第44話 束の間の気晴らし

2022年5月30日


 LINEで力さんをデートに誘ってみると、トントン拍子で話が進み、6月4日の土曜日に朝からデートをする事になった。誕生日が近かった事もあって、ランチの予約までしてくれて、すっかりその気になっている様子。誘惑するまでもなく、上手くいった事に少し戸惑いがあった。その気にさせるのは目的の1つではあった。でも騙している事に変わりはない。こんな簡単に上手くいっていいのだろうか。罪悪感がない訳ではない。しかし簡単に乗ってくる力さんに対しても、誠実になる必要なんてないんじゃないかと思った。


 5月30日、私は友人と滋賀に日帰りで出掛ける予定があった。この友人には彼の事をよく話していたので、私は事の経緯を話したくてうずうずしていた。早朝彼からのLINE。

「おはよ。」

「おはよ。滋賀県行ってくる。」

「何しに?」

「びわ湖バレイと神社。」

「1人で?」

「友達と。」

「因みに。。女友達?」

「そだよ。ヤキモチ?」

「うん。良かった、女友達で。」

「男の方がいいんちゃうの?」

「うん。でもその時は逐一報告してもらわんとソワソワしてまう。」

 面倒臭い奴。

「逐一報告するの大変やから、女友達にしとくわ。」

「しとくって何?ホントは男と?報告するっても下心ある行動されたらでいいよ。」

「はいはい。」

「軽。。1人なら帰りに会えたかもね。」

「帰りは夜になるから無理やん。」

 こんな色気のない会話中に彼はオナニーをしていたのか、突然精液の画像を送ってきた。

「濃い。。」

「次会うまでオナ禁しよかな。。」

「多分勝手に出てくるんちゃう。」

「うん。。昨日もヤキモチ妬いてたらズボンの擦れで射精したもん。」

「ズボン汚れた?」

「シミになった。」

「やらしいなあ。」

「乾いたら白い糊みたいになった。カメラマンとその後ラインしてる?」

「うん。」

「内容は?聞いてもいい?」

 内緒にしたら怒るくせに。

「フラッシュの影が気になったなぁ。とか、写真撮影のスイッチ入ってきたよ。とか、写真撮るからね。とか。」

「やらしい衣装で撮るんやろ?それで入れさせんやろ?」

 朝っぱらから止めたい会話が続く。

「これを着る。」

 私は彼に当日着る予定の衣装の写真を送った。全身網タイツであの部分に穴が開いている物と、コルセットにガードルの写真だ。

「他にもある?」

「うーん。2パターンぐらい。」

「オ○コ開いてる方がいいなぁ。」

「これも開いてる。」

「着て見せて。」

「今?今は無理よ。」

「開いた所から入れさせる?」

「どうかなあ。。これで入れてみて、途中で全部脱ごうかなあ。」

「2発目で全裸じゃない?唾のむ?キスする?精液口に出していい?って言われたら?」

 またエスカレートしていく妄想話。

「飲んで、持って帰れなくなってもいいの?」

 しつこいんだよ。同じ事ばっかり聞くなよ。

「精液入りコンドームは1個あればいい。」

「2回するかわからんやん。同じ事聞かないでよ、何回も。」

「わかった。ゴムの中で射精してもらって。。 フェラチオする?」

「したらいいの?」

「セックスでフェラチオするの普通やない?」

 じゃあ聞くな。自分が興奮したいから聞いているだけか。

「いく前にするわ。」

「勃起した。乳首も吸わせるやろ?オ○コも舐めたいゆーたら舐めさせる?」

「オナニーしたいから、聞いてるやろ?私今から出掛けるから。」

「うん。もうオナしてる。ごめんね、また夜にね。」

 私のおかず感も半端ないな。


 朝から京都経由で滋賀県を目指す。滋賀は近場の観光地であり、日帰りで楽しめる距離だと思っていたが、電車やバスの本数も多くなく、観光地までは距離もあり、タクシーも見つからず、かなり歩く旅となった。多少の疲れは出たが、友人に沢山話を聴いてもらう事もでき、スッキリした気持ちで帰宅する事ができた。友人も私の奇妙な彼氏の話を聴くのが好きらしく、バカにしたり笑ったり一緒に考えてくれたり、怒ってくれたり、少々忙しかったが、素直に面白がってくれたので良かったと思った。だから私も話を聴いて貰いやすい。考えてみれば彼と出会ってから怒涛の毎日だったと思う。私の気持ちは支配され続けてきた。この後どうなっていくのか、不安がない訳ではない。自分の気持ちにも従っていきたい。


帰って落ち着いた頃、LINEを見た私は、彼から既にメッセージが来ている事に再度疲れを感じた。束の間の気晴らしだった事に間違いはなかった。


「お疲れ様。楽しめた?」

「うん。気晴らしになったよ。」

「そか。良かった。ね、朝の続き。カメラマンにオ○コ舐めさせる?」

「舐めさせる。顔騎もする。」

「やらし。こんなやらしい会話はカメラマンとせんの?」

「して欲しいやろ?それ送ってもらってヤキモチでまたオナニーするんやろ。」

「うん。。」

「早くしたいって送った。」

「セックスを?撮影を?」

「セックスに決まってるやん。」

「カメラマンからはやらしいラインこない?」

「こないから、こっちから送った。付き合ってもいいんやんね?」

「付き合うの?」

「二股してって言ってたやん。」

「付き合ってて言われたん?」

「言われてない。」

「付き合ってって言われたら付き合うのね?」

「どうしたらいい?」

「駄目‥。あくまでも写真取ってくれたお礼としてさせてあげたってこと。」

「わかった。1度きり?」

「このまえ裸見せた時もセックスしたいって言われたんやろ?なら何回かはありかな。。。」

 言うことがコロコロ変わるから、真面目に話を聞いても仕方ない事はわかってる。その時の気分で、そんなつもりじゃなかったと言われそうな勢いだ。

「セフレになれって事?」

「違う。数回だけしたことある友人。」

 何それ。

「日本語なだけやん。」

「じゃあ、1度だけ。」

 決め事が細か過ぎて笑えてきた。どうせまた変わるのに。

「おもしろすぎるw」

「?」

「セフレはあかんの?」

「いいよ。ならセフレ。」

「何でもいいんやん。。」

「セフレ嫌や言ってたし。」

「セックスが良ければそうする。」

「やらし。」

「その方がいいんやろ?」

「そのうちハメ撮りもしてくれるかもね。返事来た?」

「付き合おっか?ってきてるよ。セフレで。とは言えんからどうしよ。」

「セックスは写真撮ってもらうお礼やから。付き合うかはそれから決めるって。言って。」

「わかった。」

 送ったふりだけして、返事がすぐに返ってきた体で話を進める。

「ヌードだけじゃなくて、他のも撮りたいって。」

「そか。それは友達としてええんやない?」

「わかった。」

「付き合うんは、なしね。Rさんは僕だけのものにしときたい。心は取られたくない。」

「デートして、写真撮って、会って、セックスしてって、あなたよりも会うことなりそう。。」

「そやね。。で、そのうちカメラマンが本命になって僕は捨てられるんやろね。」

「そうなるように仕向けてる?」

「それは嫌やから怖いってゆーてるやん。」

「どうなるんかなー?」

「僕が捨てられて終わり。」

「けど考えても仕方ないしね。あなたが飽きて、私をポイ捨てもあり得るし。考えるの止めとこ。」


 彼の事をポイ捨てできたらどんなにいいか。別れても後悔させてやりたい。それにはどうすればいいのか。

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