第29話
ピヨピヨピヨ‥‥ピヨピヨピヨ‥‥‥。
うーん、朝かぁ‥‥。
こうして目覚めるのにも慣れてきた。
今は小六、体も心なしか前回よりがっしりしている気がする。
「おはよー」
着替えを済ませ、俺がリビングに降りると父はいつものようにニュースを見ながら朝食を食べていた。そして俺と目を合わす事なく返事をする。
「おー」
おーって、普通おはようだろうと思いながらも世の父親達はみんなこうなのかと今更ながら考えた。が、あの日の背中がまだ目に焼き付いている。忘れようとしてもあんな姿を見てしまうとどうしても脳裏をチラついてしまう。
俺は顔を洗い食卓に、父の前に座った。
「いつも仕事お疲れ様」
何気なく言った言葉。
「さんきゅー」
父はまた目も合わせず返事をした。
せっかく言ってあげたのにと、何故か無性に腹が立った。俺が自己中で傲慢なのか、父が照れ隠しで平然を装っているのかは分からない。ただ、俺は父の気持ちに気付いてると言う事を示したかったのかもしれない。
「たまにはいい事言うのね」
キッチンで洗い物をしていた母がニコッと笑顔を俺に向けた。
「別に」
俺は特に返す言葉もなかった。
家族って案外難しいのかも。当時の俺なら気が付かなかったが、今の俺は中身が18歳で、小学生に比べれば大人みたいなものだ。
見える景色は同じでも見るポイントは違う。
母は片付けがひと段落してコーヒー片手に父の横に座った。
二人でニュースに見入っている。
しばらくして父が徐に立ち上がり、上着を羽織ると、母がカバンを持って玄関に向かった。
こうして毎日見送りをしているのだ。
行ってきますのキス?はしているところを見た事ないから多分していない。俺の見ていないところでしているのかもしれないが、それならその方向性でお願いしたい。
「あんたも早く用意しないと、とうさん出ちゃったわよ」
呑気に観察していたせいで家を出る時間が遅くなった俺は急いで家を飛び出した。
「りょうやおせーぞ」
家の外にはゆうやが待っていた。
「わりー!」
しかし、ミキの姿が見当たらない。
「あれ?ミキは?」
「あーなんか今日こねーな」
「休みかな?」
「そうなんじゃね?それより早く行こーぜ」
「お、おう」
遅刻気味だった俺たちは早歩きで学校に向かった。
結局その日ミキは風邪で休みだった。
「それにしても最近ミキ休み過ぎじゃね?」
そういえばそんな時期もあったか。
「ゆうやはなんでミキが休んでんのか知ってる?」
「なんでって風邪だろ?」
「そっか」
「なんだよ、その意味ありげな言い方は」
「いや、なんとなく、本当に風邪なのかなって」
俺には気になる事があった。
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