第39話 偽りの長い1日①

2022年5月28日


 運命?の当日になり、それでも朝から彼のしつこいLINEが続いていた。

「おはよーさん。」

「おはよ。」

「ええ天気になったね。」

「暑いぐらい。」

「今日何時から?」

「11時。」

「もし、お願いやからさせてって言われたら?」

「しません。」

 幾度となく、同じ会話が繰り広げられる。カメラマンとのセックスが実現しないと、きっとずっとこんな会話が続くんだろう。とっくにうんざりしていたが、まだ話を合わせる私。神対応過ぎる。

「本番の日は?裸なっててレイプされても文句言われへんで?」

「しない。」

「こっちがする気なくても。。無理矢理レイプされるやん。。」

「無理矢理するような人やったら今までにやってるよ。今度ハプバー行ってやってきます。」

「ハプバー行ってきたって言われても見られへんからわからんやん。」

「ハプバーなら後腐れないし。撮ってくれるんちゃうかな、誰か。」

「変なこと言うみたいやけど。。。今日してほしい。。。」

「したらこのままでは終わらんよ?」

「ちゃんと報告してくれたらいい。」

「付き合う事になったら?二股なるのオッケーなん?」

「僕は既にRさんを裏切ってるから。僕の事も裏切って。二股かけて。」

 既婚である上に、浮気までして、更に自分の欲望の為に他の人に寝とらせる。そうして欲しいくせに裏切っていいと懺悔するフリをして目的を果たそうとする。

「ごめんけど、好きな人やないから、無理。別の人探すから、待って。」

「好きな相手としたら逆に嫌やわ。」

「二股ってそういう事やんね?どっちにも感情があるから二股になるんやと思ってたけど?」

 まあ。。そういう場合ではない事もあるんだろうけど、彼の思惑通りにいかせるのは嫌だから、脅しをかけたつもりだった。彼の言ってる事は二転三転するし、私の気持ちなんてお構い無しに話を進めてくる。

「その人とは割り切って出来ひんから?」

「セックスして私が楽しいと思えないと、やきもち妬かないやろ?」

「そもそも。。裸体の写真撮らせる段階で流れでセックスは楽しんでくるって思ってた。」

「何度も違うって言ってるやん。楽しい、したい人としないと、やきもち妬いてくれないんやし。」

 私の性格だと、楽しくセックスできて、気持ちが入ってしまう相手がいるなら、彼には内緒にするだろう。でも、私には最初から無理なのだ。昔から好きな人はひとりだけ。もし好きな人がいたとしたら、彼に対する気持ちは冷めている。

「割り切ったセックスなら言いよって言ってみたら?」

「私が楽しめないって言ってるのがわからんの?この人は面倒だからむり。別の人探す。」

「わかった。。。。じゃあ1つ提案していい?」

「なに?」

「明日少しだけ全裸撮ってもらって。下心ある男がRさんの裸を撮影してるヤキモチで溺れたい。」

「んー。わかった。」

「全裸よ。上も下も。股ひらいて撮られて。。。それを僕に見せつけて。」

「股は開かないよ。主旨変わってるやん。」

「そか。。でもオ○コは見せるやろ?」

「しらん。見えたとして、そんなとこ撮る?おかしいやん。」

「全裸ってそーゆーことやん。僕ならオ○コ見てしまうわ。」

「ヌード写真集でそんなん見たことないわ。AVとちゃうねんけど。。」

「そうなんか。。でも裸撮らせてね。」

「自分の病気の姿記録しときたいだけやのに、

自分のAVなんか見たくないやん。」

「うん。わかった。なんか。。。ごめん。。なんかもうとうでもよくなってきた。。。もうわからん。。沈んできた。もういいや。」

 彼が突然憂鬱になった。おそらく、自分勝手な発言と後悔、罪悪感、思い通りにならない怒り、無理難題を発する疲れからくるものだろう。こうなるなら、言わなければいいのに。

「うん。色々考えちゃうよね。大丈夫だよ。その時その時で思ってること言ってね。何でも話してくれて嬉しいから。だいすきよ。」

 私ってバカだ。なんて優しいんだろう。

「なんかもうわからん。呼吸の仕方のなんかわからんくて変。ちょっと落ちとく。」

「うん。ゆっくり休んで。考えなくていいから。」


 少しの間、彼から返事は来なかったが、すぐに回復したのだろう、続けてLINEが入ってきた。今日の事が気になって仕方ないのだと思う。彼は悶々しながら、思い通りにいかずにイライラもしているんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る