第55話 妹の戦略
「でしょ?それでね、お兄ちゃんってすごく格好良くて」
「そうなんだ、やっぱり蒼様は格好いいね」
「でしょ?」
風花にお兄ちゃんがいるって信じてもらえてよかった。
「ね、ねぇ、梨美?」
「なに?」
風花がおずおずと私に聞いてくる。
こんなこと、今まではなかった。
「もしかりにさ、私が蒼様とお近づきになりたいって言ったらどうする?」
「それは.............」
「わ、わかってるよ。あんなに格好いいお兄ちゃん。他の人に触れさせたくないよね。その気持ちは痛いほどよくわかる」
風花がそんなことを言ってくるんじゃないかなって何となくだけれど予想はついていた。
私はお兄ちゃんのことが大好きだ。
大好き過ぎて、少しだけ暴走してしまうこともある。自我を失ってお兄ちゃんを求めてしまうこともある。
だって、あんな男の人、この広い世界どれだけ探したっていない程なんだから。奇跡の塊のような人だから。
怪我をして入院する前までのお兄ちゃんも好き.............だったけれど、今のお兄ちゃんは、頭がおかしくなりそうなほど愛している。
だけれど、そのお兄ちゃんはみんなに優しい。
学校にも行ってしまうし、配信活動なんてしている。
私があずかり知らぬところで勝手に女と会ってしまうし、お兄ちゃんにその気がなくても勝手にお兄ちゃんに惚れてしまうだろう。
あれほど格好良くて優しくて完璧なのだから。
だから、私は決めたのだ。
独り占めは、多分できないだろう。独り占めをしようとすればお兄ちゃんは自由のない生活をさせてしまうから。そんなの私も望まない。
であれば、私はできるだけお兄ちゃんが娶る人の数を減らそうと。
私が見極めようと。
放っておけば、数十単位ではなく数百単位のお嫁さんが出来てしまう。そんな数がいれば私に向ける愛はオブラートのような薄いものになってしまうから。
今お兄ちゃんのお嫁さん候補は、お母さん、由利さん、愛梨さん、白金さんくらいだ。
私は、お嫁さん候補ではなくお嫁さんになるって断定できるので排除している。
そして、今、新しく加わろうとしているのが風花。
この子は、私の親友だから。
他の子だったら嫌だったけれど、この子ならいいかな。
「いいよ、風花」
「そうだよね、ダメだよ.............え?いい.............の?」
「うん。いいよ」
「本当に、ほんと?」
「うん。あ、だけれど、お兄ちゃんに気にいってもらわなければそもそもダメだけれど、そこは頑張ってね。最終的に決めるのはお兄ちゃんだから」
「う、うん。頑張るね」
まぁ、多分大丈夫だろう。
お兄ちゃん、可愛いって言っていたし。
.............私も帰ったら可愛いって言ってもらってぎゅーってして、いろいろなところをぺろぺろしちゃおう。
私も割り切ってはいるけれど、嫉妬はするのだ。ものすごく。
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