pouch

@cakucaku

第1話


 ここは‥‥どこだ?


 辺りは薄暗く木が生い茂っている。


「一時間目の授業を始めます」


 いきなり俺の耳をつん裂くような大きなアナウンスが響いた。


 なんだ!どこから聞こえてるんだ?!


「一時間目は国語です」


 国語?一体誰だ?意味が分からない。周りには俺以外に人はいない、足音さえしない。

 それよりなんで俺がこんな所にいるんだ?


 キーンコーンカーンコーン


 だからこの音はどこから聞こえて‥‥。


 俺が上をふと見上げると木の先にスピーカーが付いている。

 あっこから聞こえてるんだ!


「おーい!ここどこだよ!誰の仕業だよ!」


 ってスピーカーに叫んでも無駄か。


「では一問目、このことわざの意味を答えよ」


「は?ことわざ?」


「猿も木から落ちる」


「そんなもん簡単だよ!どんな得意な事でも失敗する時があるって事の例えだな!」


「正解です」


「‥‥ってそれがなんだよ!家に帰してくれよ!」


「では二問目、この漢字の読みを答えよ」


「このってどのだよ!」


 その時、いきなり地面が揺れ出して土に字が浮かび上がる。


「歟」


「なんだよこの漢字、見たこともねーよ!分かるわけねーじゃねぇかよ!」


「不正解です。一年前から人生やり直しましょう」


「は?何言ってんだ?‥‥‥‥ってなんだこれ!!わぁ!!」


 大きな怒号と共に俺は地面に吸い込まれていった。まるで蟻地獄に落ちた虫のように。

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