第41話
雲一つない空にそよそよと心地よい風が吹いている。
俺とミキは土手に並んで座った。
「このまま時間が止まればいいのに‥‥」
心の声がついポロッと出てしまった俺は誤魔化すように続けた。
「あ!そういえばミキは好きな人とかいるの?」
「なんだよ急に、そんなもんいるわけないだろ」
「俺ミキが女子と喋ってるの見たことないかも」
「は?俺だってりょうやが女子と喋ってるの見た事ないけどー」
「俺らってバスケバカだもんな!」
「バカはりょうやとゆうやだけだろ!」
「何自分だけ頭いいみたいな言い方なんだよ!」
「ハハッ!そうやってムキになるとこがガキだよな〜」
そうだ、俺はいつの間にか時代を戻っていくうちに精神年齢が段々低くなっている事に気が付いた。低くなっているというよりその時代に適応した対応が出来る様になっていた。
「あ〜なんかわりぃな」
「何が?」
「今日の事だよ」
「あぁ、たまにはいいんじゃね?なんかこうやって何も考えずにぼーっとする時間も必要なんだなって思ったし」
俺は恐る恐る聞いた。
「やっぱ家‥‥大変?」
「うん‥‥。まぁ」
「ミキさ、受験どうすんの?」
「俺は行かない。多分働くかな」
「俺ら三人で同じ高校行こうぜ?」
「行こうぜって言われても‥‥」
川を真っ直ぐ見つめていたミキは顔を少し下に向けた。
「そしたらまたずっと一緒にバスケ出来るじゃん、絶対楽しいよ!」
俺は少しでもミキに先には楽しい事が待ってるって思って欲しくて訴えた。
「まぁ‥‥考えとくわ!そろそろ戻ろうぜ!今からでも学校行った方がいいし!」
「でも電話しちゃってんじゃん」
「大丈夫!大丈夫!一緒に怒られれば怖くないっしょ!」
そう言って怖いほどの満面の笑みで俺に笑いかけるミキはどこか吹っ切れたようにも見えた。
「お、おぅ」
俺はそう言うしかなかった。それと同時に妙な不安が押し寄せた。
その後俺たちは学校に行き、こっぴどく怒られた。幸い初犯だった事、正直に言って学校に来た事で親には言わないでおいてくれた先生には感謝だ。ミキもほらなって顔でドヤってた。
ゆうやは仲間はずれにされた事をずっとぐちぐち言ってなかなか許してくれなかった。正直面倒くさかった。ゆうやに構っている暇があるならミキに構っていたいから。
ふてぶてしいゆうやをよそに俺とミキは先生の意外な優しさについて盛り上がっていた。本当に何気なくて楽しい時間だった。こんなにも一つの事に対して盛り上がれるのは若いからだろう。忘れかけていた真っ直ぐな心もミキといれば18の俺もあんなにひねくれていなかっただろうか。
それなのに‥‥。俺たちは小さい頃からずっと一緒だったのに‥‥。ミキは自分の事をあまり教えてくれない、それどころか相談や暗い姿も見たことない。
そして俺はこの日からある事を決めた。
ミキの監視だ。ミキの事を知る為にはそれしか方法がなかった。
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