第12話


 ショッピングモールまで歩きでは少々遠い為、自転車で行く事にした。


 ガチャンと自転車のロックを足で外すと、ひんやりとしたサドルに跨る。


 久しぶりの自転車に俺は、なんだかワクワクしていた。冷たい風さえ気持ちよく、生きているんだと実感出来た瞬間だった。


 普段通らない道を走り向かう。


 プレゼントは何にしようかと考えていると、あっという間に着いた。休日のショッピングモールは親子連れやカップルが多い。


 早速、雑貨屋に入ってみるもピンとくるものがなかった。マフラー?もう持ってるし、やっぱアクセサリー系がいいのかな。でも金属アレルギーとかだと困るし、聞いたらバレるし。


 色んな店をうろうろしていた時、たまたま通りかかった店のディスプレイに可愛いニット帽を見つけた。


 赤くてモコモコしているニット帽だ。俺は絶対愛に似合うと思い、それに決めた。


 会計を済ませ、ラッピングまでしてもらった袋を自転車のカゴに入れた。


 ショッピングモールを出る頃には外は真っ暗になっていた。そして、イルミネーションが輝いていた。


 クリスマスデートが楽しみだ。俺は心躍らせながら自転車を漕いだ。

 

 クリスマスまでの数日間、愛にはプレゼントを用意している事を黙っていた。もちろん愛も用意はしているが俺に黙っているのだろうと勝手に思っていた。


 どんなデートをしたかなんて覚えてはいないが、楽しかったに違いない。


 当日、俺は目覚ましなしで起きた。


 十二時に俺が愛の家に迎えに行く事になっているが今は七時、部活が休みの間に体が怠けてしまわないように少し走る事にした俺はジャージに着替えて家を出る。


 近所の河川敷を通り、ぐるっと回って帰る。


 いい感じに体も温まり、家まであと少しの所でゆうやを見かけた。ゆうやもジャージを着ていたので、あいつも走りに行ってたんだと思った。


 しかし、近づくにつれて様子がおかしい事に気が付いた。


「何やってんの?」


 俺が話しかけると焦った表情をした。


「え‥‥‥何って、走ろうと思って」


「じゃあなんでそんなにキョロキョロしてんの?」


「キョロキョロなんてしてないよ」


 ゆうやはそう言うが、明らかに挙動不審でおかしい。


「まぁいいや、じゃあな」


 俺はゆうやに構っている暇もない為、気にはなりつつも帰った。汗をかいていた俺は軽くシャワーを浴び、朝ごはんを食べて準備を済ませた。


 十一時半頃プレゼントを持って家を出る。


 愛の家までは徒歩で二十分もあれば着く。

 近くはないが俺は歩く速度が割と早い方だ。


 もうすぐで着くとメールを送っていた為、俺が着く頃には愛は外で待っていた。


「おはよう」


 愛が小さく手を振った。


「おはよう、じゃあ行こっか」

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