第15話

「ねぇ、祖師谷君」

「なんですか?」

「あの.........女の人のこと嫌いじゃないの?」

「うん、普通に好きだし、喋れたら僕も嬉しいかな」

「「「きゃー!!」」」


 休み時間が来ると、僕の周りにはすごい数の女子生徒が来ている。廊下からも僕の教室に流れ込んできていて、大変なことになっている。


「あ、あのさ、祖師谷君。女の人が、好きって言ってくれてるけれど.........好みのタイプとかはあるの?」

「うーん、僕は.........これ、秘密にしてほしいんだけれどね」

「なになに?」


 僕の席の周りに来ていた人は耳を近づけて話を聞く。僕は小さく囁くようにこう言った。


「大きな胸の人とか、お尻の人とかが好きかな.........って」

「「「ええええー---!!!!」」」

「静かにね?」

「は、はーい」

「えーなになに?聞こえない。もう一回言ってー」


 少し離れていた人は聞えなかったのか詰めるようにして聞いてくるが.........


「だーめ、教えない」

「えー、祖師谷君、ひどい。ねぇ、花梨、教えて」

「だめだもん。祖師谷君が秘密って言ってたから」

「聞けた人だけの秘密だよ?木下先生に怒られちゃうから」

「はーい」

「ずるい、ずるい」


 さらに人が押し寄せ、ぎゅうぎゅうになってくる。


 その中で一人の女の子がこんなことを耳打ちしてくる。


「ぎゅうぎゅう詰めだから、お胸、祖師谷君に触れちゃうかもね」

「え?」


 そう言った、金髪ロングの大きな胸の子は、茶目っ気たっぷりにそう囁いて、腕あたりに胸をさりげなく押し付けてくる。


「祖師谷君は、どんな食べ物が好きー?」

「え、えーっと、カレーとかかな」

「そうなんだー、実は、私は料理が得意でさー.........」

「はいはい、アピール乙。それより、私、祖師谷君に学校案内してあげたいなーって思ってるんだけれど」

「あ、ありがとうね。でも、またこんどね?」

 

 不味い、腕に当たっている胸の感触に気がとられてしまって全然会話に集中できない状態になってる。


 胸を当てている当の本人を見ると、そっと金髪を耳に掛けこっちを見て蠱惑的な笑みを浮かべた。


「はーい、お前らー自分の席に戻れー。他の学年やら教室のやつは早く帰れー」


 もう少しでチャイムが鳴る。


「祖師谷君、私席に戻るね?」


 そう言った彼女は教室の窓側の角の席に戻っていく。

 

 昼休みに、名前でも聞こうかな。友達になれそう。


「わ、本当に男の人がいる.........しゃ、写真撮ってもいいかな?」


 誰先生か分からないですけれど、さっさと授業を始めてください。


 


 

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