第9話 大山祇と素戔嗚尊(^^)ノ

伊勢原から私達は、一路静岡の三島市に向かう。


向かう先は三嶋大社。


ここも大山祇神(おおやまづみ)と深い関係があると言う。


車中では、夫は漢(あや)氏と言う、渡来民の話しをしていた。


秦氏が聖徳太子のサポーターなら、漢(あや)氏は百済経由で渡来した先進文化や、技術を招来した小部族を蘇我氏の元で連合させた組織であると言う。


そこまで聞いて、この人は、筋金入りの古代史オタクなんだと改めて思った。


その後も夫は、何か熱心に話していた。


確か、道教は、多神教ではあるものの最高位の神を天とし、その意思にかなった者が天子であり、中国全土を統治するにふさわしい徳を備えた人物が皇帝であるとされている。


この、天と人の絶対的な主従関係は、まさにユダヤ教の唯一神ヤハウェとイスラエル人の関係そのもの、そんな話しをしていたと思う。


そうこうしている内に三嶋大社に到着した。


三嶋大社の祭神は、大山祇神(おおやまづみ)と事代主命であると言うが、事代主命が祭神になったのは、江戸時代後期の国学者である平田篤胤(ひらたあつたね)の主張によるもので、割と最近の話しらしい。


それ以前までは、大山祇神(おおやまつみ)が主祭神であったようだ。


そもそも、徐福が大山祇神(おおやまつみ)であれば、三島って徐福が目指した、蓬莱(ほうらい)、方丈(ほうじょう)、瀛州(えいしゅう)の東海に島に浮かぶと言う三神山の事だったのかもね。


参拝を終えた夫が、そう言って来た。


私は、大山祇神(おおやまづみ)は大綿津見神(おおわだつみ)と一緒に考えるようにと、叔父さんに言われていた事を思い返し、大山祇神(おおやまづみ)って海の神様なのかと、夫に聞いた。


夫は、いや、大山祇神(おおやまづみ)は山の神だよ。


でも、別名に、和多志大神(わたしのおおかみ)があるから、海の神でもあるんじゃないかな、と言った。


私は、夫に、日本神話で、海の支配権を持っていたのは誰なのかと聞いた。


夫は、元々は、素戔嗚尊(すさのお)が持っていたんじゃないかな。


ただ、素戔嗚尊は、父親の伊邪那岐命(いざなぎ)に海を支配するように言われても、母親の伊邪那美(いざなみ)のいる根の国に行きたいと泣き叫んで災いを起こすので、ついには、伊邪那岐命(いざなぎ)に勘当されて、姉のいる高天原(たかまがはら)に行ってしまうんだけどね、と言った。


ああ、確か、そんな話しだったな。


その後、素戔嗚尊(すさのお)は、姉の天照大神(あまてらす)がいる高天原でも悪さをして、ついには高天原も追放されてしまい、最終的に、出雲にやって来るって話だ。


日本神話の記述だと、日本の最初の王は素戔嗚尊となっている。


徐福は、秦の国からやって来た、斎の国の人物だ。


徐福は紀元前の人物だ。


仮に徐福が日本列島に辿り着いていたとしたなら、まだ日本には、国家と言う概念そのものが無かったのではないだろうか。


もしも、徐福が国家と言う概念を日本列島に持ち込んだ最初の人物であるなら、徐福が日本の最初の王になるだろう。


体系化された宗教観、五穀の種、様々な先進的な技術を身につけた工匠を伴って現れた道教の方士徐福なら、それが可能だったかも知れない。


実は、素戔嗚尊(すさのお)の正体は徐福だと言う事はないだろうか。


大山祇神(おおやまづみ)も、皇室の先祖神であるらしい。


しかも、大山祇神(おおやまづみ)は、外国から海を渡ってやって来た渡来神だと言う。


なのに日本の国津神として祀られてるのは何故なんだろう。


私は、素戔嗚尊(すさのお)と大山祇神(おおやまづみ)って、実は同じ神様って言う可能性はないのかと夫に尋ねてみた。


夫は、富士山が高天原(たかまがはら)だと考えてみれば、そうなのかもね、と答えた。


素戔嗚尊(すさのお)は、高天原(たかまがはら)にやって来た後、息子の五十猛神(いそたける)と共に、朝鮮半島の新羅の曽尸茂梨(そしもり)と言う場所に降り立ったとされているから。


この曽尸茂梨(そしもり)の地名は、牛の首とか牛の頭って言う意味らしく、その所為で素戔嗚尊(すさのお)は、牛頭天王(ごずてんのう)と言う行疫神の化身とされたんだ。


しかし、素戔嗚尊(すさのお)は、この曽尸茂梨(そしもり)には長く留まらないで埴土で船を作り、これに乗って東に渡り出雲国へとやって来た。


夫は、スマホを手慣れた感じでいじりながら、徐福は、第一回目の紀元前219年の出航では、河北省秦皇島市(かほくしょうしんこうとうし)から出港し、第二回目の紀元前210年の出航では、浙江省寧波市慈渓市(せっこうしょうねいはしじけいし)から出港したと言う説が有力視されてるみたいだね。


地図で見ると、どちらも良い感じに朝鮮半島に近いね。


徐福も一度、秦に帰国して再度、東方の三神山を目指しているから、その際に朝鮮半島に立ち寄ったのかもね。


もしこれが事実なら、大山祇神(おおやまづみ)が、朝鮮半島から渡って来た渡来神である事の説明になるんじゃないかな。


確か、朝鮮半島にも徐福伝説があったと思うよ。


素戔嗚尊(すさのお)と大山祇神(おおやまづみ)。


私は、互いに違う集団が同じ神を祀った場合、こう言う事も起こり得るのかなと思った。


私たちは、三嶋大社を後にして、駿河にあるスパホテルへと向かった。


車中では、夫が美保の松原で小さい頃迷子になった話しをしていた。


スパホテルは温泉が付いており、中には焼肉屋や中華料理屋、居酒屋などが入っていた。


居酒屋で電気ブランを二杯飲んだ辺りからテンションが上がってしまい、その後は夫と二人でカラオケに行った。


カラオケボックスまであるのだ。


私は、ここは楽園、エデンの園だと思った。

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