第11話


 ピピピピ‥‥‥。


 わっ!‥‥やっちまった。


 俺はスマホのカレンダーを確認した。

 高二の年じゃん。


 あの時まぐれで入ってしまったのだ。


 てか寒い‥‥?


 もう一度スマホを見ると今は12月、しかももうすぐクリスマスだ。前回まで夏だったのに今度は冬?なんでだろ。

 

 俺は不思議に思いながらも一階に降りると、一階はとても暖かかった。


「おはよ、二階寒いでしょ」


 母が朝食の準備をしながら言った。


「おはよ。寒い寒い」


 俺はリビングのこたつに入った。


「あったか〜い」


「ご飯こっちで食べる?」


「今日はここで食べるわ」


 そう言うと母はご飯をこたつに持ってきてくれた。


「おー、おでんじゃん」


「おー、って昨日の残りよ、あんたも食べたじゃない」


「そ、そうだっけ?やっぱ冬はおでんだよな」


「変な事言わないでさっさと食べて学校行きなさい」


「あれ?てか今日ってなんでこんなにゆっくりしてんだろ」


「今テスト週間で朝練が無いんじゃなかったの?」


 テスト週間か‥‥懐かしい。


「そうだったわ、ラッキー」


「変な子‥‥」


 母がボソッと呟きながらキッチンに戻っていった。


 俺は出汁の染みた大根を一口頬張ると口の中を火傷した。温めすぎ‥‥。


 高校生活はいつもバタバタで朝ゆっくり出来るのは、このテスト週間ぐらいで、それ以外は朝練に自主練の日々。思い返せばあいつの事を思い出している余裕もなかったような。


 俺は準備を済ませると、学校に向かった。


「おっはよ〜」


 家を出るとゆうやが待ち伏せしていた。


「なんで待ってんだよ」


「え?毎日一緒に学校行くって約束したじゃない〜」


 ゆうやが女っぽくふざけて言った。


「そんな約束したっけ?」


「したんだよ、小一の時に!」


 こいつはふざけているし俺をからかっている。


「はいはい」


「それにしてもさみーなー」


「てかお前やけに薄着だな」


 ダウンにマフラーに手袋の俺とは逆に、ゆうやは普通に制服を着ているだけだ。


「どうせ走るし暑くなるからいいんだよ」


「走るって?」


 俺がそう言った瞬間ゆうやは走っていった。俺の事をチラチラ振り返って見ながら。


「なんだあいつ」


 そう言いつつも、ゆうやを追いかける俺。


 学校に着く頃には二人とも息を切らして背中にはじんわり汗までかいていた。


「ほらな、暑いだろ」


「暑いって、今だけじゃんかよ。逆に汗が冷えて風邪引くわ」


 その日は何事もなく普通に過ごした。


 それからクリスマスの日は愛とデートの約束をしていた俺は急いでプレゼントを用意するべくショッピングモールに出掛ける事にした。


「ってなんでお前がいるんだよ」


「なんでってお前が俺の西野さん取ったからだろ」


 俺がショッピングモールに行く為に家を出るとゆうやが待ち伏せをしていた。


「どうして最近待ち伏せばっかするんだよ、俺のストーカーか?」


「だから!お前が西野さんにどんなプレゼントを買うのかチェックするんだよ」


「いい加減根に持つのやめろよな」


 俺が愛と付き合った翌日にゆうやにその事を話すと相当ショックだったらしく、しばらく口を聞いてくれなかった。


「いいなぁ、お前は西野さんと毎日いちゃいちゃして‥‥」


「そんな事ばっかしてねぇよ!てか本当そろそろ他の子に目をやってみたら?愛の尻ばっか追っかけても引かれるだけだぞ?」


「尻なんか見てねぇし」


「例えだよ!」


「じゃあナンパしてくるわ〜」


 そう言いながらゆうやはどっかに消えていった。


 あいつってこんなやつだったっけ?俺の記憶が正しければ、お調子者なのは変わらないけど、愛にこんな執着してなかったような気がする。


 俺は度々変わる時代に頭が付いていかなくなりそうになっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る