第30話 復縁へ
2022年5月5日
次の日、彼からLINEが始まって、1日かけて少しずつ長くやり取りが続いた。
「僕ら会わんほうが良いかもね。セックスしてしまう。。」
彼は、「それでも会いたい」と言って欲しくてこんな事を言うのだろうか。私はセックスが悪い事だと思わない。セックスしても構わない。だから、それを理由に会わないのがわからない。でも、彼がそれを本当に望んでいないなら会わない方がいいのかもしれない。
「外でお茶しよ。。」
「そのままホテル引き摺りこむから無理やわ。。」
本当はそんな事できないくせに。。やっぱり私を試している。「それでもいい」と言って欲しいんだ。そう言ってくれるのを待っている。
「性欲ってどんどん、たまるもん。Rさんと出会う前も2年してなかったから、溜まりだすと怖いの自分でもわかってるから。」
「そやね。別れた元カノとしたら後悔しちゃうね。しんどいって言われるのは私も辛いし。」
私は駆け引きが嫌いだが、彼にとことん合わせる事にした。
「いや。Rさんに申し訳なくて後悔するとおもうねん。」
「結局後悔するならね~。しんどいのに色々考えさせてごめんね!考えるの止めて明るくいこう!」
「うん。。今日も町中ウロウロして過ごすわ。」
「今日も晴れてるしね。毎日気分は変わるもんだから。今はそれに従って生きてけばいいと思う。あまり考え過ぎず、気の向くままに。。いつでも話聴くからね!」
「ありがと。今日仕事?」
「うん。仕事。ゴールデンウィークとか、こういう休みが長い時はしんどくなる人が多いから。」
「そうなんやね。」
「受容、共感、自己一致の気持ちでね。慈悲深い人になりたい。」
これは私のモットーだ。本当は慈悲深い人間になりたい。しかし実際はどうだろう。私も彼の秘密を知っていながらそれを隠し、彼がこれからどうするのか観察しているのだ。これは慈悲深いとは言えない。
「だからこんなクズみたいな僕にもライン続けてくれるんやね。」
「そんなこと。。クズと思ったことないよ。
私を助けてくれた人。感謝しかない。。」
「でもクズやわ。」
「自分を責めないの。いちばんの自分の味方は自分。」
「クズだよ。今もセックスしたくて仕方ない。。Rさんが友達とセックスしそうやったん聞いて、うずいてさ。。セックスしたくなってる。。クズやろ?」
「クズというより。。普通。。」
「普通?ヤキモチやいてヤリたくなるのが?」
「ヤキモチなんかなぁ。。セックスって単語で思い出すきっかけになったかもしれないけど。」
「ヤキモチだよ。もしセックスしてて、付き合ってたなら諦めもついたやろうけど。。キスはした?」
「別れてもヤキモチやくんや。。」
「うん。そら好きやもん。」
「よくわからない。じゃあなんで別れるの?」
「僕が裏切ったから。けじめ。ねぇ、キスした?」
それは違う。嘘。私を裏切ってしまったから離れたんじゃない。逃げただけだ。
「してない。されそうにはなったけど。外やったし。」
「下心ある友人か。。」
彼はヤキモチでうずいているのか必死に質問してくる。私は更に煽った。
「あるかもね。フラれて弱くなってるとこつけ込まれたね。」
「あるからセックスしよ言われたんやん。余計にヤキモチやくわ。」
「皆やりたいんよね。。」
「そやね。僕もセックス依存症かも。Rさんも僕と別れてから誰かとした?元彼も会いたそうにしてたやん。」
「うん、ごはん食べに行ったよ。」
「そうなんや。。したよね?」
彼は尋問のように問い詰めるのを止めない。
「してないよ。」
「うそ。。」
「本当。実はまだ家に元カレ服置いたままやって。。会うついでに返した。」
「されそうならんかったん?」
「戻りたいって。」
「で。。どうしたん?」
「うーん。。って苦い顔した。」
「そうなんや。仮に僕が戻ろうって言ったら?」
「何に戻るん?」
「え?」
「彼女はあかんかった。」
「Rさんはどうなりたい?」
「愛人。。とか?」私は少し彼を試したくなった。
「愛人?それはどうゆう定義?」
「さぁ。憧れかな。」
「憧れやなくて。定義よ。付き合ってるわけでもなくセックスもするし愛情もあるってこと?」
そんな事どうでもいい。
「付き合ってる。セックスもある。愛情もある。」
「ん?彼女との違いは?」
「強い絆。簡単には崩れなさそうなイメージ。
奥さんいても、ズルい場所におさまってる感じ。お金はいらないけどね。」
自分で打ちながら笑いそうになった。彼と強い絆でいられる訳がない。偽りの関係に過ぎない。
「Rさんも旦那さんいてってこと?」
「愛人にはいない。」
「僕に奥さんおってもいいってこと?」
だっているじゃない。
「ああ、奥さんいないと愛人って言わないもんね?」
「将来的にってことね?」
将来的にじゃない、現時点であなたには奥さんがいる。
「どういう意味?」
「将来的お互い結婚しても関係は続くってことやろ?」
普通に付き合っている人たちの会話はこんな事にはならない。将来的にずっと付き合っていたらその2人が一緒になる。付き合ってる状態でお互いに付き合う人ができてお互い結婚して、2人の関係は続くとかありえない。狂ってる。彼は自分が歪んだ事を言っているのに気付いていないのか?バカなのか?疑われている事に全く気付いていないのか?
「結婚しないよ私は。愛人だったら。」
「でもRさんとは末永くずっといてたいな。」
話をそらしてきた。やはり少し疑われていると感じてはいるのだろうか。それでも隠そうとするんだ。もしバレているなら言われると思っているんだろう。でも私は言わない。
「そやね。末長くいれたらいいね。」
「うん。。」
「未来なんてわからんし。相手に奥さんや彼女がいても、別れるかもやし、相手死ぬかもやし、本人が死ぬかもやし。」
「そやね。トライしてみる?愛人っぽい感じ。」
「うん。いいかもね。」
「僕は。。寄り添っててほしい。」
「うん。心の拠り所にしてくれたらいい。」
最後はパッとしない感じではあったが、こうして私たちは寄りを戻した。復縁したのである。別れてから2ヵ月半が経過していた。もっと感動するものだと思っていたが、戻る事ができた優越感からくるものかもしれないが、タイミングが合えば意外と簡単に戻れるものなんだと、少し拍子抜けした感覚と、手に入れば一気に気持ちが冷めていく感じに捕らわれた。でも彼の事は好きだった。会いたい気持ちもある。復縁できて良かったと感じてはいた。
「会ってくれる?」
「お茶する?」
「どうしよう。。。会うとおかしてまう。」
「抱いてくれるん?」
「もちろんやん。」
「セフレやと思わんといてね。」
「もちろんやん。。」
「ほぼ彼女やで、いいの?」
「そっちこそいいの?」
「大丈夫。」
「次会うまでオナ禁するわ。いつ会える?」
「7はあかんの?」
前に奥さんのお店が休みを予告していた日だ。
「う~ん、空いてない。」
やっぱりダメか。。
「今おかんが糖尿で通院してて今週末と、来週いくねん。21の土曜日は?」
「うん。空いてないからまた言うね。」
今度は私が断った。その日は仕事だ。
「うん、どこいく?」
「考えとくね。」
「前言ってた、河原町かな?」
「言ってたっけ?」
「うん。最後蹴上で湯豆腐やった時、その帰りに、次は河原町のホテル行こうって。」
「どこのラブホ行くかの話?」
彼はセックスがしたくてたまらないようだ。
「そう。」
「どこのホテルでもいい。」
「河原町なら行ってみたいカフェがある。」
私はホテルの話を少しそらした。
「どこ?」
「前に言ってた高瀬川のとこにあるやつかな?」
「変わった雰囲気だから行ってみたい。」
「凄い純喫茶のとこやね?じゃあそこ行こ。」
「うん。行こう。」
「じゃあ、そのあとラブホ行く?」
またホテルの話に戻った。
「うん。」
「そのほうがリラックスして話せるかもね。久しぶりやし。」
彼は久しぶりに会うことに少し緊張を感じているようだった。
「そうやね。じゃあ、おやすみなさい。」
「うん。おやすみ。」
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