第8話 朽木の過去(意味のない贖罪)
その後は俺は教会に戻ることは無く、自暴自棄になりながら宛もなく長い期間、彷徨っていた。元々、自分の意志など無くただ教会に従ってきた俺には教会から離れた後の事なんて何も考えていなかった。
だから通り掛けに当時、結成され行動を開始し始めた
「待て。
「俺を知っているのか?」
「あぁ、
「そうか、済まないが俺は成神ぐらいしか付き合いが無かったからお前達のことは知らない」
基本的に俺は直属の上司の成神の命令に従って殺すだけの装置だった。そこに余計な情報や感情はお荷物でしかなかった。他人のことなんて興味すら無かった。
「助けてもらった身としてお願いするのは恐縮なのだが、君も
「俺のことを知っているのだろう。だったら俺がろくなヤツじゃないって解るだろう。それに勘違いされては困る。単純に教会に個人的に恨みがあっただけだ。貴方達を助けようとはなどとは思ってはいない」
教会の元猟犬を勧誘するとはどうかしている。俺を恨んでるヤツもいるだろう。そんな連中と上手くいくはずがない。それに教会に恨みはあるが本気でどうにかする気も無い。
「僕達も君と同じく胸を張れた立場ではないさ。なにせさっきも言った通り元教会の人間達だ。後ろめがたい事は僕も多いさ。それ以上に今は絶望的に戦力が足りない。君が仲間に加わってくれるなら心強い」
「それはそっちの都合だろう。俺には関係ない。正直、世界がどうなろうとどうでもいい」
「その根幹に浅斗君がいるとしてもか?君はまた逃げるのかい?」
「なんだと?教会はアイツをどうする気だ」
「浅斗君は今だに昏睡状態らしい。身体のダメージよりも精神の問題とも言われているらしい」
「精神のダメージか。アイツも教会に色々と負担をかけられていなからな。元の性格もあって壊れてもおかしくない。なによりも親しくしていた俺に殺意を向けられたのはショックだっただろう」
浅斗に関しては思うところはある。教会の計略とはいえ、アイツを追い込んだのは間違い無く自分だ。
「教会はその浅斗君の精神を無理やりにでも呼び戻そうとしているらしい」
「それだけの価値が浅斗にあるのか。お前はアイツが何なのか知っているのか?神格クラスでさえ軽く凌駕するおぞましい力。アレはなんなんだ?」
前から思っていた疑問をぶつける。アレは自分以上に有ってはならない存在だ。
「君を含め適合者に与えられた力はかつて宇宙に存在していた人知を超える力をもった生物達、いわゆる神話生物を元にしたものだということは君も知っていただろう。アレはその神話生物達の始祖とも言える者の力だ」
「神話生物の始祖だと。そんなのは人の手にあまる」
神格クラスでない下級種の力でも人の器に収めるのは難しい。神格クラスのまともな適合者など奇跡だ。それをも凌駕する力を教会は今まで追い求め続けていたのか。
「白痴にしておぞましい神々の総帥、その名をアザトース。あれこそ教会が長年に渡って作り上げた世界を作り変える装置だ。次に浅斗君が目を覚ました時、精神状態によっては今の世界は完全に消滅する」
「それは浅斗の意思に関係なくか?」
「そうだなぁ。精神が錯乱していれば本人の意思とは関係無しにまた力が暴走する可能性もある。仮に浅斗君が奇跡的に精神が落ち着いた状態で目覚め、なおかつ本人の意思で世界の作り変えを拒んだとしても、成神達はなんならかの方法で無理やりソレを実行させるだろう」
「解った。
「何だい。言って見てくれ」
「浅斗は俺に殺させろ」
「必ずとは約束はできない。彼は今やもっとも優先度が高い標的だ。殺れるチャンスがあれば君を待たずに殺らなければならない」
「そこはわきまえる。殺れる可能性がある任務を優先的にまわしてくれるぐらいでいい」
「それはこちらとしても願ったり叶ったりだが、良いのかい?君は彼を助けたいのかと思っていたのだが」
「俺は浅斗を救えない。終わらせるだけだ」
世界が終わろうと関係無いが俺はこの物語から逃げるわけにはいかない。そこに説明できる程の明確な理由ないが、そうしなければ俺の気が済まないのだ。浅斗からして見れば迷惑な話だろう。だが俺が浅斗を救おうとすることも浅斗は望まないだろう。本当にただ自分のエゴだけの為に俺は
その後に
それでもなぜか止めるわけにはいかないのだと思ってしまう。
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