第46話 きこえているからね?

 朝から一悶着があったけれど、何とか乗り切り白金さんを連れた初めての登校になる。

 

 母さんと梨美は未だにむすっとした顔つきをしているので、頭を誠心誠意優しさを込めて撫でると蕩けたような顔をするけれど、止めるとまたむすっとした顔に。


 その繰り返しをしながらも、どうにか車で母さんに送ってもらい学校へ着く。


 校門にいる人だかりを、関係者入り口から入りどうにか避ける。関係者入り口も人がいたけれど、どうにか警備員さんが防いでくれている。


 ごめんなさい、僕のせいで。


 さて、どうにか学校へ行けたけれど、梨美が離してくれない。


「そこの白金さんとあんまりくっつかないでね?」

「うん。分かってるよ」

「蒼様のことは死んでもお守りするのでご心配なく」

「それは、当り前でしょ?私が言いたいのはあなたがお兄ちゃんに近づきすぎないようにって言いたいの」

「私は、蒼様の護衛ですから近づくなと言われましても無理があります」

「そういって、また抱き着くなー!」


 あの白金さん、あなた梨美を揶揄ってますね?


「ほーら、梨美?今度一緒にデートするからこの話は止めよ?梨美も遅刻しちゃうでしょ?」

「え!?本当?嘘じゃない?」

「うん。いいよ」

「私は護衛なので、ふたりっき......」

「白金さんは少しお口チャック、ね?」


 そう笑顔で白金さんの口をふさぐ。


 ......白金さん、顔を赤くしないでください。


「絶対だよ?」

「うん」


 そうして、梨美をどうにか説得してやっと学校へ行ける。


 車を降り少し歩くと、もう女の子がこっちをちらちらと見てくる。


 手を振ると、恥ずかしそうに手を振って返してくれて、逃げ出してしまう。


「蒼様。あまりそういうことを為さらない方が、身のためですよ?」

「そうなの?」

「最悪、あなたが強姦されます」

「強姦!?」

「女をあまり舐めない方がいいですよ?勘違いしちゃいますから」


 そう平然という白金さん。


 そうか、じゃああんまりしないほうがいいのかなぁ?


「ですが、私がいるのでそんなことはさせませんが万が一の事があるかもしれませんので」

「了解、でも不愛想だと思われそうだけれど」

「男の人は、普通不愛想でガサツで暴力的で短気なものです。蒼様のように優しくありませんので、大丈夫です」


 そんなものなのかなぁ。


 僕は未だに納得ができないけれど、あんまりしないようにはしよう。


「それに、雌犬に群がられると私と蒼様の二人っきりの時間が減りますし」


 ぼそっと呟いたけれど聞こえているからね?


 

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