第18話
「今日は、学校お休みしよ?」
「それ、ほとんど毎日言ってる。昨日休んだでしょ?三日は行くんだから今日は行かなきゃ」
「むぅ」
朝、車で送ってもらい、校門まで着く。
「じゃあ、行ってくるね」
「いってらっしゃい」
不満そうな顔をしているけれど、結局は行かせてくれる母さん。
帰ったら、いっぱい甘やかしてあげるから。
今日から普通の時間に登校する。
車を降りると、女子学生たちが一斉に僕の方を見た。
そして、じっと観察しているので、手を振ってあげると固まってしまったので「おはよう」と声を掛けると、ぎこちなく返される。
「あれって、祖師谷君じゃない?」
「あ、本当だ。まじで近くで見ると格好いい!」
どうやら、僕の名前が結構知られているみたいだ。そして、段々と硬直が治っていき........
「きゃー!!男の子が、それもあの祖師谷君が、手を振ってくれたんだけれど!」
「えへへ、えへ、にゅふふ」
「私に振ってくれたんだよね?挨拶してくれたんだよね?結婚式はどこでしよっか?」
「はぁ?私に振ってくれたんだが、勘違いすんなよブス女が」
「はぁ?調子に乗んなカス」
「うるさいなぁ、私にしてくれたに決まってるじゃん」
「はぁ?」
と、歓声から一転、怒号が飛び交う地獄へ。
「みんな、喧嘩しないでくれると嬉しいな?みんなにひとりずつ挨拶するから」
「え!?ほ、ほんとうですか?」
「うん、いいよ」
「まじ!?」
「天使!」
「もぅ........だめ。しゅき」
とがたがたと震えて、膝から崩れる人、もじもじしている人、放心している人さまざまだ。
「じゃあ、一人目は、誰ですかー?」
「は、はい!!私、私が行く!」
と最初に放心状態から帰ったのかボブカットの可愛い子が名乗りを上げた。
「じゃあ、最初は君ね?」
「あ、私も!」
「私も」
「順番ね?列に並んでね」
「「「はーい!!」」」
とさっきまで喧嘩をしていた人たちが並び始め、段々と列を作っていく。
「じゃあ、まず、おはよう」
「あ、お、おはよう。........あの、わ、私、青峰花梨っていいます」
「あ、じゃあ、青峰さん。おはよう。僕の名前は祖師谷蒼っていいます」
「し、知ってます。これから、よろしくお願いします!」
「うん、よろしくね」
顔を赤くして、恥ずかしくなったからなのか走って逃げてしまった。
「じゃあ、次の人ー」
捌いているはずなんだけれど、一向に減る感じがしない。
「.........って、木下先生、何してるんですか?」
「だ、だって!私だって祖師谷君におはようってしてもらいたいんだもん」
「列に並ばなくたって先生ならしてあげますし、普通挨拶に列なんて作らないんですから」
これは特例だけれど。
「って、言うことは私って特別なの?」
「まぁ.........あんなこともしましたしね」
「っ.........!えっち。でも、祖師谷君、今日も格好いい!じゃあ明日から毎日おはようってしてもらおう」
「はいはい、分かりましたから。お仕事頑張ってください」
「うん!すごく元気出た」
スキップしながら、職員玄関の方へ入っていく。
「おはよ、祖師谷君」
次に来たのは綺麗なロングの金髪をなびかせている由利だ。
「あ、由利、おはよ。別に由利も並ばなくて良かったのに」
「だって、割り込めないけれど、祖師谷君におはよって言いたかったから並ぶしかなかったんだもん」
「うっ」
可愛い。
なんで、この子がこの世界ではあんまり可愛くない部類なのか分からない。
「じゃあ、また、後でね。由利」
「う、うん!!」
名前を呼ばれたからなのか、嬉しそうに去っていく。
遅刻ギリギリまで、おはようの列は増え続けた。
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