第68話
さて、昨日はASMR配信で大惨事を起こしてから数日が経過した。
ここ最近は忙しくて学校へ行っていなかったため久しぶりの登校になる。由利と愛梨さん、それにクラスの人と会えるのが楽しみだ。
白金さんと一緒に車で学校へと行く。
いつも通り学校へ着いたらみんなに挨拶をして、下駄箱へ。
下駄箱を開けると、バサッと沢山のラブレターが落ちる。
「いい加減、ラブレターを禁止にしませんか?切りがないと思うのですが」
「それはダメだよ。白金さん。一生懸命思いを伝えようとしているのにそれをなしにするなんて」
「それはそうですけれど」
出来る限りラブレターは返すようにしているけれど、切りがないのは事実だ。
白金さんも僕がラブレターを返す時間が多すぎて自身の生活を邪魔されていないのかと心配してくれているんだと思う。
まぁ、後に対策を立てるか。
今は配信に集中したいからどのみち付き合うことはできないから。
......全校朝会でそのことを言うとかはどうだろうか。
まぁ、それは追々校長先生とかと相談してだな。
「おはよー、祖師谷君」
「おはよう、由利」
「おはよう、祖師谷君」
「おはよう、愛梨さん」
「久しぶりだよー!一週間ぐらい直接見られなかったから、なんだか禁断症状が.............」
「それ。ほんとに祖師谷君がいないと由利がしょげててみてられない」
「むっ、それは愛梨もでしょ!!」
「ごめんね、二人とも」
「え、いいの。謝らないで。祖師谷君は、配信頑張ってたし!!すごかったよデビュー配信とか、その...........ASMR配信」
「あれは、エッチ過ぎた」
「あ、あはは.............」
やはり次の配信からはキスとかも控えよう。
「あ、そういえば祖師谷君知ってる?」
「なに?」
「このクラスに転校生がくるーって噂があるみたいだよ」
「転校生?この時期に?」
「そうなの」
「なんでも、お貴族様らしくてすごいらしいよ」
「へぇー、そうなんだ」
そんな人がうちのクラスに。貴族っていうとすごい厳格な人なんだろうか。
気を付けて接しないとな。
その後も二人といつも通り世間話をしつつ時間を潰し、ショートホームルームの時間になる。
「はい、みんな、おはようございます」
「「おはようございます」」
「それで、みんなも噂で知っていると思うんだけれどこのクラスに転校生がやってきまーす」
「「やったー!」」
「それじゃあ、入ってきてください」
入ってきたのは綺麗な銀髪?いやプラチナブロンドの長い髪に整った顔。それにスタイルも抜群な海外の人ともう一人付き添いのこれまた綺麗なアッシュブロンドの髪でプラチナブロンドの子と同じかそれ以上にスタイルがいい人が入ってくる。
みんな一様に呆けてしまって反応できない。
その子は教室に入るとぐるっと一通り見て.............僕と目が合う。
すると顔を綻ばせ、目がキラキラと輝いている。
...........なんで?
「さて、アリシアさん。自己紹介を」
「はい!!私の名前はアリシアアッシュフィールドです。よろしくお願いします」
綺麗な発音の日本語とお辞儀。
すごいな、この子。沢山練習したんだろうな。
「私はある目的のために日本に.............いえ、このクラスに来ました」
このくらす?
「私は、あのお方。祖師谷蒼様にお会いしたくて来たのです!!」
キラキラと目を輝かせて僕の方へと歩を進める。
そして、僕の席の前に立ち手を取る。
一瞬だけ教室の隅に控えている白金さんが動こうとしたけれど制する。
「先日のASMR配信も素晴らしかったです。私は、あなたに骨抜きにされてしまいました。今ではあなたの事しか考えられません。あなたに会えて光栄です」
「え、あ、うん。僕も光栄です」
なんかすごいことになってないか?
いきなりの事に頭が混乱してくる。
「アリシア様」
「痛いわ、エリー」
「祖師谷様だって困惑しています。一度しっかりと自己紹介を終えてからにしましょう」
「そうね。祖師谷様、また後で」
もう一人のエリー?と呼ばれる人に窘められもう一度教壇へと昇る。
「すみません、急に。そういう訳で私は祖師谷様にお会いしたくて日本まで来ました。クラスの皆さん、そしてなにより祖師谷蒼様、よろしくお願いしますね」
僕の方へとウインクを飛ばしてくる。
そして、もう一人のエリーと呼ばれる人の方も恭しく一礼してから教壇に。
「私はエリーバットレットと言います。アリシア様のメイドです。以後お見知りおきを」
凄く綺麗な所作だ。思わず見とれてしまった。
一礼した後、エリーさんも僕の方を見てほほ笑む。
思わずドキッとしてしまうと、隣にいるアリシアさんだけでなくクラスにいる人半分の人がジト目を僕に送って、もう半分はエリーさんに嫉妬の眼を向ける。
「じゃあ、アリシアさんとエリーさんは............」
「私は祖師谷様の隣がいいわ!!」
「私はそこまでは言いませんので祖師谷様の後ろの席で」
「横暴だー!!」
「そうだ、そうだ」
いきなり転校生とクラスのみんなが火花がバチバチしている。
「はいはい、みんな。落ち着いて。私にいい案があります。一時間目は私の授業なので時間を取って席替えをします。恨みっこなしです」
「絶対に祖師谷君の隣の席に座る」
「祖師谷君の周りには絶対に」
「エリー、負けられませんわね」
「そうですね」
僕もくじを引くのがわくわくする。
「あ、祖師谷君はクラスの真ん中の席ね」
「..........はーい」
いいよ、別に。そんな気がしてたし。
気合十分な女子たちが僕に一言言ってそれぞれ向かっていく。
「祖師谷君、私、勝つから」
そう言った由利は............
「祖師谷君の左隣だ!!やったー!!」
望み通り隣の席へ。
愛理さんはというと僕の前の席となった。
転校生二人組はというと
「祖師谷様の右隣、最高です」
アリシアさんが隣、
「望み通りの結果となって良かったです」
エリーさんが後ろの席となった。
凄いな、仕組まれているみたいに仲のいい由利と愛梨さんが近くに来たし、転校生組も望んでいた席を得ている。
その後、席を移動してにっこり顔のアリシアさんと反対側でにらみを利かせている由利。
愛梨さんは緩い感じなので特に変わることはなく、エリーさんは楽しそうにしている。
「祖師谷様、これからよろしくお願いしますね」
「そうですね。よろしくお願いします。アリシアさん」
「祖師谷様?ダメです。アリシアと呼んでください」
「アリシア」
「そうです。あと敬語も不要ですから」
「分かりまし..........分かったよ」
「はい!!」
アリシアは嬉しそうに微笑む。
「祖師谷様、私の事もエリーとお呼びください。それと...........」
耳元でリップ音がなる。これって...........
「お近づきの印です。先日の配信すごく良かったです」
妖艶に微笑むエリー。
もしかして、アリシアよりエリーの方が危険?
「何してるの!?」
「エリーずるいわ。主人を差し置いて」
「それ、私もする」
愛理さんも迫って来るが流石に隅に控えていた白金さんが瞬時に動いて止める。
「あなたは?」
「蒼様の護衛です」
「あら、そうなんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
白金さんは冷たい視線を、アリシアはニコニコとほほ笑む。
エリーは僕の顔をじぃーっと舐めるように見つめていて、愛梨さんは止められて不満そうな顔をしている。
これからこのクラスはどうなっていくんだろうか。
不安もあるけれど、楽しみの方が強いかもしれない。
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