第27話
人の気配で目が覚めた。
父親がご飯を食べているようだ。
リビングの電気は消されており、キッチンの小さな明かりだけがついたダイニングで一人で食べている背中が見える。
こんな遅くに帰って一人でいつも食べてたんだと思うと、起き上がってお疲れ様の一言でも言いたくなった俺は徐に上体を起こすとソファに座った。
しかし父はこちらに気付いておらずそのまま黙々と食事を続けていた。
「‥‥おつ‥‥」
俺が驚かさないようにそっと言葉を発しようとしたその時、父の肩が震えている事に気が付いた。
泣いてる‥‥?
暗くてよく見えないがご飯を食べながらも、鼻水を啜る音が聞こえる。
そんな父の姿を見た俺は胸が締め付けられる思いだった。
なんで泣いてるのかは分からない。でも直感的に寂しいんだと思った。毎晩遅くに帰ってきて暗い部屋で一人ご飯を食べる。
今日はたまたま俺がリビングで寝ていたから電気をつけなかったのか、それとも家族を起こさないように毎回こんな暗い部屋で食べていたのか。
俺はそのままもう一度寝転んで目を瞑った。今見た事は忘れよう。父の威厳の為にも。
俺は気付けば朝までソファで寝ていた。
母親は途中で起こしてくれるわけでもなく、布団をかけてくれるわけでもなかった。
そのせいか、起きた時にはバキバキだった体がさらに痛んだ。おまけに体が冷えて風邪でも引いたのか少し熱っぽい。
「かあさん、俺風邪」
俺がそう言うと母はおでこを触った。
「あら、本当。少し熱いわね」
「学校休み?」
「そうね、今日は寝ときなさい。ちゃんと部屋でね!」
「わかったぁ」
ふらふらしながら部屋に向い、ベットに倒れ込むようにして転んだ。
そして、再び目を瞑った。
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