第23話
「じゃあ、行ってきます」
「……行ってらっしゃい」
昨日の会談から、一日が経った。
正式に配信で発表できるようになるのはもう少し先の事だろう。
相変わらず、母さんは僕が学校へ行くことに抵抗があるみたいだけれど、帰ったら存分に甘やかすから許して欲しい。
「あ、おはよう。祖師谷君」
「おはよう。由利」
車から降りて、すぐに由利を見つける。
最近そんなことが多いような気もするけれど。
「おは、由利、祖師谷君」
「あ、おはよう。愛梨さん」
「おはよ、愛梨」
その後に愛梨さんが合流して昇降口までたどり着く。
下駄箱を開けると……バサッ
「…祖師谷君は、人気者だね」
「........ははは」
限界まで詰められていたのか手紙が溢れだした。
一つ、拾い上げて読む。
『祖師谷様、私はあなたの事を一目見た時から心を奪われ、どうしようもないほどの熱が胸に籠ってしまって焼けてしまいそうです。私はあなたの事を心から愛しております。髪の毛の毛先から足の爪の垢まで。どうか、愛人でもいいので私を女として扱ってくださいませんか』
何とも情熱的なポエムというか手紙というか。
「ふぅーん、良かったね。祖師谷君」
「まぁ、ね」
毎日大量に送られてくる手紙すべてに返事を書く作業は正直疲れる。
けれど、一生懸命書いてくれたんだなっとおもうと無下にはできないし。
「あ、あのさ。私から手紙が送られてきたらどうする?」
そういって、頬を染めてもじもじする由利。
可愛い。
「でも、ごめん。今は彼女を作る気がなくて」
配信者に彼女なんていたら、一瞬で崩壊してしまう。
それも、ここはいろいろ逆転している世界だ。女性からの応援が多いし、ガチ恋勢も多い。僕に彼女がいると分かったらその人にまで被害が及ぶ可能性もある。
でも、将来的には僕も........
「将来的には、結婚したいけれどね」
「........え!?そ、それって。私もチャンスがあるってこと?」
「........さて、教室に行かないと。ね、愛梨さん」
「その話、私も興味ある。私にもあるってこと?」
「いこっか」
「もぅ、祖師谷君」
「祖師谷君は意地悪」
この世界は重婚も可だし、正直、今すぐにでも愛梨さんと由利と交際したいけれど、配信があるから。もっと大きくなるって夢があるから。
それまでは、待っていて欲しい。
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