第14話
近くとは言っていたが、隣の隣のお店だったとは。
中に入ると、そこは明るくてとても清潔感のあるお店だった。
「いらっしゃいませ」
店員さんは一人だけ。
「今クリスマス限定のメニューがあるんだよ」
愛は嬉しそうにメニューを眺めている。
「じゃあ俺はそのクリスマス限定のやつにしようかな」
「私も同じのにする!」
愛はそう言って俺の代わりに注文をしてくれた。
それにしてもここの店員さんはすごく可愛い‥‥。俺と同じくらいの歳か少し上くらいかなぁ。
「寒いからここで食べていこ?」
「う、うん。そうだね」
店内にはイートインスペースがあったので、俺と愛はそこで食べる事にした。
商品を受け取り、席に座る。
「わぁ、美味しそうだね!」
甘そう‥‥。そう思ったのが正直な感想だが、一口食べてみると思っていたよりも甘ったるさはなくスッキリとしたクリームで、チョコも美味しい。
「美味しいね」
「でしょ?私ここのクレープ好きなんだ」
「愛はよく来るの?」
「たまにね。試験終わりとか、今日は疲れたーって日に自分へのご褒美としてね」
「そうなんだ」
「それにね、実は私すごい秘密知ってるんだよ」
「秘密?」
「ここの店員さんと、さっき行ったカフェのオーナーさんって夫婦なんだよ」
「そうなの?てかなんでそんな事知ってるの?」
「カフェが出来た時、あの店員さんに宣伝されたから」
「宣伝?」
「うん。最近主人のお店が近くにオープンしたのでよかったら行ってみて下さいって」
そうか、結婚してるのか。って何少し残念がってるんだ俺。しかし、若いのに結婚もして夫婦でお店を持ってるってすごいな。
「なんか、すごいね」
「でしょ?私憧れるなぁ」
「どの部分が憧れるの?」
「美男美女の夫婦ってところかな!」
「愛はさ、結婚願望あるの?」
「そりゃあるよ。りょうやは?」
「俺はまだピンとこないかな」
「まぁ、まだ私たち学生だしね」
もぐもぐしながらも口についたクリームの存在を忘れていた俺はいつ言ってあげようかと悩んでいた。そして、考えているうちにクレープも食べ終わり、俺の分のゴミも一緒に捨てに行ってくれた愛は言った。
「そろそろ出る?」
「そうだね、次どこ行く?」
「外は寒いし室内がいいなぁ」
「室内かぁ。カラオケとか?」
「いいね!行こ行こ」
俺たちがクレープのお店を出ると、雪がちらほら降っていた。
「ホワイトクリスマスだ」
愛がそう言いながら手のひらを上に向けた。
「‥‥‥」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
カラオケに着くと、受付には数人並んでおり、部屋も満室だった。
俺と愛は予約だけ済まして隣にあるネットカフェで時間を潰す事にした。
俺は、愛が漫画を選びに行っている間にネットで少し調べ物をした。
「何調べてるの?」
愛が漫画を抱えて戻ってくると同時にページを閉じた。
「天気予報見てた」
「そうなの?雪積もりそう?」
「明日の朝には多分積もってると思うよ」
「本当?じゃあ雪だるま作れるね」
「一緒に作ろうよ」
「一緒にって今日お泊まりするの?」
少し焦った表情の愛に俺はハッとした。
「ごめん、冗談だよ」
つい、愛とそうゆう雰囲気になるものだと思っていたが、まだ俺たちはそこまで発展していない。
「ビックリした‥‥」
「で、何持ってきたの?」
「ん?これだよ」
愛は腕いっぱいに抱えていた漫画を机に置いた。
「スラムダンク?」
「りょうやも読むかなって思って」
「愛は好きなの?」
「読んだ事ないから、読んでみようと思って」
「そっか‥‥」
愛は一巻から十巻まで持ってきていた。一緒に読むって言っても一巻一冊しかない、そんな事を考えながら隣に座る愛の髪から漂うシャンプーの香りに俺の理性が崩れかけた。
「愛?」
「ん?」
俺はこっちを向いた愛にキスをした。
その瞬間、またあの感覚が全身を襲う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます