第56話

『ようやく、デビューが近づいてきましたね』

「そうですね」

『あの事件も青様のおかげで落ち着きましたし、準備も万全です』


 あの僕の顔流失事件で僕のデビュー時期が少しだけ遅れてしまったが、ようやく一週間後にデビューできるようになった。


 流失事件の時には、理恵さんから心配の通知があったが安心してデビューの事を進めてくださいと言ったことをちゃんとやってくれた。


 段取りの確認はもう何回もしたし、デビュー前にはスタジオを借りて


 正直、もう少し遅れると思っていたけれど。


 絵師さんに依頼したものはすごくハイクオリティで素人目からしてもすごいクオリティだ。


『それで.............ですね?青様』

「なんですか?改まって」

『これは、先に言っておくべきだと思ったのですが.........なかなか言い出せず申し訳ありませんでした』

「あ?え?なんで謝っているんですか?」

『そ、それがですね.........』


 どうやら、社内のどこかから企業に所属しているクリエイター達、配信者たちに僕がデビューすることが知られてしまったらしい。


 まだ、表には出ていないようだけれど。


 そして、その人たちからコラボのお誘いが絶えないんだとか。


「そうなんですか」

『大変申し訳ありません。社内ではもう厳重に絶対に外に漏れないようにはしていましたが、配信者たちには回ってしまったみたいで。漏らしてしまったものには厳重な処罰を致しましたので』

「いや、外に漏れていないのなら別にいいですよ。僕だってコラボもしたいなっと思って企業に入りましたから」

『そ、そうなんですね。それならば良かったのですが』

「具体的には誰が言っているんですか?」

『そうですね.........』


 いろいろな配信者の名前があげられたので、一人一人チャンネルを見ていく。


 そのなかで目を惹かれた人がいた。


「この人って.............」

『この人は、配信者の莉々さんですね』


 二次元から出てきたのかと思わせる小悪魔系のあざとい女の子だ。頭に角と尻尾を生やしたら本当の小悪魔になってしまうんじゃないかって程、色白だし、小柄な体格に躑躅色の綺麗なロングの髪をしている。


 こんな人、前世でいたらすっごく人気だろうな。


「この人ってどんな配信するんですか?」

『そうですね、主に雑談とゲームです。雑談を主にしていて、リスナーと一緒に男の人にこんなことされたいよね、など恋愛話やその.............そっち系の話をしていてそこそこの人気を博しています』

「そうなんだ.............」


 男にこんなことされたい、か。


 もし、僕がその妄想を叶えられたら莉々さんのリスナーはもちろんの事、僕のリスナーも喜ぶんじゃないか?


「その人と僕、コラボしてみたいな」

『莉々さんでよろしいんですか?当社にはもっと人気のひとが沢山いますが』

「はい、莉々さんがいいんです」

『了解しました』


 それから、少しだけ事務的な話をして理恵さんとの通話を終える。


 僕がデビューをして、相手にも都合があるだろうからまだ先になるだろうけれどコラボが楽しみだな。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る