第2話


 今日も今日とてだりーな。


 18歳の夏、俺は学校も行かずまともな職にもつかずその日暮らしの毎日を送っていた。


 ある日は日雇いのバイトがきつすぎてバックれたり、またある日はやっと決まったコンビニのバイト初日に寝坊してそのまますっぽかしたりとクズまっしぐらの人生だ。


 中高はそれなりにモテたし彼女なんかもいたりしたが大学受験に落ちてから俺の人生は変わってしまった。



 遡る事数ヶ月。


 大学受験に失敗した俺は諦めずに次の受験に向けて勉強をしていたある時、自分の中で何かが変わる出来事が起きた。


 そのきっかけは他でもない幼馴染の存在だ。そいつは俺といつも一緒で大学も一緒に行こうと誓っていた。まぁ言うまでもないが俺が受験に失敗した横でそいつは見事合格。


 それから忙しく過ごす幼馴染と、血眼になって勉強する俺の差は広がるばかりだった。


 そんなある日、俺が休憩で夜風に当たろうとベランダで一服していると、前の道を幼馴染と彼女らしい子が歩いていた。

 それも遠目でも分かる程美人でスタイルのいい子だった。最初はあいつもやってんなー程度で深くは興味が湧かなかった。


 が、次の瞬間俺んちの目の前でし始めたのだ。


 確かに俺んちの前というか正しくは裏なんだが、は人通りは殆どないし窓から外を見ない限りバレないとは思う。それでも俺みたいに一服するやつもいるだろうしと思いながらも何故か俺は見られたらヤバいと部屋に入り電気を暗くしてカーテンの隙間から覗いた。


 あー、おー、なんかこの状況って俺AVに出てくる童貞みたいだな。なんて呑気な事考えていたらどっかの馬鹿が通報したのか警官がやってきた。慌てて服を整える二人の焦った顔といったらもう可笑しくて可笑しくて、あまり大声は出せないが笑いを堪えるのに必死だった。


 それの何がきっかけだったかと言うと、まさにその可笑しい出来事だった。


 大学に一発合格して充実したキャンパスライフを送ってるかと思えばこの有様。そんな幼馴染の間抜けな姿を見た俺は緊張の系が切れた。


 俺、別に頑張らなくていいんじゃね?ってなってからはもう人が変わったかのように適当な生活をしていた。

 幸い?実家暮らしだった為生活には困らなかったがその代わり毎日罵声を浴びさせられて、しまいには食事ぐらい自分でどうにかしろと言われ渋々飯代だけを稼ぐ日々に。


 俺はいつものように昼過ぎに起きるとスマホで一日限りのバイトを探す。変わり映えのしない求人情報。この会社どんだけ同じ求人出してんだってくらい何個も載っているやつもある。時給が高いと思ったやつは殆どキャバクラだし日給いくらは現場系の仕事で俺は無理。


 そんな中今まで見た事ない新しい求人を見つけた。


 宝探しを一時間手伝うだけで一万?

 これは楽そうだと詳しい内容も確認せずに飛びついた。


 スマホでポチッとエントリーすると、すぐに電話がかかってきた。


「もしもし」


「私宝探しサービスの加藤と申しますが、竹内さんでお間違いないでしょうか?」


「はい、そうです」


「求人の件でご連絡させて頂きました。早速ですがこれから出てこれますでしょうか」


「大丈夫です。どこに行ったらいいですか?」


「今から携帯の方に地図を送るのでそちらまでお越しください」


「分かりました」


 短い電話を切った後すぐにメールが届いた。


 家からすぐの場所が指してあった。

 

 結構近いじゃん。そう思い俺は軽く用意するとすぐに家を出た。

 何も聞いてなかった為スマホと財布をポッケに入れ、スニーカーを履いてきた。


 五分ほど歩くと、地図が示した場所に着いた。しかしそこは何もない裏路地だった。


 あれ?俺が間違えてんのかな、そう思ってさっきかかってきた番号にかけることに。


 プルルルルル‥‥。


 なんだ?出ねーじゃん。


 そう思った次の瞬間、地鳴りがして俺は地震でもきたのかと思い構えた。


 しかし来たのは地震ではなく俺を変な世界へと誘う音だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る