第21話
ピピピピ‥‥‥ピピピピ‥‥‥。
暖かい日差し‥‥。
高校に入学したばかりの春か。
中三まで一年、後一年戻ればいいんだ。
そう思い覚悟を決めていたが、今回ので六時間終わってしまった。次からどうなるんだろう。
真新しい制服に袖を通すも、しっくりこない。まだ部活も本格的には始まってないから朝は割とゆっくりできるはず。
重い足取りで一階に降りる。
「おはよう、って、朝からなんだか暗いわね」
「おはよう」
「色々する事あって夜なべしてたんじゃないの?」
「‥‥うん、まぁ」
「今日から部活参加するんでしょ?しっかりしなさいね」
「わかってるよ」
今日の朝ごはんは甘い卵焼きに鮭、味噌汁だ。俺は甘い卵焼きにマヨネーズをたっぷりつけて食べる。
俺の疲れた脳に栄養が巡っている感覚だ。
朝食を完食すると、素早く準備を済ませ家を出る。
なんて清々しい朝なんだ‥‥、気分がリフレッシュされるような‥‥。
「おーい、何やってんの?」
「あぁ、おはよ」
俺はつい自分の世界に入ってゆうやが近くにいる事に気が付かなかった。
「変なやつ‥‥」
そう、俺は変なやつ。いや、おかしくなりかけていた。何の為にこんな摩訶不思議な事が起こっているのかも、いつの間にかあいつを救うという目標を作ったのかも分からない。
でも今は分からなくてもいい、目の前で起こっているすべての事に意味がきっとある、そう信じるしかないのだから。
「きょ、今日もいいお日柄で」
「気持ちわるっ」
ゆうやが引いている。いかんいかん普通にしないと俺の未来が変わってしまう。
「早く行こうぜ」
「なんだお前?多重人格?」
「ちげーよ、ちょっと寝ぼけてるだけ」
「なんだ‥‥」
ゆうやの不思議そうな視線を感じながらも二人で歩いて学校まで向かう。
通い慣れた道のはずだが、今こうしてゆうやと歩いている俺は初々しい高校一年生なんだもんな。
「そうだ、ゆうやさぁ、同じ学年の愛‥‥西野愛って知ってる?」
「西野愛?知らないけど、誰?」
「いや、知らないならいいや」
ゆうやが知らなくても無理はないか、愛とは違う中学だったし。
「なんだよ気になるじゃん」
「いや、なんでもないって!」
「学校行ったら探してみよっかなー」
「探さなくていいから!」
「絶対探す、決めた!」
何気なく聞いたつもりなのに変な誤解を生みそうだな‥‥。
ゆうやは学校に着くや否下駄箱の周りをうろうろし始めた。
「西野‥西野‥‥‥」
そうブツブツ呟きながら恐らく愛のクラスを調べようとしている。
「だから探さなくていいって!ほら行くぞ!」
俺はゆうやの腕を強引に引っ張って探すのを止めた。
「絶対何かある、彼女か?」
「ちげーよ」
「ふーん、まぁいずれ分かるか」
まぁ人数も多いしそう簡単には見つからないと思い、ゆうやが早く忘れる事を願った。
それに俺はあの森に戻るきっかけを考えてみる事にした。
最初は路地で突然、次に愛とキス、次が佐野に会った時、その次は分からない、その次も愛とキス‥‥、次も分からない。キスと関係ある?ないか‥‥、共通点がないんだよな。
俺はもう大学受験とかどうでもよくなっていた。最初こそやり直せてラッキーと思っていたが、今は使命感すら感じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます