第42話


 早速その日家に帰った後、出掛けてくると言い残してミキが住んでいるアパートに向かった。外は既に暗い。


 駐車場にある車の影に隠れながら電気のついている部屋を見ていた。こんな所誰かに見られたら通報されてもおかしくない。しかし、時間が時間なだけに通行人も少ないし車と車の間にしゃがんでいる為、気付かれないと思う。


 といってもただ監視するだけでミキが出掛けない限り俺は暇だ。コーヒーとパンでも買ってくればよかったと思った。


 結局その日は俺の帰る時間ギリギリまでその場にいたが、誰も出掛けることはなかった。


 俺は帰ると急いでご飯と風呂を済ませ机に向かった。宿題は今の俺にとっては簡単なのですぐに終わる。


 ベットに転び天井を見つめながら考えた。とりあえず今の俺に出来る事はこれしかないと。


 翌朝いつもより早めに家を出た俺が向かったのはもちろんミキのアパートだ。しかし、昨夜とは打って変わって早朝の時間帯は通勤する人が忙しなく俺の横を通り過ぎて行く。流石に昨日みたいに駐車場の車の影から監視出来るわけもなく仕方なく道路の電柱にもたれかかり怪しまれないようにスマホを見て誰かを待っている雰囲気を醸し出しながらミキが出てくるのを待った。


 そして待つ事数分。俺は思わぬ物を見てしまった。


 それはミキの自宅玄関から女の子が出て来たのだ。怪しまれないようにと駐車場とは反対側の玄関がある道路沿いにいたお陰で思わぬ収穫を手にした俺はその女の子の特徴を忘れないように急いでメモした。


 年齢は俺と同年代くらいで、高校の制服を着ている。見た目は典型的なギャル。顔は遠目でもわかる程メイクが濃い。俺の苦手なタイプだ。


 まさか、ミキの彼女ではないだろうな。そう思ったがミキはギャルとは無縁だろう。となると、一体女の子の正体は誰だ?朝普通にミキの家から出てくると言う事は夜もいたと言う事になる。俺は気になって仕方なかったが、ミキに言えるはずもない。まさか監視してて見かけたなんて口が裂けても言えない。


 女の子は恐らく登校したのだろう。そそくさと歩いて何処かへ行ってしまった。


 早る気持ちを抑えながらミキが出てくるのを待った。


 女の子が出てからものの二、三分の間にミキも出てきた。


 見る感じいつもと変わらない。


 アパートの鉄製の階段をガタンガタン音を立てながら降りた後駐車場の方に回って消えた。


 俺は急いでミキの後を付けた。と言っても尾行なんて素人の俺がミキにバレる事なく学校まで行くのには無理がある。そこである程度進んだ所で俺はミキに声をかけた。


「ミキー!」


「おはよ、ゆうやは?」


「今日はちょっと」


「ふーん」


「な、なんだよ」


 俺は内心焦っていた。自分が人に言えないような事をしていると他人の何気ない言動でも見透かされているように感じるのだ。


「あー、学校だりーなー」


「ミキがそんな事言うなんて珍しいな」


「俺だってめんどい時ぐらいあるし」


「俺はてっきり優等生だと思ってた」


「ふっ、なにが優等生だよ」


 俺にはミキがほくそ笑んだように見えたが、特に気に留める事もなく俺たちは学校に向かった。


 

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