第22話 独身ダミーの勝利!?
2022年3月30日
1週間かけてゆっくり近づいてきた彼と独身ダミーとの距離感。その関わりも終わりに近づいていた。
「お茶ですか?是非。
ただ、医療従事者なので制限がまだあって、もう少し落ち着いた時にお願いしたいです。」
「もちろん急ぎませんよ。
それまでにLINEとかいけてたら写真とか交換しましょうね。」
「LINEは会ったときに直接交換したい派なんです。
写真はOKですよ。」
先生の指示で、写真はどこかから拝借する事になった。インスタ等から、自然にそれっぽい写真を探し、持ってくるのだ。何かの切り取りとかではなく、同じような職種の人のプライベートから探し出した1枚は1発でOKをもらった。可愛くてセクシー、そして若い。きっと彼好み。私はその写真をそのまま彼に送った。するとすぐに、
「見ました!めっちゃ可愛いやん!」と返事が返ってきた。
続いて、「いつか是非お茶したいなぁ。。」と更に追加メッセージを受け取った。彼は独身ダミーをえらく気に入ったようだ。独身ダミーは女郎蜘蛛のごとく彼の心に入っていった。心の隙間と言いたいところだが、ではなく真っ正面から堂々と。こうも簡単に入り込めた事にさほど驚きはなかった。今の彼を操るのは比較的簡単だと感じていたのだ。
「そうですね。ゆっくりお茶したいです。あの、気になるお相手とか、できてないんですか?」
「できてたらここにいません!こういうアプリで会ってみたことあります?」
「えっと。。1度会って、嫌な経験がありました。」
「どしたんですか??」
「う~ん。。独身の方だったんですが、本当は既婚者の方で、会った日にお子さんからの電話が来て、その時の会話が聞こえてきてしまってわかったんですよね。。」
「え。。それはそういう関係になった後?なる前?」
どうしてまずそんな事を聞くのかは先生の見解では、「彼は下心メインだから。」との事だった。普通なら、労りの言葉が先にくるだろう。しかし、私が返事をする前に「残念やったね。」と彼から追加でメッセージがきた後、突然彼は消えた!逃げられたのだ!ブロック、いや、正しくは彼はアプリを退会してしまったのである。一体何故?急に罪悪感に駆られたのだろうか。でもこれで更に既婚者である確率も上がった。
それから1時間後、今度は私のLINEの方に彼から桜の写メと、「満開」とメッセージがきた。これにはとても驚いた。もうこちらからアクションを起こさないとこないと思っていたからだ。独身ダミーは彼にどんな影響を与えたのだろうか。罪悪感か、独身と嘘をついて付き合うのが恐くなったのか。でも私には連絡してきた。私なら受け入れてくれると思ったのだろうか。私に対しても独身だと偽っているのだから。いずれにせよ、何か彼の中で心境の変化があったことには間違いない。
「先生、彼から桜の写メが送られてきました。」
「おおっ。ちゃんと約束果たしてきましたね。感想を返しましょうか。」
「はい!」
私は考えて彼に返事を返した。
「綺麗!!
今年はどこにも行ってないから嬉しいよ~。
写メ見ながら家でお茶するわー。
本当にありがとう~。」
多少大袈裟に書いてみた。こんな小さな画面の桜の写真を見ながらお茶などできるはずがない。写メを送ってくれた嬉しさを全面に出した、精一杯の返事だった。そして私は小さくガッツポーズをした。
ところで彼は何故桜の写メを送ってくれたのだろう。予想でしかないのだが、時間的にアプリを退会した後、私に連絡をとる為にその足で桜の写メを撮りにいき、送ってくれたと考えられないだろうか。何故かそんな気がした。
「うん。」と返事が返ってきた。しばらくして更にメッセージが入った。
「最近はどう?僕はむちゃくちゃし過ぎて訳わからんくなってる。」
むちゃくちゃねえ。ええ、確かにそう。人の気持ちも考えないで自分勝手な事ばかりしている。いくら病気とて許されない。
「私は変わらず!無理しないようにね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます