第22話
昼食どき、俺はゆうやと食堂にいた。
「西野さんいるかなー」
トレーを持って座る席を探しながら辺りを見渡すゆうや。
「やめろってほんと‥‥」
俺は呆れながらも、愛はお弁当派だからいるはずないとたかを括っていた。
するとどこからともなく聞こえてきたのは愛の笑い声だった。
しまった!今日は弁当じゃないのか!
俺はなるべく愛から離れた席に座る為にゆうやを誘導した。
「あっこ空いてるし行こうぜ」
「えー!でも西野さんがぁ〜」
「西野って愛の事?」
愛の前に座っていた友達がゆうやに気づき言ってきた。
「そうそう!西野愛!」
「私に何か用?」
そう言いながら俺とゆうやの方を振り向く愛。
「愛‥‥」
「私の事知ってるの?」
不思議そうに俺を見つめる愛。
「えっ、あ、いや‥‥」
俺が何て言おうかしどろもどろになっているとゆうやがすかさずツッコんだ。
「は?お前知り合いだったんじゃなかったのかよ!」
「私知らないけど」
はぁ、変な空気になっちまったじゃんかよ。
「行こ‥‥」
言う言葉も出ず、俺は不満そうなゆうやを連れてその場を離れた。
きっとこれで愛への第一印象は最悪なものになったに違いない。一年後付き合えるかどうかも分からなくなったな。
「おい」
俺が分かりやすく落ち込みながら箸を進めているとゆうやが小声で囁いてきた。
「西野さん、めっちゃ可愛いじゃん!俺びっくりしたよ」
「そうだよな、可愛いよな」
「そうか、そうか、お前は陰ながら西野さんに想いを寄せてたんだな」
ゆうやがからかうように泣きまねをしながら俺の肩をぽんぽん叩いてきた。
もう面倒臭いからそうゆう事にしておこうと思った。
「そうだよ、だから探してほしくなかったんだよ」
「わりーわりー!その代わり俺が恋のキューピットになってやるから許してくれよな!」
「いいから放っておいてくれ!」
「なんだよ急に、そんな本気にならなくったっていいだろ」
「しつこいんだよ」
「そのくらいで怒んなよ、どうせお前に西野さんは釣り合わねーよ」
「俺戻るわ」
ゆうやの無神経さに苛つき始めていた俺はまだ食べ終わってない食事をカウンターに雑に置くと一人で教室に戻った。
正直ガキっぽいかなとは思ったが、ゆうやのあの態度を見ていると、どんどんエスカレートしかねなかったからあくまで強く言ってしまった。後悔はしていない。
教室に入り不機嫌を装ったままゆうやが戻ってくるのを待つ。きつく言ったから流石のゆうやも謝ってくるだろう、そしたら許そう、そう思っていた。
しばらくして教室にはぽろぽろと人が戻ってきていたが、ゆうやの姿はない。
痺れを切らした俺は食堂に戻る事にした。
そこで見たのは愛と話をしているゆうやの姿だった。
「おい、何やってんだよ」
俺がゆうやにそう言うと自慢げにこう返してきた。
「俺西野さんと連絡先交換したからよ」
「は?なんでお前が?」
「お前が断ったんだろ、俺が恋のキューピットになってやるって言ったのに」
「そうだけど‥‥」
あぁ、面倒臭い。とてつもなく面倒臭い。
「あの」
俺たちの言い合いを聞いていた愛が口を開いた。
「私‥‥実は竹内くんの事前から好きだったの」
「「えっ?!!」」
俺とゆうやは声を揃えて驚いた。と同時に全身に見覚えのある感覚が走った。
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