第2話
モアイ像のある施設までの道のりは、空港からバスで一時間ほどかかったが簡単に辿り着くことが出来た。道中、都会のような満員なんて概念のない、ガラガラのバスの中から広がっていた晴天の下輝く南国の海の景色が見えて、俺の心を躍らせた。小学生の遠足の時のようにバスで窓にべったりとくっつき、ずっと眺めてしまっていた。
ああ、俺はやっと自由になれる居場所に来たんだと安堵した。今までの生活をなんで続けていたんだろうと思うくらいに、この南国の景色が温かく素晴らしく感じた。
そして、目的地近くの停留所に着き、代金を整理券と共に運賃箱に入れてバスから降りると長い急斜面の坂が待っていて、それを登ると更なる南国が現れ俺のテンションはマックスを記録した。
「モアイだあああああ!!うおおおおおお!」
俺は興奮のあまり、辿り着いた頂上から少し離れたところに見えたモアイ像まで叫びながら走る。
「すげえええええ」
そこはモアイがたくさんいる日本ではない、どこかの別の国を感じさせる素晴らしい世界だった。南国の緑・黄色・赤……オレンジ。たくさんのパッションカラーの向こうにはシーブルーとスカイブルーの最高な眺めが広がっている特別な国だった。
ここは、幸せな温かい太陽が俺を照らし、輝く海も俺を照らし、全てが俺を歓迎している最高の国じゃないか!!
俺は子供の頃のようにはしゃぎながらとにかく走った。平日だからかはわからないが、観光客も少なく独り占めしている気分になって大きなモアイ像へと辿り着く。
「でけえ!」
先ほどまではモアイ像と離れていたところにいたからモアイ像が小さく見えていたが、近くに来てみると俺の身長の三倍くらいの大きさがあるように見えた。
テンションを高くしたままモアイ像の一番下に辿り着いた時、上を見上げてみると……。
「って?え?」
「人……ん、子供か?え?」
み、見上げてみると……オレンジのTシャツを着た子供がいた。
モアイ像のてっぺんに。
さっきまでは興奮していたので気が付かなかったが、モアイ像のてっぺんに子供が間違いなく乗っかっている。遊びで登ったのだろうか、というか登れるものなのだろうか?てか……登っていいものなのか!?
俺が困惑していると、その子供は俺が見ているのを確認したのか、急に泣きながらこんなことを言ってきた。
「あのぉ……あ、あ、あのああおろじでええぇぇええ」
「え?泣き始めた!?え!?」
「ヴぉ、ヴぉりれなぐなっだあああああ」
「お、おりられなくなったあああ!?」
どうする俺。どうする!?しかも結構可愛い女の子じゃないか。どうしてこんな五メートル以上あろうモアイのてっぺんに辿り着いてしまったのか知らんが、降りられなくなって大泣きしているし助けないとまずいな。泣き声がびゃんびゃん海に向かって響いている。登れたはいいものの、見下ろせば怖くなり降りられなくなってしまったのだろうか。猫が高いところに得意げに登り、降りられなくなって飼い主に助けを呼ぶパターン的な。て、急ごうぜ俺、子供泣いてるし。でも、どどど、どうすればいい……。
しかし、俺が考えていると子供はとんでもない行動に出た。
「ごめんやさいいいいいいいあああああ」
「え、えええええ、えええええーーーー!?!?」
――――どおおおおーーーーーーん!!
「い、い、いたあああああああああああああああああああっっ」
俺は目の前に広がる海の向こうの大陸に声が聞こえるくらい叫んだと思う。
子供は俺の胸めがけて五メートル以上ある高さから落ちて来たのだ。
いてえよ。馬鹿なのか!?あほなのか!?下手したら骨折れるぞ?いくら子供でも許されねえ!
「て、てめええええええええ!!何しやがる!!」
突然の超絶痛い出来事に俺は激怒だ。そして、子供は俺の上に落ちたんだから超絶無事だろう。落ちた後、ササっと俺から離れていった。一体何なんだ。子供だからって許されると思うなよ。というか俺の眼鏡どこだ?眼鏡をかけないと前なんか見えやしねえ。さっきの衝撃で落ちたのか?
「イッテテテテ……はやく眼鏡眼鏡……みえねえよ……」
俺は激痛に耐えながらモザイクのような視界のまま、モアイの周りの床に自分の眼鏡が落ちていないか探していると、オレンジTシャツを着たさっきの子供であろう人物がもやっと目の前に現れた。
視界がハッキリしないので断定できないが、俺の眼鏡らしきものを持って目の前で立っている気がする。
「お兄さん、いつまで探してるんすか~~眼鏡はこっちですよ?」
ほら、俺の眼鏡を……って!?
「あ!?返せ!!こいつ!!さっきまで泣いていたくせに!!」
この子供、俺の眼鏡で遊んでやがるな!!??眼鏡はこっちですよ?だと!?ふざけるな!
「あれは迫真の演技です。残念ながら自分で降りられます」
「はあ!?ふざけんな!!嘘だろ!?って、くそ、今眼鏡ないとなんも見えねえ、くそ!!返せってば、おい!はあ、えいっ!!くっそおおお取れねえ!なんだよこれ……」
最悪なことにどうやら悪ガキだったようだ。今目の前にいるさっきまで泣いていたガキは悪ガキとなって俺の眼鏡を自分の手で楽しそうに泳がせている。俺が取り返せないようにどうみても遊んでやがるぞ。取り返そうと手を伸ばしてもひょいっひょいっと生意気に動いてかわしやがって。てかちゃんと見えねえから取れねえんだよこの野郎!
「返せって!まじで見えねえから!これから旅をするのに必要なんだよ!」
「旅??お兄さんどこから来たの??にひひっ!!」
「東京だよ、だから早く返せって……」
「学校は?仕事は?今日平日だよ?」
「う、うるせえよ……はやく返せって……」
「さぼりかあ~~さぼりなのかあ~~」
「うるせえな!ああ、そうだよ!だから早く返しやがれ!」
俺は眼鏡を取り返すためにとにかく必死なのだが、このクソガキの動きがちょこまかしていてすぐ逃げられるし俺の手はかすりもしないし、そもそも眼鏡なしではよく見えないのでガキの動きが捉えられないし!
只今モアイ像の周りをぐるぐるして追いかけている状況だが、このままでは危ないし……しょうがない……得意の交渉といこう。
「おい子供、止まれ。話を聞いてほしい」
「ん~~?なんですか??」
俺はこの追いかけっこの流れを止めるべく手をパーにしてハイっと上げ、子供に冷静な口調で話を始めてみた。
「好きなジュースとか、お菓子とか買ってあげるから、眼鏡返しなさい」
もう、これしか思いつかなかった。俺はパーにしていた手を返しなさいと悪ガキがいるであろう方向へ差し出す。
だって、子供はお菓子とかジュースが好きだろう?俺が幼い頃なんかジュースとお菓子が好きすぎて、頑張って貯めたお小遣いを握りしめてワクワクしながら駄菓子屋に行ったもんだぜ。
それがタダで貰えるとなったら最高だよな?
「しょうがないかえしてあげるかあ……」
「おお!ありがとう!助かる!偉いぞ!」
ほら!見なさい。お菓子とジュースだけでノッて来たぞ。ふふっさすがは子供だ、ちょろいな。
良かった……。
俺の眼鏡が返ってくる。
そう、安堵した時だった。
「うそぴょーーーーん」
残念ながら、俺の手のひらに眼鏡が返ってくることは無かった。うそぴょーーーーんのむかつく悪ガキ再開のご挨拶と共に、俺の怒りはランクアップする。
「おいいいいいい、このくそがきいいいいいい」
「ジュース?お菓子?そんなもんで釣れるわけないじゃーーん。馬鹿にしないでよね……ふっ」
なんなんだこいつ。俺は今眼鏡をかけていないが、この悪ガキが俺をバカにしている顔がハッキリとわかるぞ。このくそくそくそ悪悪悪ガキめぇ!!
すると今度は悪ガキの方が急に交渉を始めた。
「でもまあ……日向(ひなた)の言うこと聞いてくれたら返してもいいよ」
「え?」
「マジマジ」
なんだこいつ。生意気な。大人に対してなんつーー態度だ。何が、「言うこと聞いてくれたら返してもいいよ」だ。ふざけんな。
でも、もう返ってくるんだったらなんでもいいかもな……。俺はへとへとなのだ。前日までの仕事の疲れが残っているのもあるが、二十七歳にして子供と追いかけっこをして何日分の体力が吸い取られたことか。もう、俺の子供時代みたいに永遠と走ることが出来るような養分は残ってくれてはいない。
だから、とりあえずこのガキの要求を聞くことにしてみた。
「はあ?何だよ言ってみろよ」
どうせ、子供のしょうもないお願いなはずだ。眼鏡してねえから年代とかちゃんと把握できてねえけど。小学生くらいか?きっと大したことは無いだろう。
そう思い、どんとこいの精神で構えた。
「早く言えって、お願いとはなんだ」
すぐの返答がないもんだから催促すると、悪ガキは言った。
「お兄さんの今日の旅……日向(ひなた)も連れてって!宮崎案内するから!」
「は?連れてって?旅?案内?」
「そう。案内するからさ。お願い!!」
ゲーム機とかヘラクレスオオカブト的なさ、なんかそういう高額なもんとか希少種をくれって言ってくんのかと思ってた。ガキの考える要求って、行き過ぎたらそういう感じな気がしたからだ。俺は子供の頃、親に悪さしまくって最終的に心を折らせることに成功し、念願のゲームを手に入れたレベルの悪ガキだったしな。もはや、いい子ではなく悪ガキで困らせて親をお手上げ状態にし、欲しいものを手に入れる勢だった。
だから、それと同じ思考でランクの高い何かしらを要求されるんだと予想をしていたんだが……。
今このガキは旅に連れてけと言ったな。予想外だし、正直困る。これは俺のバカンスなわけだし、下手に子供連れて誘拐なんて思われても危険だ。いくら地元の子でこの辺詳しいとしても、一緒に行動すんのは……てか生意気な時点で嫌だな……うーーんどうするか。しかしこのままでは眼鏡は永遠に返ってこないし……。
俺が頭を抱えながら考え込み始めると悪ガキはまた生意気に言った。
「それとも眼鏡要らないのお?」
「え!?要ります!!!!」
「なら、決まりデーース!十五時過ぎあっちにバスが来るので、そのバスに乗りーーのっ!あっちの景色のよい神宮を今日は目指ーース!」
悪ガキはバス停の方向を指差してから、俺が来た空港とは逆のもっと南の目的地へと指を動かしながら言った。空港とはかなりの距離になりそうなずっと向こうへ行くのだと強く主張していたのだ。
「えーーと」
「なに?」
「俺、日帰り予定だから空港方面だと助かります……」
俺は仕方なく思い出したくもなかった現実的な意見を主張する。
「え、日帰りなの!?なんでよ!東京から来たくせに!ゆっくりしてきなよお!それじゃあ、帰りの飛行機取ってるってこと?」
「まだ、取ってないけど」
しかし、ガキはわかってくれない。
「なにそれ!丁度いいかも!なら、もっといればいいじゃん……ハイ決まり。滞在は延長デーース」
ガキのくせにしっかりしているし、頭の回転が速い。俺が考える間もなく質問し次々勝手に決めていきやがる。なにが丁度いいだよ。
ガキだからわかんねえかもしれねえが、俺は明日仕事なんだ。現実的には行かなきゃいけねえんだ。そんなこと忘れて、今日はここで心を休めるつもりで来たのに。ガキのせいで帰らなければいけないことを思い出しちまった。できれば永遠に会社なんて行きたくねえよ。東京になんて帰りたくねえよ。くっそ。いいよな、ガキはガキだから。働かなくていいしさ。
「帰りたくなくても、帰らなきゃいけねえんだよ……」
俺は真面目に悪ガキに伝えた。しかし、悪ガキは「えーー」と納得いかない感じで構えて俺に聞いてきた。
「なんで?」
そんなん聞かれてもなあ……なんでじゃねえよ、そういうもんなんだよ。
「仕事はそんな簡単に辞められないから」
しかし、俺がそう返してもガキは納得できないようだ。俺になんでを再び繰り出してくる。
「なんで?」
はあ、どう説明すれば伝わるんだよ。
なんでなんでって、イライラしてくるな。
「とにかく、仕事は行かなきゃいけないんだって」
「なんで?」
「怒られてでも行かなきゃいけねえとこなんだよ!」
「どうして?」
「もう!うるせえよ……ああ、どうしたらいいんだああああ」
超めんどくさいぞこれ。なんなんだよ。
俺は悪ガキの質問にむしゃくしゃして、あたまをばさばさとかき回す。
そして、納得させられるわかりやすい答えをなんとか自分で見つけようとしていると、ガキはとんでもないことを言い放った。
「お兄さんサボりで来たんでしょ?つまり仕事には行きたくないんでしょ!?日向(ひなた)の家泊ればいいし、帰るのやめたらいいじゃーーん!まあ、もう二度と帰んなくてもいいし。で、日向の案内でお兄さんと暫く観光!どうだ!」
「待ってくれ、そんな……」
こいつは急に何を言っている。はあ……いいよなお子様は。気楽に生きられて。
「大人の事情も知らないで、簡単なこと言うんじゃねえ!」
俺は今、真面目に強く怒って言ったつもりだ。子供にとってはそりゃ簡単なことかもしれねえけど、もっと複雑なんだよ、大人は。言葉に簡単に表せないくらいにな。俺だって、昔はこの悪ガキみてえに、簡単に生きてたよ。でも、それは子供だったから出来た生き方なんだ。
しかし、そんな俺の言葉なんか気にせずこいつは言葉を放つ。
「でも、学校は行かなきゃいけないんだよ?って周りの大人は日向(ひなた)にしつこく言うけど、日向行ってないよ」
「は?お前今何年生?」
「小三」
「はあ!?何で行かねえんだよ。てか、ずいぶんと喋りが大人というかしっかりしてんだな……小学三年生ってそんなもんだっけ?」
「行きたくないからだよ。行きたくないもんは行きたくないじゃん行かなきゃいいじゃん」
ハッキリは見えないが悪ガキは俺の眼鏡を持ってくるくる回しながら「喋りでわかるでしょ?学校行かなくても大人になれるし、しっかりしているのだよ。ふふふ」と意味わからない事を付け足してからまた、俺に話を続けた。
「だからお兄さんも会社には行きません」
「えっと、それとこれとは」
「違いません」
「えーーーーと」
「行かなくてもシニマシェーーン」
「えーーとえっとですね……」
「なら、眼鏡返しません!!」
「いや、それは」
「ハイ決まりデーーーース!」
俺は今、ほとんどしゃべっていないのに勝手に何かが決まってしまった気がする。
困った。完全に悪ガキに飲み込まれたぞ。
そして、このガキは「アハハハハハ~~ヤッタアアアア」とモアイと俺の周りをぐるぐると走ってはしゃいでいる。悪ガキのテンッションと勢いが凄過ぎてついていけねえよ。
はあ……。
でも……よく考えればもしこれで今日帰らずに俺がここに居るならば、それは俺のせいではない。この悪ガキのせいだ。そうだ。だから俺は帰らなくていい。
そうだよ……。
そういうことにしよう。俺はそうしたい。そうしよう!しょうがないんだ、帰れないのは。これは事故だ。子供の言いなりになる事故。そういうことにすれば、俺はきっと安心できる。
しょうがないからな。命ともいえる眼鏡が返ってこねえ訳だし。命に係わる問題が発生しているのならば、許されるだろう。
そして、大丈夫なのか?この悪ガキ、家に泊まっていい的なことをさっき言ってたよな。冷静になって考えてみると、心配になるぞ?俺はもう二十七の大人なんだ。こんな子供がそんなこと気軽に大人に言うもんじゃねえと思うし、一応言っておいた方がいいか。
「なあ、いいけどよ……お前、家泊めるって発言マジか?そんなこと誰にでも言うなよ。変な奴もいるかもしれねえし危ねえからさ。眼鏡返してくれるんだったら、俺は自分で宿探してお前に付き合うから……」
「大丈夫!宿を探す必要は無い!日向の家に行けば分かる!」
「分かるって言われましても……」
「分かるからもう気にしないで!で!でね!日向の名前は七星(ななぼし)日向(ひなた)だから!頼むからお前って呼ばないでくれますかね?日向って呼んで」
「あ、はい、日向ね。呼ぶ呼ぶ。ごめんごめん。えっと、自己紹介しとかないとな。俺は七紙(ななし)剛士(つよし)、つよしでもいいしななしでもいい」
急に来た自己紹介に戸惑いながらも、俺は自分の名前もちゃんと紹介した。ガキの喋りの展開が早く、次々と言葉が繰り出されすぎてついていけねえ。
「えぇ!?何その名前。名無しって名前が無いみたいだね!にひひ。体ひょろっとしてて弱いくせにつよしだって……おもろ……」
初めましての人に名前を打ち明けると、いつも同じ反応を食らう。はあ、この名前を変えたい人生だったぜ……。
「うるせえよ!ななしってのは漢数字の七に和紙のしで七紙だよ。七星とそんな変わらねーだろーーよ」
「ふーーん。どんな漢字だっけ?後で書いて教えて~~。まあなら、とりあえずななしぃって呼ぶね!てか、一緒にしないでくれます?七星ブランドが落ちる……」
なんだよ七星ブランドって……意味わからんこと言いやがって。七紙ブランドの方が絶対上だと思うぞこの野郎。
「漢字そんな難しいか?まあいいや。もう呼び方はお好きにどうぞ!てか、いい加減眼鏡返してください……」
そう言うと、日向は俺にホイッと眼鏡をやっと渡してくれたのでスグ顔にかけた。
「眼鏡無いと見えないとか辛すぎでしょ~~」
「はあ、やっと世界がクリアになったぞ……。あのなあ、お前だっていつかは眼鏡必須になるかもしんねえんだぞ!……って日向は小三にしては背が高いよな?しかも美形じゃん!絶対クラスで人気系だろ。学校に行ってない意味が分からないんだが、なんで?」
「うるさっ!外見で決めないでよ!そっちの言ってることの方が意味が分かんない!いろいろあんの。それに会社をサボってるななしぃに言われたくないね」
「はあ?学校と会社を一緒にすんじゃねえよ!?」
眼鏡をかけて日向をよく見ると、小学三年生にしては背が高く喋り方のせいか少し大人に見えた。海風になびくロングの綺麗な髪の毛が、小学生美少女をさらに輝かせる。
そして、なんかむかつく言い方をされたけど、まあ……いっか。相手は子供だし。
「はあ、しょうがない。付き合ってやるか」
学校で何があったのか、日向がどういうやつなのか。
俺がどうしてこうなっているのか。
俺はここに居ていいのか。
今何が起きたのか。
考えても全然わからねえけど、何故かこいつと旅できることに、気が付いた時には安堵していた。
現実に帰りたくない俺が勝っているだけなのか、日向のせいなのかはよくわからない。
けれど、戸惑いながらも安心している自分がいたのだ。
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