第32話 彼との日常

 以前付き合っていた時から、彼はマメにLINEをくれた。体調が悪い時はくれないので私からはあまり連絡できなかった。彼がいつ体調が良いのか悪いのか判断はできない。私から送っても返事がその日に来ない事が何度かあったので送りにくくなってしまったのだ。それでも2日以内には返事が返ってきた。彼は朝起きてゆっくりめに職場へ向かう。家から自転車ですぐなのだから、10時過ぎに家を出ているんだろう。奥さんのお店は朝食からやっているので、彼が2階でゴロゴロしている時間、奥さんの方は朝からせっせと働いているのが想像できる。奥さんはお店を閉めてからも店で出すケーキ等を焼いている。日曜日は休みなので彼からのLINEの数は格段に減った。奥さんと一緒にいるから送りにくいんだろうと思う。それでもおはようや、ちょっとした内容のLINEなどは送ってくれた。鬱病にしてはマメな方だと思っている。話は相変わらず下ネタや、ヤキモチを妬かせて欲しい的な内容が多い。また、彼とそんな日常を過ごしていく事を決めた私。


2022年5月7日


「おはよ。」

「おはよ。今日休みで宇治に行ってくる~。新茶飲んでくるわ。」

「天気良くていいね。デート?」

「うん。」

「そか。ゆーてた、彼と?」

「違うよ。」

「新しい人ね。」

「小さい女の子と。」

「ああ、お子さんと?」

「うん。」

 いや、本当は男友達と散歩がてら出掛ける予定なのだが、彼に言うとLINEのやり取りが長くなるし、面倒なので娘と行くと誤魔化した。体の関係もない友達を男だからと言ってヤキモチを妬かれるのが普通に面倒だった。

「デートて。」

「ヤキモチ妬く?」

「妬けへんよ。」

「さっきは、ちょっと妬いた?」

「妬いた。」

 ほら、面倒臭い。


2022年5月8日


「おはよ。」

「おはよ。セックスしたいね。」

「うん。」

「Rさんもセックス好きよね。」

「イクのが好きなだけ。」

「でも僕とのセックスではまだ一度もイカせてあげれてないよね。。」

 多分、彼とのセックスでイク事は一生ない。彼は病気のせいで完全に勃起しないし、スタミナもないし、女性を気持ち良くさせるセックスではなく、どちらかというと自分本意のセックスだからだ。

「愛してる人とするセックスは気持ち良いよ。だからあなたとのセックスは最高に気持ち良かった。」

 これは本当の事だ。どんなにあれが元気でなくても、好きな人とのセックスは気持ち良い。女は相手の事を好きな気持ちで身体が満たされるのだと思う。

「うれしい。。」

「あのね、凄くセクシーだと思ってた。エロいし。だから、自分も磨こうって思えるよ。できるだけ綺麗でいたいと。。」

 私は彼の顔が好きだ。ドタイプに値する。それにセクシーにも見えた。だから私も恥ずかしくないように自分を磨きたいと思っていた。彼は私を見てオナニーするのが好きだから、顔なんて見てないかもしれないけど、出来る限りは綺麗でいたい。これは少し嫌味も含んでいるのだ。彼と一緒にいながら、綺麗でいる努力をしない奥さんへの当て付け。彼は気付いていないだろうけど。

「照れるわ。。」

「嬉しいこと言われるとテンション上がらん?」

「照れるよ。自分に自信ないから信じられへんし。。Rさんも魅力的でセクシーよ。」

「自信がないんや。信じられへん。」

「なんでやねん。」

「彼女3人ぐらいおってもおかしくない。私のとこにも戻ってきてくれた。不思議。あんな避けられてたのに。」

 自信がない人が、彼女がいるのに更に彼女を探したりするものか。。彼が魅力的なのは本当の事だ。LINEは下ネタばかりだけど、会えばそれなりに話も弾む。モテる要素は持っているし、顔も悪くない。だから、彼女がたくさんいてもおかしくない。2度目に付き合ったせいか、既婚者だと知ったせいか、他にも女性がいてもいいような、仕方ないような気持ちになっていた。私おかしくなってるのかな。

「不思議かな?避けてたんやなくて申し訳なくて逃げてた。」

「そっか。。あ、もうこんな時間。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

 申し訳なくて逃げてた?嘘でしょう。嘘には付き合っていられない。


2022年5月9日


「おはよ。天気悪いね。」

「うん。ちょい寒やね。」

「イクとこ見たい。」

 彼はいつも突然こんな感じ。

「え?見たいの?そっちが送ってよ。」

「うん。」

 彼はお店にいる時にお客さんがいなければすぐに射精して見せてくる。

「じゃあRさんもオナニーしてるとこ見せてよ。」

「生理きたから。ごめんねw」

「ずるっ!」

「へへw」

「じゃあ、おっぱい見たい。吸いたい。」

「会社やねん。」

「じゃあトイレで。」

「いやいや、無理よ。今月私誕生日だからワガママ言わせてね。今日は無理。」

「そうやったっけ。ごめん。すっかり忘れてるわ。」

「言ったことないよ。」

「聞いてないがそもそも悪いわ。。」

 そうやね。期待はしてない。彼が気にしているのは私の誕生日ではなく、私の性器だ。

「いいよ、自分責めなくて。」

「何かするからね。ペロペロさせて。」

「会ったら好きにしていいよ。生理痛酷いから寝るね。」

「うん。バファリン飲んでね。おやすみ。」

「おやすみなさい。」

 おねだりに付き合っているとどんどんエスカレートする。こういう時は仮病に限る。

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