桜小路蒼介④
【蒼介の世界のネット関連用語の解説】
●V……VTuber又はその業界の略称
●バチャ
●どるメン……VTuber事務所の〈さいば~きゃんどるず〉に所属するタレントの呼称である〈きゃんどるずメンバー〉の略称
●箱……V業界では、事務所のこと
●どる箱……V業界では、VTuber事務所の〈さいば~きゃんどるず〉のこと
●企業勢……企業又は企業が運営する事務所に所属して活動するVTuberのこと(⇔個人勢)
●転生……V業界では、他の事務所に移籍するなどしてアバター及び設定を一新し、再出発すること
●ツイッター……〈Twitter〉に酷似している短文投稿型SNS〈Twitter of People〉の略称
●病みツイ……ツイッターに投稿された短文(ツイート)のうち、ネガティブな心情などを語ったもの
●
●こぺこ……腹ペコ博士キャラの美少女VTuber〈
●ユニコーン……V業界などでは、推しのタレントに処女性を求めるファンのこと
●ガチ恋勢……推しタレントに本気で恋するファンのこと
▼▼▼
【超絶悲報】天雲響華さんが公開処刑(物理)された件
1:どる箱リスナー@響華さん最推し
未だに信じられないんだが
2:324ちゃんねるからvipがお送りします
バチャ豚は
3:324ちゃんねるからvipがお送りします
信じられないのはみんな同じだ
事実は小説より奇なりっても限度があるわ
4:324ちゃんねるからvipがお送りします
最期の言葉をリアルタイムで聞いた
その時の響華さんの気持ちを思うと涙が止まらない
5:324ちゃんねるからvipがお送りします
最期の最期に出る言葉がリスナーへの感謝ってのが、もうね、マジもんの聖人じゃねぇかよ
何でこんなことに……
6:324ちゃんねるからvipがお送りします
ほかのどるメンも軒並み配信を休むみたいだな
7:どる箱リスナー@響華さん最推し
>>6
おかげで今日の予定が完全に白紙になったよ
8:324ちゃんねるからvipがお送りします
ほかにやることないんか……
9:324ちゃんねるからvipがお送りします
まぁ、これはしゃーない
10:324ちゃんねるからvipがお送りします
夏友ワイ
りんの病みツイを見て、病む
11:324ちゃんねるからvipがお送りします
りんって誰?
聞いたことはあるんだが
12:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>11
夏空りん
さいば~きゃんどるずの三期生で、響華のリア友(中学生時代からの親友)
しかも響華をVに誘った張本人
13:324ちゃんねるからvipがお送りします
うわぁ、えっぐぅ
14:324ちゃんねるからvipがお送りします
りんのツイッター見てきた
ひでぇな、あれ
一部の過激な響華リスナーが悪意あるコメントを送りまくってるよ
15:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>14
「お前がVに誘ったから響華は殺されたんだ!」ってこと?
16:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>15
そう
無茶苦茶だよな
17:324ちゃんねるからvipがお送りします
そいつらに人の心はないんか
18:324ちゃんねるからvipがお送りします
人並みの知能もないんだろうな
Vをやるか否かと被害者になるか否かは関係ないだろうに
19:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>18
それに関しては断言できないんじゃね?
VTuber関連の何かが原因かもしれんし
20:どる箱リスナー@響華さん最推し
>>19
V業界はそんなんじゃない
クソゲーなリアルとは違うんだよ
21:324ちゃんねるからvipがお送りします
うーんこのイッチ
22:324ちゃんねるからvipがお送りします
でもさ、あそこの箱の社長、かなり
23:324ちゃんねるからvipがお送りします
枕営業を強要してるって噂もあるよな
24:324ちゃんねるからvipがお送りします
枕営業のことは知らんが、超合理主義かつ超成果主義の、資本主義の権化みたいな男だってのは有名な話だ
25:324ちゃんねるからvipがお送りします
結果を出してはいるから有能ではあるんだろうけどな
26:324ちゃんねるからvipがお送りします
それはそうだけど、ちょっと活動方針の対立があっただけで、こぺこを首にしたことは今でもまだ許してない
27:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>26
しかも、どんなコネクションがあるのか、ほかの箱に圧力掛けて企業勢として転生できないようにしたんだよな
28:324ちゃんねるからvipがお送りします
気に入らないやつは徹底的に排除したいんだろ
たまにいるよな、そういうやつ
てか、俺の親父がそうだからよくわかるわ
29:324ちゃんねるからvipがお送りします
じゃあ、あれか、もしかしたら響華も社長の
30:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>29
プラス世間の
炎上商法の亜種だな
本来のそれと違って真相が発覚さえしなければ表向きは純粋な被害者のままでいられるから、上手く立ち回れば同情心に浸って悦に
31:324ちゃんねるからvipがお送りします
言葉選びに悪意ありすぎて草
32:324ちゃんねるからvipがお送りします
実際どうなんだろうな
そこまで極端な感じじゃないにしてもライブ配信中に殺すなんて正気の沙汰じゃないし
33:324ちゃんねるからvipがお送りします
配信の時の響華の様子からすると、たぶん犯人は知り合いなんだろうけど、それ以上のことはわからんからなぁ
34:324ちゃんねるからvipがお送りします
そういやさ、響華とマネージャーの不仲説ってなかったっけ?
35:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>34
あったかもしれんが、そんな話どこにでも転がってるから真偽は不明だぞ?
36:324ちゃんねるからvipがお送りします
所詮はネットの情報だしな
……つってもマネージャーが犯人って可能性もあるとは思うが
37:324ちゃんねるからvipがお送りします
人間、距離が近いほど嫌なとこが目につくからね
38:324ちゃんねるからvipがお送りします
そういう意味じゃ、りんも怪しくね?
リア友なんだろ?
39:324ちゃんねるからvipがお送りします
浅ましい承認欲求と
40:324ちゃんねるからvipがお送りします
ちょくちょくひねくれニキいるの草
41:324ちゃんねるからvipがお送りします
(スレ民なんてほとんどそうなんじゃ……)
42:どる箱リスナー@響華さん最推し
お前ら陰謀論とか性悪説とか好きだろ
申し訳ないけど、現実はそんなことないからね
殊に、どる箱はそういう血なまぐさいのとは無縁だよ
43:324ちゃんねるからvipがお送りします
なお、イッチはピュアピュアな模様
44:324ちゃんねるからvipがお送りします
イッチが潔癖なのはわかったけど、実際に人が殺されてるわけで
十分、血なまぐさいわけで
45:324ちゃんねるからvipがお送りします
イッチさ、ガチ恋勢なうえにユニコーンだろ
46:どる箱リスナー@響華さん最推し
>>45
当たり前でしょ
それの何がいけないんだ?
俺は真剣に響華さんを愛してるだけだ
愛する人に清くあってほしいと願うのは普通のことだろ
47:324ちゃんねるからvipがお送りします
シンプルにキモいし、意味わからん
会ったことも本音で話したこともない人間に、何でそこまで重い感情を向けられるんだよ
48:324ちゃんねるからvipがお送りします
このイッチ
「響華さんの処女マンコで筆下ろしする予定だったのに、俺はいったいどうすればいいんだ……」
とか考えてそう
49:どる箱リスナー@響華さん最推し
>>48
よくわかったな
50:324ちゃんねるからvipがお送りします
草wwww
51:324ちゃんねるからvipがお送りします
(天雲響華の中の人って二十六歳だったような……)
52:324ちゃんねるからvipがお送りします
(ところで日本人女性の平均初体験年齢は……)
53:324ちゃんねるからvipがお送りします
(やめてさしあげろ)
54:324ちゃんねるからvipがお送りします
>>49
どうせチャラいイケメン陽キャ彼氏とヤりまくってたに決まってるんだから悩む必要なんてないぞ
55:324ちゃんねるからvipがお送りします
そうそう
イッチの貢いだ金は、彼氏のチンポを優しく包み込むコンドームになったんだよ
よかったね、大好きな響華のアクメに貢献できて
56:324ちゃんねるからvipがお送りします
草
57:324ちゃんねるからvipがお送りします
血も涙もねぇw
▼▼▼
「お前は恋人と食事をする時もそうやってスマホばかりを見ているのか」
険のある堂坂の声が頭にぶつかり、蒼介は顔を上げた。「いやいや、流石にそれはないですよ」というか、と続ける。「堂坂さんは彼女じゃないでしょう?」とはいえ、職場の先輩なのだから礼儀という意味では恋人よりも配慮しなければならない存在ではある。が、あまり気にせずに、「それとも俺の彼女になってくれるんですか?」などと言ってみる。
ふ、と鼻で笑って堂坂は、「悪いな、桜小路とは付き合えない」
「嘘でもいいから照れたりしてくださいよ」
「わたしのそんな顔、見たいか?」
言われて想像してみた。頬を赤らめてはにかむ堂坂千尋(三十三歳)──違和感がすごい。でも、
「怖いもの見たさっていうんですかね、そういう意味では見てみたいっすね」
「なかなか度胸あるな、お前」
蒼介と堂坂はイタリアンファミリーレストランのボックス席にいる。
入店し、適当に注文を済ませた蒼介は、おもむろにスマートフォンを取り出して早野殺害事件に関するスレッドをチェックしはじめた。世間の包み隠さぬ本音を知りたいと思ったのだ。何かのヒントになるかもしれない、という期待もあった。
結果は、便所の落書きにしては悪くないものだった。ファン目線での被疑者を知ることができたからだ。だから蒼介は、
「堂坂さん、これ見てください」
と言って、便所の落書き、もといスレッドを表示させた状態のスマートフォンを向かい側に座る堂坂のほうへ差し出した。
「うん? どうした?」と答えつつスマートフォンを受け取った堂坂は、画面に目を落とした。眼球が小刻みに動き、間もなく彼女は、「ふむ」と理解の声を発した。
「ファンの間では、友人のVTuber、事務所運営会社の社長、マネージャーの三人が怪しいという意見があるみたいなんです」
「そのようだな」
堂坂にスマートフォンを返される。受け取ると、彼女は続きを口にした。「その三人に関してはスレッドのことがなくても捜査はするはずだが、一応、長妻管理官に報告すべきだろうな──まぁ、急ぐ必要まではないと思うがな」
「あんま意味のない情報でしたかね」
「いや、それは蓋を開けてみるまではわからん」励ますでもなく、ただ事実を述べているだけという
と、ここで、
「お待たせいたしました」
ハキハキとした声と共に高校生らしきウェイトレスが、にゅっと現れた。「こちらが──」
すばらしい滑舌と手際を見せつけながら料理を配膳しおえると彼女は、「それではごゆっくりどうぞ。しちゅれ……し、失礼いたしますっ」と最終回ツーアウトツーストライクから逆転を許してしまうがごとき失態を演じ、逃げるように去っていった。
思わず堂坂と顔を見合わせる。どちらともなく笑みを零した。
「あとちょっとでしたね」蒼介は高校球児だったころの苦い記憶を思い出していた。
「ドジっ
え、と蒼介は呆けた。堂坂の口からドジっ娘などというサブカルチャー用語が出てくるとは露ほども思っていなかったのだ。「堂坂さんもドジっ娘とか言うんですね」
「……悪いか」
「いえ、そんなことはないっす」
「……」「……」
食べますか、と蒼介が言うと、
「そうだな」と堂坂はうなずいた。気のせいだろうか、かすかに頬を赤くしているようにも見える。
思ったより違和感ないな──なんて考えながら食事を始めた。
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