第6話
打ち上げは地元でも人気の焼肉店だった。
俺とゆうやがついた頃には殆ど集まっていて、俺は愛を探していた。
しかし、愛が来たのは打ち上げが始まってしばらく経った頃だった。
監督やみんなでワイワイ肉を食べていると、明らかにキョロキョロしながら俺たちの側に突っ立っている愛の姿を発見した。
「あ!西野さん!こっちこっち!」
ゆうやが愛を見つけて呼んだ。
愛は俺のことをチラチラ見ながらこっちに来る。
「じゃあ西野さんここ座っていいよ」
ゆうやが俺を端に追いやりスペースを空け、そこに座るようにと椅子を叩いた。
「おじゃまします」
周りがうるさいからか聞き取りにくかったが確かに愛はそう言った。
ゆうやはとても嬉しそうに愛に話しかけていたが、ゆうやを挟んでこっちにいる俺の方を見ているのだろう、視線を感じる。
「それでさぁ」
ゆうやがつまらない話をし続けていたその時、監督がこちらに気付いてやってきた。
「君はどうした?」
監督が愛に向かって話しかけた。
「えっと‥‥呼ばれたので来ました」
「誰に呼ばれた?」
すると愛はゆっくり隣のゆうやを指差した。
「今日はバスケ部の打ち上げなんだよ、悪いが君は参加出来ないよ」
「‥‥はい。すみません」
「おい、りょうや、一人じゃ危ないから送ってってやれ」
「自分ですか?」
「こいつとは話をしないといけないからな」
そう言って強めに肩を掴まれたゆうやは苦笑いを浮かべていた。
「分かりました」
俺はまだ半分くらいしか食べてない米を残したまま、愛と一緒に店を出た。
店の外は焼き肉のいい匂いが漂っている。内心まだ食べたかったのになぁと思いながらも不安そうな愛を放っておくわけにはいかない。
「家どっち?」
愛の家は知っているが一応聞いてみた。
「こっち」
愛は気まずそうだ。
しばらく無言のまま歩いた。
湿度が高く蒸し暑くて体がベタつく。
「なんかごめんね、ゆうやが余計な事して」
「ううん、いいよ」
会話が続かない。こんなんだったっけなぁと思いながらも、当時と今じゃ少し俺も大人になっているし、当時はもっとガツガツしてたのだろう。
「そういえばゆうやに誘われて打ち上げ来たんだよね?」
「うん、そうだけど」
「知り合いだったの?」
「違うよ。今日の朝初めて声かけられたんだけど、バスケ部って聞いて、もしかしたら竹内君に会えるかもと思って来たの」
「俺に?」
「‥‥あのさぁ、今から私が言う事驚かないで聞いてね」
「う、うん」
「私竹内君の事好きなんだ」
「そう‥‥なんだ」
「驚かないでとは言ったけど、少しは驚くと思ってた」
「あ、ごめん」
そりゃ知ってるから驚きはしないけど少しはリアクション取った方がよかったな‥‥。
「だから、今日が告白するチャンスじゃないかと思って来たの」
「うん。実はさ、俺も西野さんの事気になってたんだよ」
「えっ?本当?」
愛は目をまん丸にしてこちらを見た。
「本当、本当」
「て事は私たち付き合う‥‥?」
「西野さんさえ良ければ俺と付き合ってほしい」
そうだ、こうゆう時は男から言ってあげた方がいいんだよな。
「もちろんだよ!ビックリ‥‥嬉しいなぁ」
この頃の愛はまだ慣れてないのもあってしおらしかった。
「俺もビックリだけど嬉しいよ」
「ねぇ、もしよかったら今からうち来る?」
「えっ?いきなり?しかもこんな時間だし親とか怒られない?」
「大丈夫だよ!うちの親ゆるいから」
「じゃあ‥‥ちょっとだけお邪魔しようかな」
こうして俺は愛の家にお邪魔する事になり、二人で向かった。
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