第13話


 愛の家から街まで歩くのだが、手を繋ぎたい俺は、ポッケに突っ込んでいた手をそっと抜き、あくまで自然に愛の手を握った。


「りょうやの手冷たいね」


 俺は愛の手の温もりを感じて、体の芯が熱くなりそうだった。しかし、愛にとってはまだ付き合って四ヶ月程しか経っていない。クリスマスだからと言ってあまり積極的にするのは得策ではないと考えた。


「愛の手はなんでこんな暖かいの?」


 当たり障りのない返答をした。


「それはね、これだよ」


 そう言うと反対の手に持っていたのはカイロだった。


「それ持ってたんだね」


「うん。手袋持ってなくて、今日いいのがあったら買おうかなって思ってる」


 そうだったのか。じゃあプレゼントは手袋にすればよかったと少し後悔していた。


「そうなんだ、気にいるのがあるといいね」


「うん、それよりお腹空かない?」


「空いたね、とりあえずお昼ご飯でも食べる?」


「うん、美味しいパスタのお店があるんだけど行ってみない?」


「いいよ!」


 手を繋いだまま、愛の言うパスタの美味しい店に向かった。でも正直女子が好きそうなお洒落なカフェみたいなのは少し苦手だ。


 しかし、そんな気持ちも隣を歩いている愛を見ればなかった事に出来る。不思議な力。

 

 寒い寒いと言いながらもようやくお店に着いた俺たちは出来るだけ奥の席に座った。


「入口の近くは寒いもんね」


 愛がくしゃっと笑った。


「‥‥可愛い」


「っ、もう!こんな所で恥ずかしいじゃん」


 小声で恥ずかしそうにしている愛を見ていると、俺の好奇心がくすぐられる。が、一旦それを頭から離しておいた。


「ごめん、ごめん」


「じゃありょうやは何頼む?」


「‥‥おすすめ、とかある?」


「うーん、そうだなぁ。やっぱりガッツリ系がいいと思うからこれなんかどう?」


 そう言って愛はメニュー表を指差した。


「牛肉のなんたらかんたら?美味しそうだね」


「ふふっ、じゃあ決まりね!私はパンチェッタときのこのクリームソースにしよっと」


 愛はちゃんと分かっていた、俺がガッツリ系が食べたい事を。


 注文を済ませると、パスタがくるまで色んな話をした。


 内容はあまりよく覚えていない。ずっと嬉しそうに話す愛を見ていたから。


 ほっぺが膨らむほど口に詰め込みながらリスのように食べる姿も可愛い。途中クリームソースが口の端に付いていたが、俺は教えなかった。


 俺が先に食べ終わり、少し経って愛も食べ終わったので、二人でお会計に向かった。もちろん支払いは俺がした。


「ありがとう」


 店を出ると愛がお礼を言ってきた。


「こっちこそ美味しいお店教えてくれてありがとう」


「じゃあデザートは私が買うね!」


「デザート?」


「この近くに美味しいクレープのお店があるんだけど行ってみない?」


「うん、いいよ!」


 そうは言いつつも俺は結構お腹が膨れていた。



 

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