第69話

 アリシアとエリーが転校してきて数日たち、学校での生活もにぎやかになってきたころ。


 僕はEachStepのスタジオに来ていた。


 今日は前々からコラボをしようと思っていた莉々さんとのコラボの日だからだ。


 僕のデビュー配信の時にはもう莉々さんとは一回直接会っているので初めましてで緊張することはないはず。


 事前に昨日は莉々さんが僕とやって欲しいことと、というか女性が男性としてほしいことをリスナーと一緒に配信で考えてくれている。


 どんなことをするのかワクワクする。

 理恵さんと背信の事を話しつつ理恵さんの事を待っていると少し焦ったように莉々さんが入ってきた。


「青様すみません、遅れてしまって」

「いや、まだ予定時間より三十分も前なので全然大丈夫ですよ」

「いえ、ダメです!!女性として男性を待たせるなんて。それにその相手が青様なら尚更です」


 首を振って否定してくる莉々さん。


 莉々さんは、相変わらず素晴らしい顔とピンク色の髪、そして背丈には似合わないほどの胸を持っていて、サキュバスと言われてしまっても疑わないくらいには可愛いし、エッチだ。


 それに、今日は気合を入れてきてくれたのかゴスロリのような衣装を着てくれたので莉々さんの雰囲気とベストマッチだ。


「可愛いですね、莉々さん。似合っていますよ」

「え、あ、そ、そうですか?」

「はい。とっても可愛いです」

「そ、そうですか............えへへ」


 頬を真っ赤に染めて照れた表情を見せる。その仕草すらも様になっているというか可愛い。


「青様、女性にそう軽々しく可愛い、だなんて言わない方がいいですよ。襲われてしまいます。女性は勘違いをしてしまいますから」

「その通りです。まったくそ...........青様は」

「..........はい」


 理恵さんの言葉に護衛の白金さんもうんうんと頷く。


「それでは、今日の配信について話します」


 理恵さん、莉々さん、僕それと、莉々さんのマネージャーさんと話を進めていく。


 あんまり過激なリクエストは昨日のうちに理恵さんが無くしてくれたみたいだ。


 ...........少しだけその過激なものに興味があったことは秘密だ。


「それじゃあ、あと三十分後に配信を開始しますね」

「分かりました」


 その間に莉々さんとの交流を深めたり、莉々さんのマネージャーさんと改めて挨拶をしたりして時間を潰し、本番になる。


「はーい、皆さんこんにちわ」

『こんにちわ』

『こんにちわ』

『早く青様を出して!!』

「みんな、せっかちだなぁ。そんなことじゃ男の人に振り向いてもらえないぞ」

『いいし、青様に振り向いてもらえるから』

『知らないし、他の男の人なんて』

「それは、確かにそうかもしれない。そんな今女性を虜にしている、青様に登場していただきましょう。どうぞー」

「こんにちわー」


 僕がカメラに向かって手を振ると、コメントがさっきの倍以上の速度で流れていく。


「今日は、莉々さんとコラボさせていただきます。みんなも楽しんでいってくれると嬉しいな。莉々さんリスナーもよろしくね」

『はい!!』

『莉々リスナーやめて青様に寝返ります』

『今日も青様が格好いい』

『最高です』

「青様、私のリスナーを寝取らないでください」

「ご、ごめんなさい」

「まぁ、青様に寝取られてしまうのならば仕方が無いと思えますけれど。それじゃあ、今日していくのは、男性にしてもらいたいことや言って欲しいことを実際に、この完璧な青様に実際にやってもらおうというものです」


莉々さんとコメントの人たちは興奮したように早くなる。


「私も配信では幾度となくリスナーたちと話していたけれどまさか実際に実現できるなんて思ってなかったから」

『私も思ってなかったわ』

『そもそも青様みたいな人が地球にいるなんて思ってなかった』


 いろいろなコメントが飛び交ってはいるけれどすべていい方面でのコメントだ。


「それじゃあ、やっていこうかな。昨日配信した時に出した案の中から青様にランダムでやってもらおうかなー」


 莉々さんが箱を持ってくる。


 おみくじ方式だ。


 箱をごそごそと漁って、取れたものは..........


「目を見て、好きって言ってもらうですか?」

『きちゃー!!』

『初手から私たちがノックアウトしそうなんだけれど』


 もっと過激なものかと思っていたけれど、そこまでじゃないみたい。


「それじゃあ、青様スタンバイをお願いします。臨場感を持たせるために手持ちカメラに切り替えるね」


 莉々さんが手持ちカメラに切り替えて、僕の正面に立つ。


 僕と目が合った莉々さんは若干照れているけれど配信者魂で我慢しているみたいだ。


「じゃ、じゃあ青様。例の言葉を...........3,2、1、どうぞ」

「好きだよ。大好き」


 カメラが丁度、莉々さんの顔あたりにあったため莉々さんの眼を見て好きと言ってみる。


『や、やばしゅぎ!!』

『私も大しゅき!!』

『私も好きだから、結婚して?』

『お金ならたくさんあるから結婚しましょう』

 

 沢山の歓喜のコメントが流れる。莉々さんの方を見ると、真っ赤にして固まってしまっている。


「おーい、莉々さーん」

「.............はっ!?凄ぃ、これ凄すぎます。青様格好よしゅぎましゅ!!」


 コメントだけでなく直接食らった莉々さんもふにゃふにゃになってしまっている。


「そ、それじゃあ次のお題に行きましょう」


 またボックスの中を漁り、次に探り当てたものは.............


「背後からだきしめて、愛してるよって言って欲しい」


 なるほど。これは少しだけ難易度が高い。というかこれ以上のものもあるのか?理恵さんが削除したものはこれよりはるかに過激だったと思うと心の中で苦笑してしまう。


『最高、青様から愛してるよが聞けるなんて』

『はやく、青様の愛してるを下さい』


 手持ちカメラ状態の莉々さんを軽く触れる程度で抱きしめて愛してるよと囁く。


「........................................」

『もぅむりぃ』

『しゃいこうしゅぎ』


 莉々さんもコメントのような、というかよりひどい状態になっている。顔が蕩けているしおよそ女性がしてはいけない顔だ。


「莉々さん、帰ってきてくださーい」


 と目の前で手を振るけれど今度は起きてくれなかったので、頬をつねってみる。


「..........痛っ。あれ…ここは、現実?夢じゃなかったんだ」

「やっと帰ってきてくれた」


 それからも、壁ドンのシチュエーションだったりダミーヘッドマイクでいろいろしてみたりと様々なことをした結果。


「もぅ、むりでしゅ」

『最高でした」

『本当にしゃいこう」


 コメントも莉々さんもトロトロになってしまった。


「それじゃあ、今日の配信は終わりかな」

「そ、そうですね。みんなどうだった?」

『しゃいこうだった』

『今すぐ、第二回希望』

『青様愛してます』

『大好きです』


 この配信は大好評でまたやって欲しいと配信が終わった後にtritterでは大騒ぎだった。


「良かったですね、莉々さん。大成功です」

「しょ、しょうですね。青様」


 だが、カメラ越しではなく実際に受けた莉々さんへのダメージが強くって今でもただ喋っているだけなのに顔を真っ赤にしてくねくねと恥ずかしそうにしている。


 実際に言っていた僕も恥ずかしかったし、リスナーに向けて言った言葉だけれどよりリアル感を増したいがために莉々さん相手に言っていた部分もあるのでお互い様ということで。


「また、一緒にやりましょうね。莉々さん」

「そ、そうですね。が、がんばりましゅ!!」


 と精一杯拳を握って頑張ろうとしている莉々さんが可愛くって妹の梨美を思い出してしまい..........


「そうだね、次も頑張ろう」

「はぅっ..........」


 莉々さんはさらに顔を真っ赤にさせてそのままパタンと座って呆然としてしまった。

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