第34話 爆弾投入
2022年5月12日
5月半ばになり、そろそろ梅雨の時期に差し掛かろうとする頃、彼と会う日が決まった。19日の木曜日、寄りを戻して2週間。彼のお店にランチしに行くことになったのだ。彼がお店を休んでくれるのは土曜日だけなので、28日の土曜日にはデートの約束もした。
そして今日も雨。気圧の関係で雨の日はいつもより体調不良となり苦しむ彼を昨年も見てきた。ああ、またこの季節か。気圧に左右されなくとも毎日雨が続くと気分が落ち込んでくる事もある。
「これからキツくなるの嫌やなぁ。」
「乗り越えていこ。」
「頭痛い。。」
「気圧だね。頭痛薬飲んで。」
「店が暇やったら準備中にしてする?」
「うん。」
「でも28日にすればいいか。」
「我慢できる?」
「今は体調酷くてそれどころやないから。」
「わかった。」
「ごめんね。」
彼から誘ってきたのに、少し拍子抜け。それに寄りを戻して初めて会うのにこの態度。余程しんどいんだろう。気分に左右されてはいるが私の事を考えて言ってくれたのかもしれない。
「私のこと考えて、する?って聞いてくれたん?しんどいのにありがとね。」
「体調悪くてごめんね。」
「謝らなくていいから、休んで。」
「うん、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
2022年5月13日
「おはよ。頭痛薬効いた?」
「おはよ。眠剤で寝たよ。」
「今日も頭痛い?」
「少しましかな?なんでやろ?」
「なら良かった!じゃあ今日も送ってね!」
今日も顔の写メを送って欲しかったのに性器の写メを送ってくる彼。
「吸って欲しい。」
「うん、吸いたい。今日もゆっくりしてね。」
「うん。ありがと。」
2022年5月14日
彼と出会ってから、彼の体調は一向に良くなる気配はなかった。私の病気はというと、今のところ落ち着いていて、4月の1年検診でも異常なく、無事に過ごせていた。そんなある日昔からの知り合いで趣味で写真を撮っている友人と連絡を取る機会があり、病気記念として写真を撮って貰おうと思い立った。勿論彼にヤキモチを妬かせたい目的もあった。だってヌードなのだから。。久しぶりの爆弾投入である。
「おはよ。」
「おはよ。」
「いってらっしゃい。」
「うん。あのね、知り合いがヌード撮りたいって言ってはるんやけど、撮って貰ってもいい?」
本当は私から友人に頼んだのだが、ここからは彼に都合のいいように脚色する。
「男?」
「うん。」
「どこで?ホテルならセックスするやろ?」
やっぱり食い付いてきた。
「セックスはしないよ。」
彼は彼女が男性と会えばセックスすると思い込んでいる。これは今迄浮気され続けてきたからなのか?でも彼の奥さんは真面目なタイプ。普通の人だと言っていたし、見た目は普通以下で、浮気するタイプにも到底見えない。
「ホテルで?」
「家かな。」
また尋問のような問いが始まった。でもこの尋問で彼はヤキモチを妬き、興奮し、ドキドキワクワクしているのだと思う。
「相手の家?どうゆう関係なん?」
「昔バイトしてた時のお客さん。10年ぐらい前もヌード撮りたい言われてたけど、その時はそこまで興味なかった。でも今は病気の体、ありのままに撮って欲しくなって。」
「いつ?」
「撮って貰ってもいい?」
「僕に何か言う権利ないよ。。でも撮ったらすぐに僕に見せて欲しい。」
「うん。いいなら撮って貰うね。もちろん見せるよ。」
「セックスしたい言われたら?」
「セックスして欲しいなら、誘惑してみるわ。」
「わざわざ誘惑せんでいいけど、性器も見せるんやろ?」
「性器は見せないよ。エロじゃない、病気の体を綺麗に撮って欲しいだけ。」
「絶対セックスになりそう。。いつ?」
「まだ決めてない。おやすみなさい。」
彼はしつこい。話が長くなるとうんざりしてくるので、寝る事にした。
2022年5月15日
「おはよ。」
「おはよ。」
「日にち決まったらおしえて。したいならしておいで。」
まだ言ってる。
「わかったよ。」
「その人としたことはあるん?」
「ないよ。」
「したいって言われたら?」
「やきもち妬く?」
「そら妬く。。」
「じゃあ楽しんでくるよ。」
「するって事?むこうはやりたいゆーてるん?」
「そんな話全くしてないよ。」
あなたがやきもちを妬きたいのに協力してこっちも楽しもうとしているのがどうしても伝わらない。彼は自分の中の常識をどうしても変えられないようだ。
「相手の意図がわからん。。」
意図なんてないのがわからないのか。
「基本は写真が撮りたいだけ。20代の時と、妊婦の時も言われたな。」
「そうなんや。付き合い長いんやね。」
「そやね。私のこと何でも知ってるわ。」
「その人とは付き合えないの?」
「なんで?」
「いや。以前、そんな話ならんかったの?ってこと。」
「好きになられた事はあるよ。」
そう言えばそんな事もあったのを思い出す。
「ほら。」
だからと言って何が、ほら。なんだ。
「長い付き合いだからって、好きって感情あるかといえばそうじゃないし。。付き合い短くても、好きな人と一緒にいたいし。それっておかしい?」
それに対する彼の返事はなかった。付き合いが長いと言われてそれが何なんだと思った。彼と奥さんの付き合いはかなり長い。だから奥さんには勝てない。彼の言葉から、そう言われているような気持ちになり、奥さんに嫉妬した。
「写真撮ってもいいって返事した?」
「ううん、まだ。撮ってもいいって返事しとくね。」
「うん。」
「賛成してくれてありがとね。」
「写真撮って貰いたいだけなんやね。」
「汚くて自信のない身体を綺麗に撮ってもらいだけよ。」
「綺麗よ。」
「ありがと。」
「好きな人の前ではいつまでも綺麗でいたい。太らない努力ぐらいしかできないけどね。」
また、奥さんに対する嫌み。
「気持ちとかモチベーション大事やね。」
「そう、だから感謝してるよ。」
「綺麗にとってもらいよ。」
「はい、ちゃんと見てね。」
「もし、セックスしたらそれもちゃんと撮ってもらってきてね。」
まだ言ってる。
「わかったよ。」
「返事はきたの?」
「うん、テンション上がってた。」
説明しておくと、これは全部盛り上げる為の嘘だ。写真を撮ってもらうのは本当だが、私から頼んだ事なのだから。
「やらし。。セックスもするん?」
「しつこいっ!おやすみなさい。」
「しつこわ、そら。撮影の日決まったら教えてね。」
本当にしつこいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます