第51話
「それでね、お兄ちゃん。凄く格好良くてね」
「はいはい」
私が一生懸命お兄ちゃんの凄さを伝えているっていうのに私の友達である風花は全く取り合ってくれない。
風花は私の親友でお兄ちゃんの事もこの子にしか話していない。
私だって、お兄ちゃんの事を自慢したいのだ。
言いふらすこともしないしね。風花なら。
「で、その幻想のお兄ちゃんの話っていつまで続くの?」
「幻想じゃないもん」
「幻想に決まってるでしょ?そんなに優しくて格好良くて完璧な男の人がこの世にいるわけがないでしょ?それもこんなに身近に」
「いるの!私のお兄ちゃんだもん」
「そうだねー。それよりも青様が復活したんだよ!本当に最高」
「だから、その青が私のお兄ちゃんなの!」
「またまたー。夢の見過ぎは体に毒だよ」
全然信じてくれない。
まぁ、分からなくはない。私だって、こんなに身近に男の人がいるとは思えないし。それにあんなに完璧な理想の人がいるなんて聞いても現実だとは思わないよね。
まぁ、信じてもらったら、それはそれで生のお兄ちゃんと会いたいって言いだすと思うから信じなくてもいいんだけれど。
うぅ、私の心は不安定なのだ。
「青様って本当に優しいよね。それに素顔もすっごく格好良くて昨日ずっと見続けちゃったよ」
「分かってるね。私のお兄ちゃんだもん。それはそうだよ」
「.............もしかして、梨美さ」
「うん」
急に風花が真面目な顔をしてこっちを見てくる。
これって、もしかして本当に信じてくれたって事?
それだったら、嬉しいけれど、嬉しくないっていうか.............複雑な気持ちだ。
「青様の見すぎで、自分が青様の妹だと勘違いしちゃったんだね」
「.............え?」
「本当に、青様は罪作りな人だね。でもそんなところも好き!!」
「.............!!違うもん。確かに毎日お兄ちゃんの事は見ているけれど、本当に私のお兄ちゃんだもん。そうだもん」
「はいはい。分かる、分かるよその気持ち。私だって青様の妹になりたいし、お嫁さんにもなりたいから。あぁそう言えば確かにマスクありだったけれど青様の妹、梨美に似てたもんね。」
だめだ、この先言ってはいけない言葉まで言ってしまいそうになる。
だけれど、止められない。
「そんなに、信じられないなら私の家に来て確かめればわかるもん。本当だもん」
「はいはい。じゃあ今日家に行ってあげるから夢から覚めようね」
本当に自分の子供っぽさに嫌気がさすけれど、信じてもらうためには仕方が無い。
あぁ、でも生のお兄ちゃんの事を見て欲しくもないという強い気持ち。
あぁ、凄くもやもやするけれど決まってしまったことだし。お兄ちゃんには迷惑を掛けるかもしれないけれど、一度だけあってもらうってことにしよう。
信じてもらえれればそれでいいから。本当に一回だけ合わせてあげるだけだからね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます