桜小路蒼介⑤

 食事を終えた蒼介と堂坂は、早速、昨日の路上ライブの動画や画像がSNSなどに投稿されていないかを調べはじめた。

 しかし、それらしきものはなかった。ので、ファミリーレストランを後にして大弥矢駅に向かった。伝統と信頼の、足を使った裏付け捜査のためだ。といっても今回は、二手に分かれて都丸がライブを行ったという大弥矢駅のペデストリアンデッキ──広場の機能を兼ねた横断歩道橋──でナンパ師、又はキャバクラの客引きよろしく通行人に声を掛けまくるだけだ。昨日の午後六時ごろから午後八時ごろまでここでやっていた路上ライブのことはご存じありませんか、と。

 先は長いかもな、だりぃなぁ、と蒼介は秋晴れの空につぶやいた──その直後のことだ、

「はい、知ってますよ。昨日のライブも聴きに来てましたから」

 という証言が得られたのは。

 マジで?! いきなり当たり!? と喜びより先に驚きを覚えた。特に日頃の行いがいいというわけじゃないのにどういうこった? などと思いながらメモ帳とボールペンを取り出す。

 証言してくれたのは、せいぜい二十歳ぐらいにしか見えない、ナチュラル寄りの──引き算ギャルメイクの女性、あるいは少女だった。彼女は自分の好きなものを語る人間特有の熱に浮かされたような顔をして続ける。「駿平のファンなんですよね、わたし。彼の魅力は挙げれば切りがないんですけど、一番はやっぱりあれですね、やっぱりがなり声ですよ」

「はぁ」

 がなり声、と言われても歌に詳しくない蒼介には漠然としかイメージできない。がらがら声という認識で合っているのだろうか。

「普通の歌い手さんがやると感情を力強くぶつける感じになっちゃうんですけど──あ、それがダメって言ってるわけじゃないですよ?」

「そうですか……」蒼介の相づちは、生焼けのパウンドケーキのようにふやけていた。

 しかし、彼女のペースは乱れない。一流パティシエールに違いなかった。「それで、駿平のがなりなんですけど──」

 いや、違くて路上ライブのことを話してほしいんだけど、という言葉は差し当たっては飲み込んでおく。

「──彼のがなりはねぇ」ここでなぜか、えへへ、と面映おもはゆそうに頬を緩めてから、「すっごく切ないんですよ。泣き虫さんな音色なんです。すごくないですか? なかなかいないですよ、ていうか、彼以上に切ないがなり声を使える歌い手さんなんていないです。しかも、本人も自分の魅せ方をわかってるんでしょうね、失恋や苦い青春の歌が多いんですよ。エグいですよね。あの歌声であの歌詞はずるい、うん、ずるすぎるんです。犯罪級ですよ、刑事さん、極刑は免れないってやつです」

「ええ、刑法第二百条違反ですね」

 刑法第二百条(尊属殺そんぞくさつ重罰規定)は親殺しなどをその他の殺人よりも重く処罰する規定だが、最高裁判所の違憲判決を受けて削除されたため現在は法源性ほうげんせいはない。

「そうそう、それですよ、尊属殺級のヤバさなんです」

「知ってんのかよ?!」つい、素で突っ込んでしまった。見た目も話し方もアホなギャルって感じなのに法律知識があんのか……。

「知っていますとも」ドヤ顔になって彼女は言う。「わたし、こう見えても法科大学院ロースクールに通ってるんで」

「マジか……」まさかのインテリ様であった。つーか、君、何歳だよ?──ツッコミどころが多すぎて疲れてきた。

 なので、そろそろ路上ライブの話を、と水を向けようとしたところで、

「あ、何か、『公務執行妨害で連行する!』とか言って人目につかない所に連れ込んでイケナイことする警察官の顔になりかけてるんで、駿平の布教活動はここまでにして、いい加減ライブの話をしますね」

「わざとかよ!?」わざと関係ない話してたんか?!──ちょっとばかしイラッと来た。そして、「俺はそんな変態警官じゃねぇわ!?」

 あは、と楽しそうな笑みを浮かべて彼女は、「いやぁ、刑事さん、いい人ですねぇ。ツッコミ役がいると安心感が違いますよ」

「ツッコミ役って──」俺はお笑い芸人じゃねぇよ?! と口をついて出そうになって、はっとする。言われたそばからまた突っ込んでしまうところだった。

 はぁ──蒼介は太くてコシのある溜め息をついた。早々に証人が見つかって、ツイてるぅ! などと思ったが、まっっったくそんなことはなかった。むしろプラマイで言うとマイナスまである。しかし、これが蒼介の仕事だ。凶悪な犯罪者を捕まえるためにも投げ出すわけにはいかない。

「あのぅ、マジでそろそろライブの話をしてくんない? 俺も忙しいんよ、そうは見えないかもしんないけど」

 きゃっはー、と黄色い声がはじけた。「めっちゃげっそりしてますね、おもしろーい」と軽薄な様子を見せてから、やにわに、「──というのは冗談で、昨夜のライブについてですね」とまじめな雰囲気をまとい、彼女は言う。「わたしがここに来たのが午後の五時四十七分三十二秒で、その時にはすでに都丸駿平は一人でライブの準備をしていました」

 落差すげぇな、と思いつつ、「どうしてそんなに細かく時間を記憶してるんだ?」

「わたし、頭の中に記録機能付きの電波時計があるんです」

 嘘を言っているようには見えなかった。

 体内時計の正確さと記憶力に並々ならぬ自信があるということだろう、と、そう理解して、「続けて」と促す。

「はい」と応じて、「ライブが終わったのが午後七時五十四分四十秒で、その八分三秒後の午後八時二分四十三秒に都丸駿平はライブをしていたスペースから移動しはじめました」

「……」キャラが違いすぎる、と困惑が深まるも、まぁデメリットねぇし別にいっか、と気を取り直す──諦めたとも言う。「ええと、都丸さんが移動を開始した午後八時二分十三び──」

「午後八時二分十三秒です」

「……」や、やりづれぇぇ。「……ライブの後片付けが終わって都丸さんが帰っていったのが午後八時二分四十三秒だった、という認識でいいんだよな?」

「はい、間違いありません」

「都丸さんは最初から最後まで一人でライブを行っていたのか?」

「そうですよ、彼はシンガーソングライターですから」

「あなたはライブ中──午後五時四十七分三十二秒から午後八時二分四十三秒まで席を外すことなく、ずっとその場にいたのか?」

「もちろん」

「それならわかると思うんだけど、都丸さんは帰る時も一人だったか? 誰か、例えば観客だった人と一緒に帰っていったというようなことは──」

「ないですね」彼女は即座に断言した。が、「いえ、少し訂正します。わたしが見た限りでは、彼は一人で帰っていました。わたしの視界外でどうだったかまでは不明です」

 高性能なAIと会話している気がしてきた。そんな当たり前のことまで言葉にしなくていいのに、と思う──それはともかくとして、この情報は捨て置けない。都丸は、「ライブが終わって車のとこまで戻る時、聴いてくれてた子と途中まで話しながら歩いた」と言っていた。目の前の電波時計ガールの証言と明らかに食い違っている。

「何か気になることでもありましたか?」電波時計ガールに問われた。

「ああ、まぁな」と応じてから、「ところで、名前と連絡先を教えてもらえるか」と尋ねた。

「あー、はい」と電波時計ガールは納得の表情になり、「ナハナハナと言います。〈菜の花〉の〈菜〉と〈花〉で菜花なはな、〈初心者〉の〈初〉に〈奈良なら県〉の〈奈〉で初奈はなです。スマホの番号は──」

 メモ帳に記しおえた蒼介は、よし、とうなずいた。

 すると菜花は、「わたしは法廷に呼ばれそうですか?」と聞いてきた。

「まだわからん」

「そうですか、まぁそうですよね」

「ごめんだけど、今後の展開次第だから」

 ええ、大丈夫ですよ、と物わかりの良さを見せてから、不意に菜花は小悪魔めいた笑みを浮かべた。「刑事さんが調べてるのは、昨日のVTuber殺害事件ですか?」

 どうしてわかったんだ? とは思わない。頭のいい子みたいだし、昨夜の犯行時刻の出来事を尋ねられたら勘づいても不思議はないよな、と納得感さえある。とはいっても、うんそうなんだよいきなり呼び出されてもー大変でさー、などとは言えない。

「悪いけど、教えられない」

 あは、と軽やかに笑って菜花は、「りょーかいでーす」と下手くそな敬礼をして答えた。

 警察界隈には、敬礼されたら敬礼を返しましょう、という決まりがあるので、お手本を見せるつもりで蒼介も敬礼──ピシッと右手をこめかみの辺りにやり──し、「ご協力ありがとうございました」

 一拍後、

「何それ、ウケるー」菜花はそんなふうに声を踊らせた。

「──いや、何でだよ?!」



 菜花と別れた蒼介は、堂坂に電話を掛けた。ライブを聴いていた人物から話を聞いたことを伝えると、

『もう証人が見つかったのか』堂坂は驚いたように言った。

「そうなんですけど問題もありまして。直接話したいんで合流してもらってもいいですか?」

『──了解』

 そして、ペデストリアンデッキ上、大弥矢駅の西口前で堂坂と合流した。

「で、問題というのは何だ?」

「ええとですね」と都丸が嘘をついた可能性について話す。

 聞きおえた堂坂は、腕を組んで、「ふうむ」と思案顔を見せた。「帰りに一人だったこと以外は都丸の供述と一致しているんだな?」

「まぁそうですね」

「であれば、アリバイ自体は成立しているのか……」堂坂は思考を深めているようだった。

「どうします? もう少し裏付け捜査を続けますか?」

「……いや、一度、長妻管理官に報告しよう」

「わかりました」

 車に戻り、ドアを閉めると、堂坂は長妻に電話を掛けた。理路整然と事実を伝えている。

 やがて通話を終えた堂坂は、改めて口を開いた。「長妻管理官から新たな指示を頂戴した──今から早野舞の事務所に行ってスレッドに挙げられていた人物含め、話を聞いてきてくれ、とのことだ」

 今からか、と方角表示機能などを備えた、やたらとアウトドアに適したデジタル式の腕時計を見ると、十三時十六分一秒であった。たしか、早野の事務所は東京の千夜田ちよだ区だったはず。ここからだと高速道路を使えば──初めて行く場所だから少し多めに見積って──四十五分ぐらいだろう。

 首肯し、鍵を回す。エンジンからうなり声が上がった。助手席では、堂坂がカーナビに目的地を設定している。それが終わるのを待って、アクセルを踏んで車をスタートさせた。



 VTuber事務所〈さいば~きゃんどるず〉を運営する〈Vメイト株式会社〉の本社は、地上十三階建てのビルの八階にある。ワンフロアすべてがそうらしかった。

 エレベーターを降りると、目の前に受付があった。それなりに見目の良い──ぎりぎり手の届きそう系美人の若い受付嬢が一人、座っている。そんな彼女は、それなり以上に容姿の整った堂坂と普通ぐらいであろう蒼介を認め、警察だと察したのだろうか、負の感情を瞳に浮かべた。が、すぐに掻き消し、「いっらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」と尋ねてきた。

「埼玉県警だ」堂坂は警察手帳を呈示しながら鉄のように硬く冷たい声色で言う。「早野さんの件で話を聞きたい」

 堂坂に威圧しているつもりはないのだろうが、受付嬢はおびえたように表情を強張こわばらせた。とはいえ、「どの者をお呼びいたしましょうか」と瑕疵のない対応。

 しかし堂坂の返答には、

「まずは社長の横幕よこまく氏に話を通したい」

 と愛想の欠片かけらもない。

「かしこまりました、ただ今、社長の横幕を呼んでまいりますので少々お待ちくださいませ」受付嬢はマニュアルを遵守し、しかし逃げるように奥に引っ込んでいった。

 待つこと数分、先ほどの受付嬢と四十代に見える男性が出てきた。男はすらりと痩せており、柔らかそうなショートヘアを緩く束感が出るようにセットしている。いかにも優男という風采だ。左手首には複雑な文字盤の腕時計をしている。おそらくスイス製の高級時計だろう。蒼介の給料ではおいそれとは手を出せない──というか、手を伸ばしても届かない。

「お待たせしました。代表取締役CEOの横幕つとむです」優男──横幕はそう言って、第一印象どおりの柔和な微笑を向けてきた。

 スレッドに書かれていた人物像と百八十度違う、そんな雰囲気だ。けれど蒼介は、横幕の瞳が油断なくこちらを観察しているように感じ、肌にピリピリとした緊張を覚えていた。ネットの掲示板の、この世で最も乱雑な情報によるバイアスだろうか。

「お忙しいところ申し訳ない」堂坂が対応する。もう一度警察手帳を見せて身分を示してから、「今日は早野舞さんの件について、彼女と関わりのあった人に話を聞かせていただきたい。どこか空いている部屋──広くなくても構わないのだが、そういった部屋はあるか?」

「そうですね」横幕はほほえみを崩さないまま答える。「では、応接室にご案内します」

「ああ、頼む」

 横幕に連れられ、応接室に入る。十帖ほどの室内には黒いソファと木の色合いをかしたテーブルが一卓あり、隅には背の高い観葉植物が置かれている。

 こういった場合の事情聴取は一人ずつ行う。ほかの人の供述を聞いた関係者が自分の供述を変えたり、あるいは嘘をついたり、そこまでいかなくとも何らかの先入観を持ってしまったりしないようにするためだ。

 そういうわけで横幕とは二対一で向かい合う。

 蒼介がボイスレコーダーをテーブルに置いてメモ帳とボールペンを取り出すと、

「では、幾つか質問させていただく」と堂坂が始めた。「早野舞がシンガーソングライターの都丸駿平と男女の関係にあったことは把握していたか?」

 VTuberといえども一応はアイドルにカテゴライズされる職業だというのに、恋人がいたという事実にも横幕は動揺を見せない。「それはそれは」と言葉だけで驚いてみせてから、「お恥ずかしながら把握しておりませんでした」と言った。「ただ、弊社の方針としましてはプライベートなことに関しては干渉しないことを原則としておりますので、そういったことをこちらに尋ねられてもお答えしかねるかと思います」早野の男性関係を知らなかったことについては何の落ち度もない、と言っているようにも聞こえる。

「なるほど」堂坂はうなずき、「話は変わるが、御社の元タレントの女性から、『社長から肉体関係を強要された』という話を聞いた──これは事実か?」

 そんな話は聞いていない。つまりは嘘なのだが、横幕の反応、そして人間性を見るためだろう。蒼介の苦手とする手法だ。

 堂坂の眼光は鋭い。

 しかし、横幕は快活に、「ははは」と笑った。「もしかしてネットの噂を真に受けておられるのかな?──ファンの中にはそういう下世話なストーリーを放言する方もいます。VTuberの楽しみ方は自由ですので、SNSなどでいちいち否定したりはしませんが、事実無根ですよ」朗らかに言いきった。

 メモ帳にポールペンを走らせながら蒼介は、片眉を斜めにした。スレ民の肩を持つわけではないが、どうにも曲者くせものくさいおっさんだ、安易に鵜呑うのみにすべきではないだろう、と警戒を緩めない。

「……それは失礼した」堂坂は続いて、「では、早野さんと御社との関係はどうだった? 活動方針に対立などはなかったか?」

 おかしそうに目元にしわを作って横幕は、「刑事さんも大変ですね。あらゆることを疑わなければならないのは疲れるでしょう? おかげで我々一般市民が平和に暮らせるのだから幾ら感謝しても足りないですね」

 挑発とも取れる言葉を堂坂は、

「どういたしまして」と、ちっとも感動的でない口ぶりで感動詞を口にして受け流し、「それで、質問への返答は?」と催促。

「活動方針の対立でしたか、ええ、ありませんよ、基本的には」

「基本的には、とは?」堂坂は聞き返した。

「言葉どおり、まったくないわけではない、という意味ですよ。何しろ、人の需要は目に見えないものですから。特に、我々の業界はファンの心の機微を敏感に察知して、そこを慰撫いぶしてやらないといけません。歴史の浅い、しかも未だ発展途上の、言い換えるとビジネスモデルの確立していない業界でもあります──最適解に関し、ときには対立的な意見が出るのも当然だとは思いませんか?」

「そうだな、それは納得のできる話だ」堂坂は続けて問う。「ところで、昨夜七時半ごろ、あなたはどこで何をしていた?」

「アリバイというやつですね」横幕は滞ることなく口を動かす。「その時間は自宅にいました。残念ながら家族しかそれを証言する人はいないですが」

「自宅の場所は?」

「都内の堵島としま区ですよ。ここからだと車で二十分くらいでしょうか」

 堵島区からだと埼玉の大弥矢駅までは車で三十五分くらいか?──頭の中で地図を広げ、そう推測した。往復一時間強。早野殺害も不可能ではなさそうだ。

「では──」

 その後も堂坂は質問を重ねた。

 横幕からの聴取が終了し、彼が退室すると、堂坂は蒼介に感想を求めた。

胡散うさんくさいおっさんって感じですかね」蒼介はバカ正直に答えた。「けど、何ていうか……」自分の中にある感覚的なものを上手く表現できる言葉を探す。「横幕は自分に利益をもたらす存在を殺したりはしなそうだなって思いました。雫由が前に言ってたんですけど、響華ちゃん──早野舞はVTuberとしてはチャンネル登録者数で日本トップクラスだったんですよ。事務所のエース、つまり稼ぎ頭です。横幕にとって、というより会社にとって彼女を消すことはマイナスにはなってもプラスにはならないと思うんですよね。だから、少なくとも金銭的な意味での動機はないんじゃないですかね」あくまでフィーリングによる意見ですが、と逃げ道を調えておく。

「言いたいことはわかる──有り体に言えば、横幕は損得勘定と理屈で動く人間に見える、ということだろう?」

「ええ、そんな感じです」

「わたしもおおむね同感だよ」

 堂坂はそう言ってから眼鏡を外し──その横顔は、日本人には珍しい完璧なEラインを描いている──眉間を揉んだ。彼女も疲れているのだろう。

 大丈夫ですか、と問おうとして、しかし言いさした。大丈夫だ、としか返ってこない気がしたからだ。それに、言ったところで何ができるわけでもない。

「何だ?」見つめる形になっていたせいで不審がられてしまった。

「いえ、何でもないです──」ええと、次は誰に話を聞きますか? と話を逸らそうとするも、

「お前は本当にごまかすのが下手な男だな」

 と苦笑された。

「へいへい、どうせ俺はわかりやすいやつですよ」

「そうすねるな。別に非難しているわけではない。わたしは嫌いじゃないぞ、そういう男も」

「ふうん」

「少なくとも、横幕のように腹に一物ありそうな信用ならない男よりはずっといい」

「でも、付き合いたくはないんですよね?」

「──さて、そろそろおしゃべりはやめて、次の人を呼ぼうか」

 蒼介は半目になった。「堂坂さんも俺と同レベルじゃないですか」

「それは非常によろしくないな。猛省するよ」

「ついでに隙あらば俺をバカにしてくるとこも反省してください」

「それは難しい」肩をすくめ、「何せ、わたしのルーティンワークなんだ。やらないとどうにも調子が上がらない」

 いじめっ子じゃん! と内心で突っ込みつつも、「……まぁ、いいっすけど。で、次は誰にしますか?」

「そうだな、次は──」

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