第31話
振り返ると、そこにはミキがいた。
「ミキ‥‥なんで?」
「さ、さっきは寝ててさ、ごめん」
「いや、いいけど」
俺はミキを見て驚いた。
何故なら腕にはギプスをはめていたから。
「あ、これ階段から落ちてさ。やばいよね俺」
「大丈夫‥‥?」
「うん、全然平気!」
そうは言ってもミキの表情はどこか悲しげで何か言いたそうだった。
「あのさ!何かあった?」
「何もないよ‥‥」
「俺に何か隠してない?こんなに頻繁に休むのだっておかしいよ」
「おかしいって言われても仕方ないじゃん‥‥」
ミキは少し声を荒げた。
「俺に出来ることならするからさ、何でも言ってよ」
「りょうやに出来る事なんてないよ‥‥」
俯くミキを見て俺は確信した。
「どうゆう事?」
「とにかく!俺は大丈夫だから、もう来なくていいから」
「そんな事言うなって」
「治ったら学校行くからさ、そしたらまた遊ぼーぜ」
「それはいいけど」
「あ、俺帰らないとかあさん帰ってきちゃう」
「う、うん」
「じゃあな!」
そう言って去ったミキの笑顔は引き攣っていた。
俺に出来る事はない‥‥。それって逆を返せばSOSとも取れるよな。
階段から落ちたって言うのも怪しくなってきたな。本来の俺なら幼稚過ぎて気付かないだろうが今の俺はそこそこ賢い18歳だ。
表情や状況からしておかしいのは明確だ。
しかし、現在の小六の体では張り込む事も夜出掛ける事も難しい。ミキの口から直接聞くしか方法はないのだ。
俺はどうにか出来ない物かと考えていた。
ミキはその後も普通に学校に来ていたし中学も普通に通った。不登校になったり特に問題を起こすような事はなかったと思う。
その事を考慮すると大した問題でもないのか?そうも思った。
しかし、あの日は突然来た。俺には理由が見つからないが、ミキが俺の気付かないうちにSOSを出してたのだとすると見逃すわけにはいかない。
もどかしくて仕方ないが、一先ず家に帰らないとすでに外は真っ暗だ。
「ただいま」
「あんた!こんな時間までどこいたの!」
俺が玄関を入ると母がすぐ飛んできて怒っている。
「ごめん」
俺は靴を脱ぎながら謝った。
「いい加減にしなさいよ!ランドセルもないし帰った形跡もないから何かあったかと心配したじゃない!」
「ごめんって」
「学校に電話したらとっくに帰ったって言うし、どこ行ってたの!」
「ミキの家に行ってた。あいつ休みだったから連絡物渡しに」
「それがなんでこんなに遅いの!」
「話してたら遅くなったの!ごめんって!」
「あんた親の気持ちも少しは考えなさいよ!」
ミキの事で苛立っていた俺はつい言ってしまった。
「分かってるって!もう‥‥うるさい!!」
ペシンッ!
「っった‥‥」
「かあさんが心配性なの知ってるでしょ‥‥」
母は俺にビンタをした。そして悲しそうな表情で部屋に入っていった。
今までぶたれた事はなかった。
確実に今の俺は前の俺とは違う行動を取っている。急に将来が心配になりだした。
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