第17話

「ただいまー.........って、母さん痛い、いたいから」

「うわーん、蒼ちゃん、お帰りー!!」


 学校から帰ると、熱烈な抱擁で出迎えてくれる母さん。


 余程、心配で寂しかったんだろうな。


「お母さん、心配しすぎ。私がいるんだから、他のメス豚になんて触らせてあげるはずないじゃん」

「こーら、梨美。お口が悪いぞ」

「ごめんなさい、お兄ちゃん。えへへ」


 僕がコツっと頭を軽く、叩くと嬉しそうにしている。


 僕、怒ったはずなんだけれど。


 何故梨美と一緒に帰ってきたかというと、男の僕が一人で帰ると誘拐されて監禁されてしまうかららしい。


 なので、梨美が絶対に一緒に帰ると言い張って聞かなかったため、こういう形となった。


「蒼ちゃん、学校でなにかされなかった?」

「大丈夫だよ。みんな優しかったから」

「.........クラスの、女どもとも仲良くしたの?」


 そう言って、真っ暗な目を僕に向けて問いただしてくるのは梨美。


「えっと、いろいろ、学校の事を教えてもらっただけだからそんなにまだ、仲良くなってないかな」

「ふぅ.........そっか。でも、あんまり近づきすぎちゃだめだよ?女なんて、みんな不潔なんだから。お兄ちゃんに触れていいのは私だけなんだから」


 ..........絶対に、木下先生の胸を触って、かなり仲良くなったなんて言えない。

 

 あと、胸を押し付けられて、配信していることも由利にバレたなんて絶対に言えない。


「蒼ちゃん、私の事も構ってぇー」

「分かった、分かったから。まず、ご飯にしよ?そのあとね、いっぱい甘えさせてあげるから」

「やったー!!早くご飯にしよ?」


 子供のようにはしゃぐ母さんに苦笑してしまう。


 ..........っ!?


「お兄ちゃん、私もいっぱい甘えたいなぁ。お母さんだけってことはないよね?」


 絵里が、真っ黒でどす黒い瞳で僕の事を見つめる。


 顔は、笑顔なのに怖い。


「梨美?顔が怖いよ?笑って?」

「にゃ、にゃにをするの。おにいひゃん」


 頬を引っ張り、無理やり戻す。


「梨美の事もたくさん甘えさせてあげるから、ね?」

「う、うん!!絶対だよ?」


 今日は配信はできそうにないな。


 二人を相手にするだけで精一杯だしな。


「ご飯用意しちゃうから、梨美手伝って」

「はーい」

「僕も、手伝うよ」

「お兄ちゃんはダメ、怪我したら私、自分の事が許せなくなっちゃう」


 そう言った梨美の眼は人を殺せるかのような目だった。


 やっぱり..........梨美って、想いが重い子なのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る