第10話

 まさかここまで、増えるなんて思わなかった。


 一日で登録者数が五十万人まで増え、SNSでは僕の話題で持ちきりで登録者数が今でも伸び続けていて留まることを知らない。


「こうなると、思った。だから嫌だったのに。私のお兄ちゃんが大きくなっちゃう」

「大丈夫だから、そんなに頬ずりしないで」

「むりー!!寂しいもん」

「分かったから」

 

 梨美は放送直後は優越感に浸っていたが一晩経つと、不安で仕方がないのかずっとくっついてくる。


「それと、母さんも。仕事行かないとでしょ?」

「いやー!!」


 朝から母さんもこれだもんな。


「朝ご飯作ってあげたでしょ?」

「美味しかった!!」

「仕事行かなきゃでしょ?」

「分かってるけど嫌なの!!」


 朝何気なくテレビをつけたら、『youwatch生放送に、王子現る!?』なんて見出しで僕の事が放送されてるんだもん。


 将来的には大物になりたいと思っていたが、一日でここまでことが大きくなるなんて思わなかった。


「僕は、二人の事疎かになんてしないから、ね?」

「..............証拠、見せて」

 

 といって唇を突き出してくる。


 これって、キスしろって..............こと?


 恥ずかしいけれど、これからも配信していきたいし二人を安心させるためにも..............


「んっ」

「ん..............」


 二人の唇にそっとキスをする。浅いキス、だけれど二人は頬を真っ赤にして僕の胸に頭をぐりぐりと擦りつけてくる。


「蒼ちゃん。こんなこと他の女の子にしちゃいけないんだからね」

「や、やっぱりお兄ちゃんのきしゅ好き」


 二人がしてって言ったからしたんだけれどな。


「じゃあ、二人とも、学校と仕事行ってらっしゃい?」

「うん」

「行ってきます」


 「帰ったら、一緒にご飯作ろうね」「帰ったら一緒に遊ぶ!!」と二人とも元気に外に出ていくので、見送る。


 元気いいよな、二人とも。


 梨美ももう中学三年生なんだから受験考えないといけない時期なのに、はしゃいじゃってて大丈夫なのかな。


「そういえば..........僕って、高校に在籍してるのかな。二人があんまりにも外の事について教えてくれないからわかんないや」


 高校かぁ、行ってみたいな。




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