拓実という人

 ここで冷え切った雰囲気の二人を差し置いて拓実という人間の話をしよう。

 拓実…本名を大寺拓実は、簡単に言えばロマンチストである。何故かと言えばその理由を説明するのは簡単で、色んな物事を運命と結びつけるからだ。大きい物事ならまだしも、彼は大小様々な物事に運命を結びつける。

 例えば、虫の知らせなどは、全国でも知られているだろう。拓実も虫の知らせは知っている。ただ、彼の場合は道端に綺麗な石が転がっているのを見つけたら、何か自分に関することで運命で決めれたことが起きる。と、思い込む。

 他にも、好きな人の誕生日の月日と同じ数字を街中で、初めて見つけると、彼はその人と上手くいっていると感じるのだ。

 他にも、彼についてのロマンチストに関する話は、いろいろとあるがとても、話し切れない。

 彼の考え方は決して悪いわけではないし、とても前向きに物事を捉えているので、むしろとても良いと思われるが、時には節度というものも大切であるのだ。

 次に彼の生い立ちについてだが、これはもう悲しい生い立ちだ。生まれてすぐに片親になってしまって、親戚の家に預けられる。もともと、内気で話すこともできない彼は友達は作れなかった。

 小学校に入る頃にやっと話すようになったものの、どこか人を信じていないような冷たい雰囲気はあった。そのせいで彼は、小学生の頃にはいじめなどに遭った。仲間はずれや物を盗られるのにはこの頃から慣れ始めてしまった。彼の周りも小学生であり、次第にいじめに対して、うんともすんとも言わなくなる彼に対して、暴力を振るうが、彼はそれでもなんとも思わなかった。

 家に帰っても彼は親戚と口を聞くことはなく、いじめに関しての問題も特に言うこともなかった。小学生の頃はそんな生き方をしてきた。

 中学校に入る頃から、彼は明るく振る舞って過ごすようになった。そのうちに今の彼につながる性格が形成されたのだろう。

 しかし、彼が何故こんなにもロマンチックな人間なのかと聞かれたら、外郎売(ういろううり)でも話すのに言葉を詰まらすだろう。

 謎であるのだ。

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