第36話

「あ、母さん。梨美。いらっしゃいませ」

「お、お兄ちゃん。格好良すぎぃ」

「しゃ、写真撮ってもいい?」

「注文して、食べ終わったらね」

「はーい」


 梨美と母さんを席まで案内して、メニューを渡す。


「ね、ねぇ。あの人たちって祖師谷君の家族?」

「うん、そうだよ。妹とお母さん」

「お母さん、綺麗な人だね。それに妹さんも」

「そうだね、僕もそう思う」


 身内びいき抜きにしても、母さんと梨美は美人だと思う。


 母さんは、全然年を感じさせないし、梨美は見たままの通り凄い可愛い。


「あ、蒼ちゃん。注文してもいい?」

「はい」

「えーっと、オムライスとこのパフェをお願い」

「分かった。料理できるまでちょっと待っててね」

「待ってる間、蒼ちゃんの事眺めてて良い?」

「それ、楽しい?」

「うん、楽しいし、幸せ」

「お兄ちゃん、あんまり私たち以外のお客さんとべたべたしないでね。調子に乗っちゃうから」

「りょーかい」

「あ、あと、あの人、呼んできてくれないかな?」 

「由利?」

「………名前で呼んでるんだ」

「え、あ、うん」

「今はまぁ、いっか。呼んで?」

「は、はい」


 梨美がじっと、睨むようにして怖い顔をしているので逆らえずに由利を呼ぶ。


「由利、僕の妹が呼んでるんだけれど、行ってあげてくれない?」

「え、うん。分かった」


 ぼそっと、「家族を紹介してくれるってことは……」と呟いていたことは聞かなかったことにしよう。


 由利は、梨美と母さん、それとそこに途中から愛梨さんも混ざって会話して解散していた。


 聞いても、「祖師谷君には秘密」そう言われてしまう。


 気になるけれど、今は仕事をしないと。


 それから、母さんたちは食事をして僕と写真を撮って帰っていく。


「お兄ちゃん頑張ってね」

「うん。梨美と母さんも帰り気を付けてね」

「うん!!早く帰ってきてね」

「できるだけね」


 母さんと梨美を見送り、仕事をこなすこと数十分程度。


 休憩の時間になるので、由利さんと愛梨さんに声を掛ける。


「由利、愛梨さん。一緒にまわろ」

「うん!!」

「楽しみ」


 二人は僕の隣に並んで、歩き始めた。


「何処いこっかなー。三組がやってるお化け屋敷をもみたいし、三年生四組がしてる劇も見たいなぁ」

「あ、あの......ね?祖師谷君。その......」


 伺うように、僕の小指をそっと握ってくるので、繋ぎ直す。


「あ、ありがとう!!」

「私も」

 

 そう言った愛梨さんは、恋人つなぎの形にして由利さんにどや顔している。


「私もするもん!!」


 頬を膨らまして、普通に握っていた手を指と指を絡ませる恋人つなぎへと変える。


「じゃあ、いこっか」


 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る