第9話

「さて、始めますか」


 サムネとタイトルを決め、配信を開始する。


 サムネに男の僕の顔を載せたし、物珍しさで来てくれるといいんだけれど。


「こんにちわー」


 と挨拶をしてみるが、まぁ初配信それに始めた直後、本当に誰も来てくれていない。


『こんにちわ、ほ、本当に男性の方だ』

「あ、こんにちわー、みーちゃんさん?」


 っとそのとき初めての視聴者が現れ、だんだんと視聴者の数が上がっていく。


『か、かっこいい』

「ありがとうございます。テンキーさん」

『わ、私の事も、読んでください』

「えーっとアートさん?」


 いつの間にか視聴者の数は膨らみ、二百人ほどになっている。


『男の人でこんな優しい人初めてかも』

「みーちゃんさん、さっきもコメントしてくれたね。そんなに優しいかな?僕って」

『優しい』

『優しすぎる』

『多分天使なんじゃないかって思ってる』

「そんなに?ありがと、みんな。これを機にファンになってくれると嬉しいなって」


 と優しくほほ笑むとコメントが爆速で流れていく。


『かわいい』

『可愛い』

『は?かっこかわいいだろうが』

『格好良くて死ぬ』

「えー、死んじゃ嫌だな。頑張って生きて、明日も配信するから来て欲しいんだけれど」

『絶対に行く』

『大好きです』

『ファンです』


 自分でも少しくさいセリフを言っている自覚があるけれど、喜んでくれているならよかった。


『今、何歳なんですか?』

「僕は、いま15歳だよ」

『おい、そのコメントセクハラだぞ』

『気にしないでね、青君』

『〇ね』


 と急激にコメントが荒れる。


 どうやら、今の年を聞く質問が良くなかったらしい。


 年を聞くだけで多分セクハラ判定なんだろうな。あっちの世界よりセクハラに厳しいような。


「みんな、大丈夫だよ?そのくらいじゃ怒らないよ僕は」

『本当に優しい』

『青君、本当にしゅごい』

『好きなタイプって何ですか?おっぱいは大きいのが好きですか?』

『本当にお前、〇ね』

『帰れよ』

『青君が配信しなくなったら、お前のせいだからな』

『クソが』

 

 この人、多分荒らしってやつなんだろうな。


 だけれど、こっちの世界の荒らしって生易しいような気がする。


「みんな、そのくらいじゃ怒らないって。好きなタイプはそうだな、優しい人がすきだな。おっぱいはその..............大きい人が好きだな」

『え?』

『E?』

『ええええええええええええ』

『まじか』

『青君しゅごい』


 とまたもや爆速でコメントが流れ、収拾がつかなくなるくらいの盛り上がりを見せている。


 だが、やはり少しだけ違ったコメントも見られる。


『嘘乙』

『どうせ、あと数日すれば…』


 と否定的な意見が少ないけれど見られる。


「うーん、どうすれば信じてもらえるかな?..............オフ会はいつかしたいけれどまだ早いし」


 とその時部屋をノックする音が聞こえる。


「みんな、ちょっとごめんね」


 いったん画面を隠し、ドアを開けると、マスクをつけた梨美がいた。


「お兄ちゃんが困ってたから助けてあげようと思って」

「ありがと」


 そうだ、梨美と仲良くしているところを見せれば信じてもらえるかも。


「みんなお待たせ」

『大丈夫だよ』

『何時間でも、青君のためなら待てる』

「ありがと、みんな。それで、みんなに紹介するね。うちの妹のミリ」

「こんにちわ。お兄ちゃんの妹だよ」


 そう言った梨美はいつものように僕に抱き着く。


『は?』

『は?』

『は?うらやましすぎるだろうが』

『ふえええええええええええええええええええ』

「ふふっ。いいでしょ?お兄ちゃんはいつも優しいんだもん」

「妹に優しくするのは普通でしょ」

「だってー、みんな、妹に優しくするのは普通らしいよ?」


 と見せつけるように意地悪そうな笑みを浮かべてカメラを見つめる。


『ずる』

『せこい』

『私も妹に生まれたかった』

『うちに、兄がいるけれどこんなに優しいことなんて一度もない』

『いるだけマシ』


 と嫉妬の声が多数。


「それと、お兄ちゃんは本当に大きな胸が好きだよ?あとお尻も。ほら」

「配信中だし」

「いいから、触って?」

「うん」


 とゆっくり触る。


 母さんよりすこし小さいけれど、やっぱり信じられないくらい柔らかくて最高だった。


『まじか』

『いいな』

『私、gカップあるけれど、触ってくれますか?』

『私、Fカップ』

『私、H』

 

 とバストのサイズがコメントを埋め尽くすなかなかカオスな状況だ。


「お兄ちゃん、くすぐったいよ」

「ご、ごめん」

「いいよ、もっと触って」


 そう言ってぼくの手を掴みさらに胸を押し付けてくる。


『ずるずるずる』

『うらやま』

「えへへ、いいでしょ。お兄ちゃん大好き」

「はいはい」


 といつものように頭を撫でてあげる。


『伝説の頭なでなでとか』

『私もされてみたい』

『いいな!!』

『私の胸もいいこいいこしてほしい』

『妹にどうすればなれますか?』

 

 いつの間にか、視聴者の数は二万を超えていて、SNSのトレンドを僕の配信関連でうめつくされていた。


「きょ、今日はこれでおしまい。また明日ね?」

「じゃあねー、みんな」









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