第43話 

 男性警護官。


 文字通男性を警護するためにいる人たちであり、相当強くこの人たちがいれば安心できるほどだ。


「私もそれを、考えていましたけれど………母親失格なことは分かっていますけれど、蒼ちゃんとずっと仕事でも一緒に入れることが羨ましすぎてずっと要請するのをためらってたんです」


 母さんが、そんなことを話す。


 母さんから聞くと、実は退院する時にはすでに警護官をつけようかと思っていたがどうしてもそのことが頭から離れず先延ばしにしていたらしい。


 それに、僕が外に出たい、学校に行きたいなんて思うわけがないと思っていたのもあったらしい。

 

 家でずっと安全に暮らしているから、男性警護官は必要ないだろうと。

 

 だが、僕がいろいろアクティブになりその感情を引きづったまま、今日まできてしまったらしい。


「ごめんね、蒼ちゃん」


 そう言って、頭を下げてくる。


「大丈夫だよ、母さん。だから泣かないで、ね?」

「うぅ、ごめん。ごめんね。蒼ちゃん」


 母さんを抱きしめて、ゆっくりと頭を撫でる。


「僕だって、母さんとほかの男の人がずっと一緒にいたら嫌だから」

「そ、そうなの?」

「うん」

「え、えへへ。蒼ちゃん大好き」


 さらに母さんは深く抱きしめてくる


「ええー、こほん」

「あ」


 校長先生が咳ばらいを一つする。


「親子の中が大変よろしいんですね。流石、女性に優しい青様。………あとで私も抱きしめてくれませんか?」

「だめ、です。蒼ちゃんは私の蒼ちゃんです」


 母さんが僕を胸に抱く。

 

 マシュマロのような胸に埋まるように僕は沈んでいく。


 二人が、少しにらみ合いをしてから木下先生が仲裁し、どうにか話が戻る。


「母さん、男性警護官、要請してもいいかな?」

「……うん。蒼ちゃんの安全には変えられないもん」


 母さんが、承諾してくれたので要請することになった。


「私たち教師でも生徒が不用意に、祖師谷君が嫌がっているのにも関わらず近づこうとする生徒がいる場合、対処していきます」

「お願いします」


 母さんが、頭を下げるのに合わせて僕も頭を下げる。


「まぁ、今はとりあえず、国からの要請が出るまでは自宅待機をしていただくようにお願いします。課題のプリントなどは、そうですね……祖師谷君の仲の良い由利さんと愛理さん、あとは私が持っていきますね」

「よろしくお願いします」


 その後も先生達と話合いをし続け、今日は解散となる。


「青様、配信頑張ってください」

「ありがとうございます」


 なんだか、うちの高校の校長先生はいろいろすごい人だったな。


 


 

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