第33話
俺たちはミニバスの体験をしてとても楽しかった。ゆうやもミキも是非入会したいと言っていた。しかし、帰るのがとても遅くなった為、ミキは少し焦っていた。
「遅くなったけど大丈夫か?」
ゆうやの父親が運転しながらミラーでこちらを見て言った。
「俺んちは大丈夫です」
「大丈夫です‥‥」
ミキは不安そうに言った。
俺たちはお礼を言ってゆうやの家の前で解散した。
走って帰るミキの後ろ姿を見送って俺も家に帰った。そして、母にミニバスをしたいとお願いすると、快く賛成してくれた。頑張りなさいよと言って心なしか嬉しそうにも見えた。
翌朝、父にも昨日の事を報告すると母と同じ反応だった。
その後ゆうやとミキと家の前で合流して学校に向かう途中の事だった。
「あのさ‥‥」
ミキが少し言いにくそうに切り出した。
「どうしたの?」
俺が聞くと、
「ミニバスは出来ない」
「えっ?なんで?したいって言ってたじゃん」
ゆうやは残念そうに言った。しかし、俺はこの時の事をなんとなく覚えていた。
「だって色々お金かかるじゃん‥‥」
「お金かかるって言っても大した額じゃないよ!」
「だから‥‥するなって言われた」
「誰に?」
「親に」
それを聞いたゆうやはそれ以上何も言えなくなった。
その場には気まずい空気が流れた。この時一瞬俺もミニバスするのやめるかとも思ったがその決断が未来にどんな変化をもたらすのか不安が大きかった。かといって俺が今しようとしている事の方が未来には影響大なんだけど‥‥。
一先ず流れに任せる事にした。
その後俺とゆうやはミニバスに励んでいた為ミキと放課後遊ぶ時間がなくなっていた。
そんなある日、練習場所が一時的に使えない時があり、久しぶりにミキと遊ぶ事になった。
久しぶりに三人で河川敷でサッカーをしていると、土手に高校生らしき人が居てこちらを見ている。
そして、何故かミキはその人目がけて走って行った。最初知り合いかと思ったが、俺はある事に気付いてしまった。
その高校生は俺だ。
その瞬間その時の事が頭の中を駆け巡った。あの時話しかけてきた少年、それは小学六年の時ミキだったと。
全身に鳥肌が立つのと同時に俺は震えた。
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