第19話 うっそぉ

 教室で、普通の学生と同じように授業を受けるけれど、木下先生の授業の時は、じっと僕の事を見て、ウインクしていたり、由利はどうしてかうっとりとした表情で僕の事を見つめているし、クラスのみんなは、授業に集中せずそわそわしているような。


「..........っていうことで、由利は、テストとか大丈夫なのかなって」

「そんなの、大丈夫に決まってるよ。祖師谷君が応援してくれれば。クラスのみんなだってそうだと思う」

「そうなの?」

「うん。祖師谷君は自分の力を弱く見すぎているよ。多分、応援しただけでも次のテストの上位三十は私たちのクラスで埋まると思うよ」

「そんなわけないでしょ」

「じゃあ、試しに今日の数学の小テストでしてみる?」

「そんなにいうのなら..........」


 今は昼休み。


 数学Ⅰは六時間目だ。


 どうにか頑張っても五時間目くらいしか内職できないしな。そんなことないない。


「みんなー、聞いて。祖師谷君が、応援してくれるってー」

「え!?ど、どうして?何したら応援なんてしてもらえるの?」

「私たちが、六時間目の数Ⅰの小テストを頑張ってくれるならだって」

「す、する!!絶対にするから、蒼君に応援してもらいたい!」

「私も」

「私も!!」


 クラスのみんなが期待を込めた表情で僕の事を見てくる。


「分かったよ。いくよ?」

「うん!!」

「みんな!六時間目の数学の小テスト応援しているから。頑張ってね!!満点取ってね!」

 

 とできるだけ、前世のアイドルっぽく自分の出来る限界で、応援してみたけれど.........


 教室はしんっと静まり返っている。


 ..........ほら、やっぱり..........。


「うぅ、うぁぁぁ。ひっぐ、男の子がおうえんじてぐれるなんで、わだじ、じんでもいい」

「最高」

「生涯に一片の悔いなし」


 泣き崩れる人、頬を染めてくねくねしている人、武士の人、色々いて、隣の由利を見ると頬を染めて俯いていた。


「こ、ここまでしなくて良いのに。てきとうに頑張れって言えばそれでよかったのに。あんな殺人スマイル反則だよぉ」


 僕の腕を掴みグラグラと揺らした。そして、キッと前を向き


「みんな、絶対満点とるよ!!」

「「「「はい」」」」


 クラスがこの上なく団結していた。


「私も勉強するから!絶対に満点とるから!」


 クラスはしんっと静まり返り、シャープペンシルが走る音、ページをめくる音だけが聞こえるようになる。


 五時間目もみんなは勉強を続けていた。


 先生からは、苦言を呈されていたが「私たち、これに命かけているんで」そう言った生徒の眼差しが本気だと分かると、そっと頷いて気にせず授業を続けていた。


 なんでだよ。

 

 そして..........


「やめ、じゃあ。答案回収しちゃうよ。次のテストには返すから」


 そして、次の日の数学。


「皆さん、よくできています。というかできすぎです。何があったんですか?全員満天だなんて」

「や、やったー!!」

「私、やっぱりできる子なんだ!」

「祖師谷君のおかげだ」

「祖師谷様!!」


 まじか.........。


 由利の方を見ると、口パクで「ほらね、言ったでしょ?」そう言ったような気がした。

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