第37話
「三年生の劇、楽しかったね」
「そうだね」
すさまじかったなぁ......まさか、あそこでBL展開になるなんて思わなかった。
この世界ならではっていうか、なんというか。
お腹一杯だわ。
「次どこ行くー?」
「その前にお手洗いに行ってもいいかな?」
「あ、うん。いいよ。行ってらっしゃい」
トイレに行くついでに、二人に飲み物を買っていこう。
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楽しいな、祖師谷君と一緒に居られて。
正直、劇の内容は知っていたし、何より祖師谷君の横顔をずっと見ていたかったから、劇は見ていなかった。
横顔を見ているだけで胸はドキドキしたし、劇を見ている間も私と手を繋いだままにしてくれてすっごく嬉しかった。
「由利、気持ちは分かるけれど。顔がすごいことになってるよ」
「だって、しょうがないじゃん。祖師谷君、優しいし格好いいんだもん」
「それは、本当にそう」
二人で、恒例の祖師谷君談義をしていると......
「ねぇ、あんたらさ」
他校の生徒だろうか、いかにもな人が不機嫌そうに声を掛けてきた。
「なんで、あんないい男と一緒にいんの?」
「自分が可愛いとでも思ってる?」
面倒臭いなぁ。
「別にどうでもいいでしょ。あんたには関係ないし」
「はぁ?うっざ。......それより、あの人の事を紹介してくれない?」
「嫌だ」
しかめっ面がさらに増して、こちらを睨んでくる。
「私、あんまり暴力とか好きじゃないんだけれど」
「じゃあ、しなければ?」
愛理、あんまり煽らないで。
「お前!」
私の胸倉を掴んで、殴ろうとする。
「ストップ!!」
祖師谷君が間に飛び込んできて......。
「祖師谷君!!」
「え、あ、ち、ちがう」
殴られてしまい、倒れてしまう。
「大丈夫?」
「痛いところない?」
「う、うん。大丈夫だよ」
こいつ......!!
「はーい、ストップ。僕のために怒ってくれるのは嬉しいけれど。そんな顔しない」
「そ、祖師谷君?」
「祖師谷君......」
私と愛梨の頭を撫でて落ち着かせてくれる。
「あのさ?なんで喧嘩してたの?」
私たちは、祖師谷君に起こったことを話す。
「えぇーっと、ね?僕と仲良くしたいの?」
「え、あ、は、はい」
「でも、暴力はダメだと思うな」
「申し訳ありません、ごめんなさい。本当にすみません」
「ちょ、土下座しないで。僕に謝るなら、由利と、愛梨さんに謝って欲しいな」
まずい、本当に。胸の鼓動が速い。
祖師谷君、格好良すぎ。しゅき、だいすき。
「「ごめんなさい」」
「よくできました。じゃあ、こんなこと、もうしないでね?」
「はい!」
「僕の名前は、祖師谷蒼。きみの名前は?」
「わ、私は、根米美里です」
「椎名咲です」
「美里さんと、咲さんね。うちの文化祭たのしんでね?僕のクラスでカフェもやってるから。来てくれると嬉しいな」
「は、はい!!絶対行きます」
「行きます!」
「じゃあ、僕たち、もうすぐ休憩終わるから。待ってるね?」
そう言って、私たちの手を取り、野次馬の群れの中から連れだしてくれる。
祖師谷君しかみれない。
顔も真っ赤だというのは、見なくても分かる。
すっごく、幸せ。
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