第24話


 ピヨピヨピヨ‥‥ピヨピヨピヨ‥‥‥。


 懐かしい目覚ましの音。


 目を覚ました俺はまず一番に鏡を見ようと階段を駆け下り洗面所に向かった。


 俺若っ!!


 鏡に映った自分はまだあどけなさが残る少年になっていた。


 五年前だから今は小五か‥‥ふっなんかうける。


「何ニヤニヤしてんだ?」


「とうさん‥‥」


 そうか、この頃はまだとうさんと暮らしてたんだ。


 リビングでテレビを見ながら朝食を取っていたのは俺の父親。俺が高一になると同時に離婚をして家を出て行った。


「どうした?そんな驚いた顔して」


「ううん、おはよ!」


「おう、早く飯食えよ」


 俺は久しぶりの父に少し緊張していた。何年振りだろう。母には言ってなかったが正直会いたいって気持ちがあったのだ。こんな形で再会出来るとは思ってなかったけど。


 今思い返してもどうして離婚したのか分からない。夫婦仲は良く見えたし、父は息子の俺から見ても家族思いのいい父親だった。


「今日学校休もっかなー」


「何言ってんだよ、ちゃんと行けよ」


「遊びに連れてってよ」


「バカ言うな、仕事だよ仕事」


「えー、いいじゃん」


「また今度な!」


 また今度か‥‥次はいつ会えるか分からないのに。俺は少し残念だった。


 渋々学校の用意を済ませ、家を出る。


「おっはよー」


 玄関を出るとゆうやが家の前で待っていた。


「お、おう、おはよ」


 ゆうや変わってねー!でも幼いなぁ、やっぱうける。俺がクスッとしていたその時。


「おー!りょうやおはよー!」


 ゆうやの後からひょこっと顔を出したそいつを見た瞬間俺は頭に雷が落ちてきたかのような衝撃が走った。


「ミキ‥‥」


「なに?りょうや変な顔してんぞ?」


 そこにはミキの姿があった。


「こいつ昨日いやらしい本見すぎて夜眠れなかったらしいよー!」


 ゆうやがいつもの調子でミキに話かけていた。それに対してミキも同じく俺をからかってくる。


「マジ?どんな本?俺にも見せろよ!‥‥って何で泣いてんの?」


「えっ‥‥」


 気付けば俺の目からは涙が溢れていた。

 やっと目標が達成出来るんだ、いや、正確には数年先に起こる事だ。でもこれは大きな一歩、まずミキに会えた事が俺はとても嬉しかった。


「俺何も言ってねーからなー!」


 ゆうやは自分がからかった事によって俺が泣いていると勘違いしたのか先に走って行ってしまった。なんてやつだ。


「りょうや大丈夫?」


 ミキは不安そうな表情で俺を見つめる。


「うん、大丈夫、あくびが出ただけ!」


「なーんだ!ゆうやのやつバッカみてー」


「ハハッ!マジそれな!」


「それより早く行こうぜ、遅刻する!」


「うん!」


 俺とミキは懐かしい小学校への道のりを二人で並んで歩く。


 身長もまだ低く周りの景色も違って見えた。そして、一歩が短い。俺は再会出来た嬉しさからかいつもより饒舌になっていたと思う。


 くだらない、しょうもない会話。


 でも今の俺にとってはそんな些細な会話でさえ大事な時間に感じた。それも、この先ミキがいなくなると分かっているからだろう。


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