第35話
ピピピピ‥‥ピピピピ‥‥。
俺はまだミキに土手で会った時の事を思い出していた。どう考えてもあれは俺だったしあの少年はミキだった。もう訳分からない‥‥。まぁいい、最悪ミキに聞いてみるか。
てか今は中一か‥‥懐かしい制服だなぁ。俺は懐かしさと共に当時の記憶が近づいているのが少し怖くもあった。
さっさと用意をして階段を駆け降りた。
「おはよう」
「おう、今日はやけに早いな」
リビングでは父がいつものように朝のニュースを見ながら朝食を食べていた。
「うん、なんか目が覚めちゃって」
「最近部活はどうだ?」
「部活?あぁ、頑張ってるよ」
「そうか」
「‥‥とうさんも仕事頑張って」
「言われなくても頑張ってるよ」
そう言いながらコーヒーを飲む父は少し頬が緩んでいたような気がした。
「あなた、そろそろ出なくていいの?」
母が鞄を持って準備している。
「あぁ、今日は少し時間をずらして出るかな」
「そう」
母は不思議そうに鞄を玄関に一旦置き、洗濯物を干していた。
そして、俺が出る時間になり立ち上がると父も同時に立ち上がり玄関に向かった。
「じゃあいってくる!」
俺が母にそう言うと父も続けて言った。
どうやら父は俺と一緒に家を出ようとしていたようだった。
外に出ると既にゆうやとミキが待っていて、二人が父に挨拶をすると笑顔で気を付けて行けよと言って会社に向かった。
「お前のとうさん久しぶりに会ったわ」
ゆうやが少し驚いたように言った。それもそのはず、父は朝は早いし夜は遅いしで俺でさえあまりゆっくり話をする時がないのだから。
「早く学校行こうぜ」
広げるほどの話でもない為俺は学校に急ぎたかった。そして、ミキと二人になるタイミングを作らないとと考えていた。俺たちはほとんどの時間を一緒に過ごしていた。
この時俺とゆうやは同じクラスでミキだけ違うクラスだったが、休み時間はミキが俺たちのクラスに来ていた。
放課後になり部活に向かう俺とゆうや。
そして、ミキ。
俺はてっきりミキはサッカー部に入るとばかり思っていたからバスケ部に入ると聞いた時は少し驚いたけど、本当はミニバスも一緒にしたかったんだろうなと悲しくもあった。
俺たちは三人で部活に励んだ。一緒に汗を流して先輩や先生に怒られながらも楽しかった。
帰り道俺は思い切って言った。
「わりい、ゆうや先に帰っててくれない?ミキにちょっと話があってさ」
「俺の悪口でも言うんじゃねーよな?」
ゆうやは目を細めてこちらを半笑いで睨んできた。
「悪口なら直接言うし!」
「ハハッ!だよな!まぁごゆっくり〜!」
「さんきゅ」
そして、ゆうやは俺たちの先を早歩きで帰って行った。
「話って?」
ミキが不思議そうに俺の顔を覗いた。
「あのさ、気になってることがあるんだけど」
「うん」
「小六の時さ、土手で高校生と話してたの覚えてる?」
「誰が?」
「ミキが」
「そんな事あったっけ?」
ミキはキョトンとした顔で俺を見ていた。
「覚えてないの?」
「全然!」
「そっか‥‥」
「それが話?」
「うん。でも覚えてないならいいよ」
「なんだよー気になるなぁ」
「気にしなくていいよ!帰ろうぜ」
ミキは覚えてないようだった。とぼけているようにも見えないしそれ以上は聞けれなかった。
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