第8話

「母さん、お願い」

「いやーだー。無理ー。蒼ちゃんは私の蒼ちゃんなの!!他の女は声も聞いちゃだめだし、見ちゃ嫌なの!」

「お願い、母さん」


 このやり取りを続けること三十分くらいたってる。


「何したら、やらせてくれる?」

「..............キス」

「え、き、きす?」

「うん、ちゅー、して?」


 キス、キスかぁ。


 ..............家族だし、ノーカウントだよね。


 僕は、そっと母さんの唇にキスをした。


 ほんの数秒の事だったけれど、母さんの唇は瑞々してくてすごく..............ドキドキした。


「そ、蒼ちゃん。ほ、ほんとにしてくれるなんて。わ、私、蒼ちゃんのいうことならなんでも聞くー。しゅきー」

「ずるい、ずるい、ずるい、ずるい!!!お母さんだけ、チューしてもらってずるいよ。私にもして?」


 そういって、目を閉じて唇を差し出してくる梨美。


「わ、分かった」


 僕は、またそっとキスをした。


 すると、頬を真っ赤に染めてふらふらとのぼせたような反応をする。


「お、お兄ちゃん。だいしゅき。しゅき。キスしてくれたんだもんね。家族だけの特権だもん。馬鹿な女どもじゃ絶対に無理だもん。画面にキスでもしてればいいんだもーん。私は、お兄ちゃんとキスしたしー」


 とふらふらとしたおぼつきで自分の部屋に戻っていく梨美。


 大丈夫かな。


「蒼ちゃん、配信してもいいけれどマスクはしてね。顔全体は映しちゃダメだよ」

「分かった、ありがとね。母さん」

「蒼ちゃんのいうことなら何でも聞いちゃう。だいしゅき」


 ぎゅーっと抱きしめてくるから、僕も抱きしめ返すと嬉しそうに笑う。


「蒼ちゃんは、本当に格好いいし、可愛いし全人類の誇りだよ。神様に感謝しなきゃ。こんな可愛い子を産ませてくれたんだもん。女性に優しいし。ずっとこのままでいてね」

「うん。僕はもう二度と母さんたちを傷つけたりしないよ。大好きだから」

「蒼ちゃーん!!」


 と余程嬉しかったのかさらに抱きしめる力が強くなりがっしりホールドされる。


 母さんをあやすこと数分。


 やっと解放してくれたので配信の準備を進め、椅子に座る。


「さて、始めますか」


 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る