に体をさらに寄せてくる。


 こんな風にエリーさんは甘えるんだな。まだ関わって日が浅いけれどいつもはどちらかというとキビキビした主人のアリシアさんを窘めているエリーだけどこういう姿もいい。

 

 それから数分間頭を撫でていると、別方向からものすごくジィっと僕たちの方を見ている二人がいるのでエリーさんを離した。


 「あっ」と切なそうな顔をして僕の方を見つめるけれど、これ以上はあの二人が暴れてしまうだろうからここまで。


「あの、アリシア様」

「何かしら」

「私、祖師谷様のメイドになります」

「うわーん、エリーが祖師谷様に寝取られた」

「まぁ、冗談ですがそれくらい甘美なひと時でした」

「それなら良かったよ」

「さて、次は私の番ですね。何をしてもらいましょうか」


 うーんと頭を悩ませていたが、いい案が思いついたのかキラキラしためで僕のことを見る。


「私、壁ドンというものをしてもらいたいです。あ、それと一緒に嘘でもいいので告白を。あのコラボ配信をみてしてもらいたいと思いました」


 あー、そう言えばそんなこともしたな。


 仕方が無い、やるからには本気でしないとな。


「じゃあ、そこの壁に立って」

「は、はい」


 アリシアはドキドキしているのか胸に手を当てている。


「じゃあ、するね」


 深呼吸をしてから、アリシアに近づいてドンっと壁に手を着く。アリシアが逃げられないように。


「アリシア」

「は、はい」

「逃げないで、こっち見て」

「で、ですが恥ずかしくて」


 想像以上に恥ずかしいのかアリシアは顔を背けてしまう。僕だって恥ずかしいよだけれどしないと。


 顔を背けるアリシアを向かせるために、所謂顎くいと言うものをして目を合わせる。


「アリシア、僕と付き合ってくれないかな」

「ひゃ、ひゃい!!そしがやしゃまとなら喜んで!!」


 精一杯の返事をくれるアリシア。


「ありがと、じゃあこれから僕たちは恋人、だね」

「しょ、しょうでしゅ!!私と祖師谷さまは恋人です!!」


 アリシアは喜びを爆発させるが


「はい、カットー。終了です」


 エリーさんが間に入ってその演技も終わりを告げる。


「ちょっとエリー、せっかく私と祖師谷様がお付き合いすることに成ったんですから喜んだらどうですか?」

「あくまで演技ですから」

「ふ、ふん。そんなの知らないもん」


 バチバチとエリーとアリシアは火花を散らす。


「蒼様」

「な、なに?」

「私は、あそこまでしてもらいませんでしたよね?」

「で、でも........」

「帰ったら私にもしてください」

「は、はい」


 すごまれるように言われてしまっては頷くことしかできない。


 この後もエリーとアリシアが言い争ったりいろいろあったけれど、アリシア家訪問はとても楽しかった。



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