言葉は詰まって吐き出してこその美しさだ。

青いバック

分からない

 無性に何かを叫びたくなる時がある。苦しい時、悲しい時、やるせない時。様々だが、言葉にしてそれを吐き出せたならばどんなに楽なのだろう。


 言葉は私と誰かを繋ぎとめてくれる鎖にもなる。私と誰かを遠ざける為のナイフにもなってくれる。


 キツい、寝たい、助けて。やはり、言えないものだろう。人に助けを求めなさい。言葉で言うのは簡単だ。じゃあ、文字では楽なのか、そう問われたら、そうではない。


 文字も言葉なのだから、口に出さないだけで。口に出すから言葉なのではない。人が想いを、気持ちを込めて言うから言葉なのだ。


 空を見上げて何を思う。それを誰に伝えたいと思う。それをどう伝えようと思う。


「私はどうしたいのか」


 どうしたいのか。言葉に出しても明確なイメージは浮かんでこない。


 錆び付いたブランコは黒板を引っ掻くような音を立てて、縦に揺れる。


 貴方はどうしたいの?貴方の未来なのよ。貴方はノロマだから。何故そう言える。私の全てを見たのだろうか。


 いいや、見ちゃいない。一つの面からしか私を見ていないから、そういう言葉が生まれるのだ。人間は色々なものから成り立っている。


 一つではない。何百、何千、何万。分からない程に膨大な数で形成されている。ただ一つの数を見たからといって、知った気にならないで欲しい。


 貴方のためを思って。その気遣いが私の首を絞めている。分からないのだろうか。


「……私は私なのに」


 いっその事、星空のように私を認識してくれないだろうか。星空は数え切れないほどあると分かっているのだから、私もそうだと認識してくれないだろうか。


「もう分からないよ」


 人の言葉に惑わされ、自分を見失ってしまう。望んでいた結果は違う。望まれていた結果とも違う。


 他人の気持ちを分かりたいなど神様にでもなるつもりだろうか。分からないからこそ、美しいのに。分からないからこそ、言葉にして教えるというのに。


 言葉を言葉で抑え込めてしまったら、分かるのも分からない。言葉を使うならば、言葉を持つことも覚悟するべきだ。


 使われ、使い。人間は支え合う生き物なのだから。

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