第21話

大企業からのお話の連絡から一晩経った。


とりあえず、話をする方向で返事はしたけれど、企業に入るかどうかは正直分からない。


 入ったら、発言の制限とかされるしね。


 でも、入ったらメリットがあるけれど。


 まぁ、今はそんなことより…


「おはよー、由利」

「おはよー祖師谷君」


眠そうに欠伸している由利に挨拶ををする


「眠そうだね、由利」

「だ、だって青君が配信してて、配信終わった後にアーカイブも見直したから」

「そうなんだ」

「本人を目の前に言うの恥ずいんだけれど」


顔を真っ赤にして恥ずかしそうにする由利。


 可愛い。 


「ありがとね、由利」

「ひゃっ」


耳元で囁くとびっくりしたような声をあげる。そして恨めしそうな顔をしてじっと見てくる。


「ごめん、ごめん。由利が可愛くて意地悪しちゃった」

「か、可愛い?」

「うん。可愛いよ?由利は」

「うぅ、またからかってるんでしょー。もう」

「ホントだよ?」

「うぅ…あ、ありがとうございます」

「なんで敬語?」


由利を揶揄いながら、教室まで行く。


「お、おはよう。祖師谷君」

「おはよう、早希さん」

「おはよー、祖師谷君」

「おはよ、莉里さん」


教室に入るとみんな挨拶をしてくれる。


最初は緊張してぎこちなかったけれど今ではスムーズに挨拶をしてくれるようになった。


「朝から人気だよねー、祖師谷君は」

「そ、そうだね」


じーっと僕の顔を見て、そんなことを言ってくる。


「でも、一番の友達は由利だから」

「え、えへへ。そ、そうなの?」

「うん。由利が一番だよ」


これは本当のことだ。この学校では由利との仲が一番いい。


「えへ、えへへ。私が一番。ふへ、ふへへ」

「おーい、由利さーん?」


女の人がしちゃいけない顔をしている由利をどうにかして席に座らせる。


「祖師谷君。おは」

「おはよ、愛莉さん」

「朝から、大変」

「あはは…」


最近、クラスで仲良くなった愛莉さんだ。由利さんの友達で結構仲がいいみたい。


 見た目は、由利ちゃんのように髪は染めてはいないけれど、耳と軟骨に穴が開いていて髪はロングで切れ長の目。少し怖い印象を受けるけれど喋ってみると、ノリも今のように気怠いような軽い感じだ。


 正直に言って、すごく美人だけれど胸が大きいためか、自分を美人だとは思っていないみたい。


「愛莉さん、今日の小テスト大丈夫ですか」

「うっ。それは言わないでほしい」


 愛莉さんは勉強が少し苦手だ。だけれどこの学校に入学してるから頭はいいんだと思う。


「また、応援しましょうか?」

「…いいの?」

「愛莉さんが頑張れるなら」

「うん」


とこくりと頷き、期待した瞳で僕のことをみる。


「じゃあ…頑張ってください。愛莉さん。フレー、フレー、愛莉!…なんちゃって」

「…祖師谷君、マジ神。私、絶対満点とる」


顔を真っ赤に染めて、ふんすっと意気込む愛莉さん、


 普段、あんまり表情を変えないからこういう照れた顔が可愛い。


「はっ!?私は今まで何を?」


 ちょうどトリップから帰ってきた由利さん。


「愛莉、顔がニヤけてるけどどうしたの!?珍しい。まさか…祖師谷君に何かしてもらったね!ずるい、私も」

「だめ、これは私だけ。ね、祖師谷君」





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