第70話
私の名前は白金スフィール紗里。
祖師谷蒼様の護衛です。
私の主人である蒼様は少し変わったお方です。
女性に暴言や乱暴な態度をとることは無く、むしろ積極的に女性に関わっている節さえあります。それに途轍もなく優しいお方です。
私は、学校を成績一位で卒業、その他にもあらゆる武術に秀でていましたから私は表立って活躍するそれこそスターと呼ばれる男性の護衛をしたことがあります。
ですが、その方の護衛をしている時、私の心は無でした。
護衛である私や他の護衛にあたったり、乱暴な言葉遣いは当たり前。
私は何故、自信が護衛なんてやっているのか分からなくなりました。
ですけれど、男性に関われることなんて普通の人からすればないので何贅沢を言っているんだと言われるでしょうけれど。
私が護衛を目指したきっかけは一冊の絵本でした。
その絵本の中に出てくる男性は、凄く優しくて女の子の妄想を固めて煮詰めた甘い甘いお菓子のような存在です。
私はそんな男性と関わって、結婚することが夢でした。
小さい頃、そう言うと母親には「そうだね、紗里ならきっとなれる」と言われましたけれど大人になっても私がその夢を追いかけていると知って、複雑な表情を浮かべていたのを知っています。
どうにかその夢を叶えるために、男性護衛官養成学校へと通い、空手や合気道その他の武術にも取り組み、いつの間にか私はトップに立っていました。
そして、いざ男性の護衛官になればこの有様です。
何となくは分かっていました。
そんな男性何ているわけがないってことも。ですが信じてみたかったのです。
だから、他の男性の警護をしたりしてみましたが結果は同じ。私の事など至極どうでもいいように扱います。
何時しか私も夢を見なくなっていましたけれど、そんなある日。
動画視聴サイトを見ていると、青という男性がいました。
その人はなんと女性の視聴者と楽し気に話しているではないですか!!私は青という男性配信者にくぎ付けになりました。
彼女動画も漁るとなんと妹である人とすごいくっついたりしているし。
妹様が羨ましくて仕方がありません。
この方は男性警護官を付けていないのでしょうか?
そう思いましたけれど、私は踏みとどまります。これはあくまでも配信上の姿。私生活ではもしかすると家族をぞんざいに扱っているかもしれない。
他の男性と同じかもしれないとそういう考えが出てきます。
事は慎重に運ぶべきでしょう。
それから、少し経ってから青様の素性が突然インターネット上で上がりました。なんと青様は普通に学校に通っているらしく、男性警護官は付けていないとのことでした。
青様はやはり特殊な方です。
男性は学校なんて、特に用事でもない限りオンライン授業を受ければいいだけですから。
それに、青様は学校の行事である文化祭にも積極的に参加していらっしゃるみたいです。
今回、インターネット上で素性が明らかになってしまった青様。当然、世の女性たちはこの学校へと足を運び、一目青様を見ようとするでしょう。
当然、青様に危険が迫ります。それは親や学校側も理解するはず。ならば、私達男性警護官の出番が来るんじゃないか。
私は今、誰の警護にも付いていないフリーな状態です。
これは自分をアピールするしかないでしょう。
そして、数日後、本部から選りすぐりのエリートたちが招集されました。私も何とか選ばれていたみたいです。
どうやら試験を行いその者が青様の護衛の任に着くようです。
まぁ、ご家族や青様に嫌だと断られればせっかく勝っても無駄なようですが。
他の人も、他の年代の主席やそれぞれの武に通じる人たちのようですが負けません。
私は今まで以上の力を出して試験に臨み、勝利をおさめ青様もとい祖師谷蒼様の護衛の任に着くことが出来ました。
それからすぐに準備をして次の日には蒼様の家に行くことにしました。
緊張しますが、私は震える手を抑えながらインターホンを押します。
お母様が応答してくださり、ドアを開けてくれるみたいです。
玄関のドアが開くと、そこにはお母様、妹様、そして祖師谷蒼様が直々に玄関までいらっしゃってくださいました。
「今日から、こちらで働かせていただきます。
「は、はい。宜しくお願いします」
蒼様がじっと見つめてくださっている。
だ、大丈夫だろうか?変なところはないだろうか。
や、やはりこの胸がいけないのでしょうか?ですが、蒼様は大きな胸が好きだって言ってくれましたし。
それとも髪でしょうか?男性が少なくなり、色々な世界の人との血が混ざりあっている現在でも白い髪は珍しいだろうから。
「こんなところでは、暑いですし中に入ってください」
「わかりました」
中に入らせてもらい、リビングにある席に着きます。
「それで、あなた様が蒼様でしょうか?」
「はい。僕が蒼です」
知ってはいますが、これも護衛の任の段取りというものです。確認はしっかりしないといけませんからね。
目の前の席に座る蒼様はじぃっと私のことを見ており恥ずかしくなってしまう。
「あ、あのそんなに見つめられると恥ずかしいです」
「あ、ごめんなさい。綺麗だったので」
「き、綺麗ですか。ありがとうございます」
蒼様に綺麗と言われた。
ものすごく嬉しい。男性にこんなことを言われる日が来るなんて夢にも思っていませんでした。
ですが、今はあまり取り乱してはいけません。
これは最終試験です。ここで蒼様やご家族に気に入られなければいけませんから。
ですが、やはり嬉し恥ずかしいというもので俯いてしまいます。
「ご、ごほん。さて、あなたが男性警護官ということは分かりましたけれど、あなたの実力は本物なの?」
「か、かあさん?」
「蒼ちゃんは黙ってて」
そんな少し甘い雰囲気をお母様は断ち切り、私に真剣な目を向けてきます。
私もそれに向き合います。
「こんなこと、証明になるかわかりませんが、男性警護官学校を首席で卒業しましたし、あらゆる格闘技をすべて最上段まで達成し免許皆伝を授かっています」
「ふ、ふーん。そんな人がなんで蒼ちゃんを?そういう人はもっとすごいハリウッドのスターとかを守るのんじゃ?」
「昨年度はそうでしたが、私にはあの方は合わなかったのです」
ここで私の過去の事を隠してもしょうがないため隠さずに話す。
「訳アリってことね」
「……はい」
「まぁ、でもそれだけの実力があるなら蒼ちゃんのことは十分守れるか」
「はい、任務ですので与えられたものはこなします」
決して、蒼様とお近づきになりたいという感情を表に出さず、お母様に真摯に向き合います。
確かに、蒼様にお近づきになりたいという気持ちはないことは無いですが、蒼様をお守りしたいという気持は本物です。
「ごめんね。私、蒼ちゃんの事になるとすごく慎重で」
「大丈夫です。こんなすごく優しい殿方は初めてですから。それに凄く格好いいですし」
「そうでしょ?私の自慢の息子だからね」
その思いが伝わったのか真剣な表情を緩めて、微笑みます。
「じゃあ、母さん。この人でいいでしょ?」
「うん。いいかな」
「改めて、よろしくお願いします。白金さん」
そう言って蒼様は私に手を差し出します。
やはりあなたは素敵な方です。初めて男性によろしくお願いします、それに苗字ですが呼ばれて、さらに手まで差し出してく出さるなんて。
「し、白金さん?」
「やっぱり、あなたは素晴らしい人です」
私は蒼様の男の人の手を握り返します。優しく包み込むように。
それが、私と青様の素晴らしい出会い。
そして、それから月日が経ち、色々なことがあり蒼様に驚かされることも多数ありました。
学校でいろいろな人に手を振ったり、妹様の友達を撫でてあげたり、デビュー配信、ASMR配信、、コラボ配信、他にもいろいろありました。
蒼様は本当に無自覚に女性を狂わせる天才ですね。女誑しです。
ですが、そんな蒼様が大好きです。
良ければですが、私を一生あなたの傍に。そんな思いはありますが、それは今はまだ心に留めておきます。
蒼様に今はその気がありませんから。
さて、今日も蒼様をお守りする大切な役目を全うするとしましょう。
私の世界は今日も輝いています。
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